【2022】ディープラーニングで「2枚挿し」は有効?GPU運用のポイントとは

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高度なAI運用を実現するディープラーニングを正しく実行するためには、相応の環境を整備する必要があります。特に重要なのが「GPU」で、通常のPCに実装されているものよりもはるかに多くのリソースを必要とします。

足りないGPUリソースを補填するための方法として、GPUを2枚挿しにして運用するやり方があります。今回は、そんなGPUの2枚挿しが、ディープラーニング運用にどのような影響をもたらすのか、メリットとデメリットを併せて紹介します。

ディープラーニングに必要な環境

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そもそもディープラーニングに実践に必要な環境として、どのような用意が求められているのでしょうか?主な準備として、次の2点を充実させる必要があります。

大量の学習用データ

1つ目は、大量の学習用データです。

通常の機械学習と比べて、ディープラーニングにははるかに多くの学習データが必要です。多くの学習データが必要な理由として、ディープラーニングが採用している「教師なし学習」という方法が挙げられます。

教師なし学習は、ニューラルネットワークと呼ばれる人間の神経細胞のような仕組みを持った学習システムで、コンピュータがデータを読み込みながら、自発的にデータ間の違いを判断できるようになるというものです。

通常の機械学習では教師あり学習という方法が採用されていますが、これは教師データという加工済みのデータを読み込ませることで学習を行います。人間によって正誤判定の答えを作成し、データと合わせて答えを読み込ませることで、学習効率を高め、少ないデータ数でも相応の精度を確保できるやり方です。

一方で、ディープラーニングはデータを教師データに加工する必要もなく、教師あり学習では得られないパフォーマンスを発揮することができますが、そのぶん大量のデータを必要とします。膨大な量を用意しなければならないため、個人では簡単に実装ができない問題を抱えています。

高度なGPU

大量の学習データを必要とするということは、それらを処理できる計算能力も必要です。ディープラーニングには必然的に高度なGPUリソースが求められ、通常のPCに搭載されているスペックではとても処理が間に合いません。

GPUはAI開発だけでなく、映像編集や高度なデータ分析、そして仮想通貨のマイニングに至るまで、さまざまな用途で用いられています。そのため、今やGPUのラインナップも豊富になっており、目的に応じた多様なGPUを活用できます。

AI開発向けのGPUも近年は登場しており、そういったハードを積極的に導入することで、円滑なディープラーニング運用を実現する必要があるでしょう。

ただ、高度なGPUほど導入の導入の際の費用もかさむため、個人的なポケットマネーで気軽に購入するとはいかないことも、ディープラーニング活用を妨げる要因となっています。

ディープラーニングにGPUが必要である理由

ディープラーニングにGPUが必要である理由

ディープラーニングを含め、AI開発は元々GPUではなくCPUで行うのが一般的でした。GPUがAI開発に用いられるようになったのは最近ですが、ディープラーニングがGPUを求める理由としては、次の2点が挙げられます。

CPUよりも並列処理能力に優れるから

まず、GPUはCPUよりも並列処理能力に優れる点が、ディープラーニング分野において高く評価されています。

CPUは本来コンピュータ上で発生する全ての計算処理を担当しているユニットで、計算タスクを一つずつ処理していく仕組みを採用しています。

一方で、GPUは元々グラフィック処理を本業とするユニットです。グラフィック処理は多くの計算が発生しますが、その代わりに計算タスクの内容は基本的に同じなので、同様の計算タスクを一度にこなせるよう設計されています。

このような並列処理能力を必要としているのは、グラフィック分野だけではありません。ディープラーニングにおいても、同じような計算タスクを何度も処理しなければならないため、CPUでの実行には多くの計算が発生します。

GPUを導入すれば、その並列処理能力を生かした効率的な計算を可能にするため、大量の計算タスクが発生しても、素早く実行することができます。そのため、今ではディープラーニングにGPUを適用することは世界中で標準化されています。

膨大な量のデータを短時間で処理する必要があるから

ディープラーニングは、大量のデータを短時間で処理することも必要であるため、積極的なGPUの活用が推奨されています。というのも、ディープラーニングは通常の機械学習よりもはるかに多くのデータを必要とするので、そのぶん多くのデータ処理に対応しなければならず、成果が出るまでに時間がかかってしまうためです。

ディープラーニングを実施するためには、高度なGPUを導入するなどの初期費用がかかるだけでなく、ハイスペックなマシンを計算が終わるまでずっと動かし続けなければならないという問題も抱えています。つまり、時間がかかればかかるほど、運用するAIのコストパフォーマンスは低下してしまい、期待していたような採算が得られない場合があります。

ビジネス目的でディープラーニングを運用する際には、こういったリスクにも目を向ける必要があるでしょう。

GPUの2枚挿し(マルチGPU)とは

GPUの2枚挿し(マルチGPU)とは

上記のようなディープラーニング運用のリスクを回避するため、採用されているのがGPUの2枚挿しという手法です。これは、その名のとおり複数のGPUをコンピュータに導入する手法です。

GPU2枚分の導入効果が得られるということで、ゲーミングPCのアップグレードや、映像業界のクリエイターなどがマシンを強化するために採用されてきました。

GPUを複数使用するこの手法はマルチGPUとも呼ばれ、メーカーによっては公式サポートされている手法でもあります。既存のGPUではディープラーニングを進められるほどのパワーは得られないけれど、GPUの買い増しによって対応できる可能性があるなら、実践してみても損はないでしょう。

GPUを2枚挿しにして得られるメリット

GPUを2枚挿しにして得られるメリット

GPUヲ2枚挿しにすることで、ユーザーは以下のようなメリットを得られます。順に見てみましょう。

単体運用時より処理速度が上がる

まず、単体でGPUを運用したときよりも、高度な処理能力を獲得することができます。

GPUを2枚にして運用するということは、単純に考えると2倍の計算処理能力を獲得することとなります。実際にGPUを2枚挿しにすることで、直接処理能力が2倍になるというわけではありませんが、1枚のときよりも高い処理速度を獲得できることは間違いありません。

長年コンピュータを利用していると、コンピュータの買い替えやグレードアップに伴い、旧型のGPUを持て余してしまうというケースも散見されます。最近では型番が異なるGPU同士を同時に利用し、マルチGPUとして運用ができるモデルも登場しているため、余ったGPUを無駄にすることなく、むしろ性能の強化につなげることが可能です。

安価なGPUを有効活用できる

GPUを2枚活用することで、GPUのコストパフォーマンスを高められるというメリットも期待できます。

GPUは定期的にバージョンアップが行われ、既存モデルよりも優れた性能を発揮するGPUが登場していますが、これらのネックとなるのがやはり値段です。

性能の良いGPUほど、導入の際には多くのコストがかかります。そのため、優れたGPUの導入を進めにくいのが現状ですが、型落ちのモデルを安く手に入れることができれば、高度なGPU活動を安価に実現可能です。

すでにマルチGPUに対応しているモデルを所有しているのであれば、GPUを丸ごと新品に買い換えなくとも、型落ちかつマルチGPUに対応したモデルを購入するだけで、簡単にハイパフォーマンスなGPUを導入可能です。

GPUの2枚挿しがもたらすデメリット

GPUの2枚挿しは上記のようなメリットが期待できる一方、注意しなければならないデメリットもあります。

正しく運用しなければパフォーマンスが得られない場合がある

まず、GPUをなんでも2枚挿せば計算能力が2倍になるわけではないため、マルチGPUに対応したモデルを手元に用意しなければなりません。基本的に同一のGPUでなければマルチGPUとしての性能を発揮することはできないため注意が必要です。

買い増しによって、異なるモデルのGPUが混合している状態でも性能を活かせるケースもありますが、こういった最新のGPUを購入するのであれば、素直に上位モデルのGPUを手に入れた方が確実な成果が期待できます。

消費電力が2倍になる

GPUの2枚挿しは、GPU2枚分に近いパワーをもたらしてくれる一方で、その消費電力も2倍になる点は気をつけなければなりません。

ディープラーニングは長期的に計算処理することとなるので、GPUは常にフル稼働させておくこととなります。その場合、GPUの消費電力が稼働させている分だけかさんでしまうので、結果的に電気代の負担が大きくなります。

GPUの2枚挿しによって、新しくGPUを購入する費用を抑えたいと考えている場合は、運用の際の光熱費が増えてしまうリスクについても検討しておきましょう。

実行プログラムがマルチGPUに最適化されている必要がある

マルチGPUは通常のシングルGPU活用とは異なるプロセスで処理されるので、実行したいプログラムがマルチGPUに対応している必要もあります。

特に、ディープラーニングのような高負荷のタスクにマルチGPUを適用する場合には、あらかじめマルチGPUでも動作可能であることを確認しなければ、多くの時間がかかってしまう可能性があります。事前にGPU運用の条件を調べておき、マルチGPUで期待しているパフォーマンスが得られるかどうか確認しておきましょう。

ディープラーニング向けGPU運用のポイント

ディープラーニング向けGPU運用のポイント

ディープラーニングを効果的に行う上では、GPUの2枚挿しが必ずしも有効であるとは限りません。必要な要件や既存環境に合わせた、最適な運用プランを検討することが大切です。

基本的にはシングルGPUの活用がベター

まず、マルチGPUというアプローチはスタンダードな方法ではないため、基本的には高性能なGPUを単体で運用することが望ましいと言えます。

マルチGPUは、あくまで既存のGPUを有効活用するための補助的な手段であるため、シングルGPUの強みを捨ててまで採用s流手段ではありません。どうしても今あるGPUを有効活用したいという場合にだけ、利用を検討すべきでしょう。

マルチGPUのためのセッティングの手間や、思っていたような計算が行えないリスクを考えると、高機能なシングルGPUを用意した方が確実です。

クラウドGPUでまとまったリソースを確保する

GPUは単体で購入すると非常に高額ですが、クラウドGPUを採用すれば、初期費用の問題を解決できます。クラウドGPUであれば従量課金制で使った分だけ料金が発生するので、高額な初期費用が発生することはありません。必要に応じて適当な量を使えば良いので、無理にフル活用する必要もないのが強みです。

電気代やセットアップの負担もないので、運用効率にも優れているのが特徴といえます。これからGPUを刷新しようと考えている場合には、クラウドGPUの導入も視野に入れておきましょう。

まとめ

GPUの2枚挿しは、古くからGPUを有効活用するために親しまれてきた方法ですが、必ずしも最新GPUの代替手段になるとは限りません。マルチGPU運用に伴うコストや処理速度の問題を踏まえ、適切な方法を選ぶことが大切です。

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