
近年、AIの活用シーンが増加している背景に伴い、NVIDIAとAMDからディープラーニング向けのGPUシリーズが続々と提供されています。
今回は、NVIDIAとAMDそれぞれのディープラーニング向けGPUシリーズを解説します。また、お得に利用するポイントを踏まえて、クラウドGPUサービスの「M:CPP」を紹介します。
コスト面で最適なGPUを選ぶための情報が満載なので、ぜひ最後までご覧ください。
ディープラーニングでGPUが重要である理由
そもそも、なぜディープラーニングでGPUを使う必要があるのか疑問がある方も多いでしょう。ディープラーニングの特性上、GPUなしでは実行できないケースがあります。
ここでは、GPUが重要な理由を2つの視点から解説します。
大規模な演算処理を行うから
ディープラーニングを含む機械学習では、行列や損失関数などさまざまな計算式で構成されます。特にディープラーニングでは、大規模な行列演算処理を繰り返し行う必要があります。
その点、高性能なGPUでは、ディープラーニングの演算処理用のコアが数百個以上搭載されているものもあるため、スムーズに処理できます。一方で、低性能なGPUでは学習プログラムの実行すらできないため、GPUのスペックが重要といえるのです。
高速な処理が必要だから
ディープラーニングは、精度を向上させるために微調整を行い、何度も実行する必要があります。また、ディープラーニングは世界中で研究・開発が進められているため、迅速な実験スピードが求められます。
そのため、ディープラーニングの開発現場では、常に最新のGPUが必要です。一昔前の古いGPUでは、処理性能を左右する「コア」の搭載数や世代が古く、高速な処理ができないからです。
最先端のディープラーニング技術を開発するうえで、開発基盤であるGPUが重要になるのです。
GPUの代表的なメーカー
シリーズについて紹介する前に、まずはGPUの代表的なメーカーを解説します。2023年現時点で、GPUの開発メーカーは「NVIDIA」と「AMD」の二強です。それぞれの特徴を簡単に紹介します。
NVIDIA
NVIDIAは、AI・ディープラーニングやゲーム、自動運転など、さまざまな最先端分野で活用されるGPUを提供しているアメリカの半導体メーカーです。
AI向けのGPUでは行列積和専用の「Tensorコア」を独自に開発し、さらには自社のAI技術を応用し低解像度画像の高解像度化が可能な「ディープラーニングスーパーサンプリング(DLSS)」を開発するなど、世界初のGPU技術を展開し続けています。
NVIDIAは世界中のクラウド企業ともつながりが深く、Google Cloud・AWS・Microsoft Azure・IBM Cloud・GPUSOROBANなど、さまざまなクラウドサービスでも利用可能です。
AMD
AMDは、ゲーム・AI・動画編集など、さまざまなニーズに合わせたCPUとGPUを提供しているアメリカの半導体メーカーです。
AMDは長年高性能なゲーミング環境用のCPUとGPUを提供しており、そのノウハウを活かして高い演算能力を持つディープラーニング用のGPUを多数開発しています。
AMDは大手クラウド企業ともパートナー提携をしており、Google Cloud・AWS・Microsoft Azure・IBM Cloud・M:CPPなどで利用することができます。
NVIDIAのディープラーニング向けGPUシリーズ
まずは、NVIDIAのディープラーニング向けGPUシリーズを2つ解説します。
・NVIDIA Telsa
・NVIDIA GeForce RTX
利用ケースに最適なGPUを選ぶためにも、それぞれ参考にしてみてください。
NVIDIA Telsa
「NVIDIA Telsa」は、企業のデーターセンター向けに提供されるGPUシリーズです。Telsaシリーズで提供されるGPUには、16GB以上もある大容量なメモリとAI処理に特化した「Tensorコア」が数百個以上搭載されているタイプが多くあります。
次の表のように、NVIDIA Telsaはいくつものシリーズに分かれています。
シリーズ名 | 特徴 | 具体例 |
---|---|---|
Pシリーズ | ビックデータ解析に適した計算効率の良いメモリ設計が取り入れられている | ・P4
・P40 ・P100 |
Hシリーズ | 最新の第4世代のTensorコアが搭載され、現時点で最も高性能なシリーズ | H100 |
Aシリーズ | 第3世代のTensorコアが搭載され、ハイスペックなシリーズ | A100 |
Tシリーズ | Tensorコアと消費電力を抑えた仕様で効率の良い処理が可能 | T4 |
Vシリーズ | 初代のTensorコアが搭載されている | V100 |
Mシリーズ | 消費電力を抑えた仕様が特徴的 | M40
|
比較的新しいシリーズの「P・H・Aシリーズ」は大規模なディープラーニングの開発に向いており、一方で「T・V・Mシリーズ」は個人でも手の届きやすいシリーズとなっています。AIニーズの増加に伴い、Telsaシリーズは今後も増えていくでしょう。
NVIDIA GeForce RTX
「NVIDIA GeForce RTX」は、ゲーミング環境向けのGPUシリーズである「GeForce」の中でも、3DCGのレンダリングやCAD編集など企業利用を対象とするGPUシリーズです。
最も新しい「RTX40シリーズ」では、現実世界の光の挙動を的確に表現する「レイトレーシング」やAIによる高解像度化技術の「DLSS3」など、非常に高度な技術が利用できます。Tensorコアに加えて、レイトレーシング用の「RTコア」が搭載されている点が特徴的です。
AMDのディープラーニング向けGPUシリーズ
続いて、AMD製のディープラーニング向けGPUシリーズを2つ解説します。
・AMD Radeon
・AMD Instinct
それぞれのシリーズでどのようなGPUが提供されているか、具体的に紹介します。
AMD Radeon
「AMD Radeon」は、フルHDなどの高解像度のゲーミング環境で活用されるGPUシリーズです。最新の「Radeon7000シリーズ」では、同社のレイトレーシング専用コアとAIアクセラレーションを搭載しており、ディープラーニングの実行でも高い演算処理能力を発揮します。
また、「Radeon Vegaシリーズ」はAI仕様のNUCが採用され、高度なディープラーニングの開発でも高パフォーマンスを実現できます。Vegaを後継する「Radeon VII」はメモリ性能の高さと省電力設計で、効率の良い処理が可能です。
このような特徴から、Radeonシリーズはゲーミング環境にとどまらず、AI・ディープラーニング開発環境にも積極的に活用されていくでしょう。
AMD Instinct
「AMD Instinct」は、ディープラーニングや科学シミュレーション分野のデータセンター向けGPUシリーズです。
AMD InstinctではMIシリーズがいくつか提供されており、最新のMI200シリーズでは、ディープラーニングの高度な処理において「NVIDIA A100」よりも最大1.6倍ものメモリ容量の解放が可能です。そのため、FP32・FP64などの演算負荷が高い処理においても、高パフォーマンスを実現できます。
AMD Instinctの優れたパフォーマンス力は世界中で認められており、オークリッジ国立研究所など、最先端の研究施設で活用されています。
NVIDIA・AMDのディープラーニング用GPUの選び方
数多くあるNVIDIA・AMDのディープラーニングGPUの中から、最適なGPUを選ぶことは容易ではありません。ここでは、ディープラーニング用GPUの選び方を解説します。
CUDAコア・Tensorコア
1つ目の選び方は「CUDAコア・Tensorコア」です。
CUDAコアとは、NVIDIAのGPUに搭載されるメインコアのことです。VRゲームや8K動画など、高画質な画像を描画する際に使用されます。一般的に、CUDAコアの数が多ければ多いほど GPUの処理能力も高くなります。
一方で、Tensorコアとは行列演算処理専用のコアのことで、ディープラーニングモデルの計算処理に特化しています。Tensorコアも搭載数が多い方が一般的に高性能です。
また、Tensorコアにおいては搭載数だけではなく、世代も大事な基準です。2023年9月時点では、第4世代が最も新しいTensorコアの世代で、それ以前のTensorコアよりも高速かつ大量に処理できます。
CUDAコアとTensorコアを基準に選ぶ場合には、次の数値を参考にしてください。
・CUDA数:3,000以上
・Tensorコア数:100以上(第3・4世代)
上記よりコア数が少ないGPUでは、実行できないディープラーニングモデルもあるため、十分なコア数を搭載したGPUを導入しましょう。
メモリ容量
2つ目の選び方は「メモリ容量」です。
ディープラーニングでは大量のデータを使って学習を行うため、大容量メモリが必要です。コア数などのスペックが高くても、メモリ容量が小さい場合にはディープラーニングのデータがメモリ上にのらないため学習できません。
そのため、ディープラーニング用のGPUでは、「16GB以上」の大容量タイプを選んでください。
特に大量の画像データを扱うディープラーニングモデルや大規模な言語モデルの場合は、すぐにメモリ不足になってしまうため、1人で利用する際にも「1TB以上」のメモリ容量が必要です。
予算
3つ目の選び方のポイントは「予算」です。
ディープラーニング向けの高性能なオンプレミス型GPUは、300万円以上するものも多く、導入するだけでもかなりコストがかかります。そのため、GPUのコストを抑えたい場合には、一昔前のコア数が少ないGPUにするとよいでしょう。
最新モデルのGPUでは、最新のコアが採用されているため、価格も高くなる傾向にあるからです。
ただし、ディープラーニングではGPUの性能が直に処理スピードに影響を与えるため、予算が限られている場合には、GPU以外のPCパーツのスペックを落とすことを優先することをおすすめします。
なお、ディープラーニングにおけるCPUとGPUの重要性の違いは、『ディープラーニングに最適なのはCPUとGPUのどちら?違いを比較』で詳しく解説しています。
ディープラーニング用のGPUをお得に用意するポイント
続いては、ディープラーニング用のGPUをお得に用意するポイントを2つ解説します。それぞれのポイントを押さえることで、高額なGPUの導入・運用費用を大幅に節約できます。少しでもコストを抑えたい場合には、それぞれチェックしてください。
クラウドGPUを利用する
同じGPUの場合でも、オンプレミス型よりもクラウド型の方がお得になるケースがあります。
オンプレミス型では300万円程度のGPUを買い切る必要があるうえに、セキュリティや温度管理などの保守管理コストもかかり続けます。
一方で、クラウドGPUはベンダーが提供するGPUをネット上で利用する仕組みで、GPUの購入・管理が不要です。そのため、基本的にはGPUを利用するコストのみで済むため、GPUに必要な導入・保守にかかるコストを最小限に抑えられます。
なるべくコストを抑えてハイスペックなGPUを使いたい場合は、クラウド型のGPUサービスを利用するとよいでしょう。
AMD製のGPUを選ぶ
GPUのメーカーを選ぶ際は、NVIDIAとAMDの2社から選ぶことになりますが、コストパフォーマンスを重視する場合にはAMD製が最適です。
たとえば、同じようなスペックのAMD製の「Radeon RX 6700 XT」とNVIDIA製の「GeForce RTX 2080Ti」を比較した場合に、「Radeon RX 6700 XT」は約4.9万円から購入することができますが、「GeForce RTX 2080Ti」は約29万円で販売されいます。
この例のように、似たようなスペックのGPUでも、AMD製のGPUはNVIDIA製の6分の1の価格で購入できるケースもあります。
メーカーにこだわりがない場合は、AMD製のディープラーニング用のGPUシリーズから選ぶとよいでしょう。
ディープラーニング用のGPUならクラウドサービスの「M:CPP」がおすすめ
「クラウドGPUがありすぎて、どれがいいかわからない。でも一番お得なサービスがいい」そんな方には、当社モルゲンロットが提供するクラウドGPUの「M:CPP」がおすすめです。M:CPPでは、ディープラーニング用のシステム・実行環境をプロのエンジニアに構築してもらえるからです。
最後に、M:CPPのサービス内容や、ディープラーニング環境におすすめである理由について解説します。
M:CPPのサービス内容
M:CPPは、AMD社が提供するハイエンドモデルGPUを利用できるGPUクラウドサービスです。M:CPPで提供されているGPUはAMD Radeonシリーズの「Vega 56・Radeon VII」の2種類で、それぞれWQHDなどの高解像度のゲーミング環境でも利用できるハイスペックなGPUです。
M:CPPについてさらに詳しく知りたい方は、『GPUクラウドサービスなら「M:CPP」!概要とおすすめの理由』をチェックしてみてください。
M:CPPがディープラーニング環境におすすめである理由
M:CPPがディープラーニング環境におすすめである理由は次のとおりです。
・AnacondaやDocker環境などディープラーニング用の環境構築をプロのエンジニアからサポートしてもらえる
・GPU・CPU環境構築やフレームワーク追加、HDDの増設など、柔軟にカスタマイズができる
・大手クラウドサービスと比較して「2分の1以下」の費用で導入でき、コストパフォーマンスに優れる
M:CPPでは、ディープラーニングに必要なシステムや機能を自社のニーズに合わせてカスタマイズできるメリットがあります。そのため、ディープラーニングの事業拡大・縮小に合わせて、開発環境の柔軟な変更が可能です。
なお、M:CPPのコスパの良さが気になる方は、『AWSとM:CPPのコストパフォーマンスを比較する』を参考にしてみてください。
まとめ
近年のAIブームを背景に、NVIDIAとAMDそれぞれから多彩なGPUシリーズが提供されています。
また、GPUのニーズの増加に伴い、従来のオンプレミス型に加えて、クラウド型のGPUも増加傾向にあります。クラウドGPUは、オンプレミス型と同じように潤沢なリソースが提供されるにもかかわらず、導入コストを大幅に削減することが可能です。
さまざまなクラウドGPUサービスが提供されている中で、もっともおすすめなのは当社モルゲンロットが提供する「M:CPP」です。M:CPPでは、ハイスペックなAMD製のGPUを月額5万円以下の低コストで利用できるメリットがあります。
GPUのコスト問題がネックで高性能なGPUの導入を諦めていた企業の皆さまは、まずは当社のM:CPPを検討してみてはいかがでしょうか?