
ディープラーニングは人工知能開発における最先端を走るハイテクですが、適切な環境さえ用意できれば、実現はそう難しくないことが特徴です。
そんなディープラーニングの実践において欠かせないのがGPUの存在ですが、これまでのAI開発の主流はCPUでした。なぜ、今になってGPUに注目が集まり、CPUとの間にはどのような違いがあるのでしょうか?
今回は、そんなCPUとGPUの違いに焦点を当て、ディープラーニングに最適な手段について解説していきます。
ディープラーニングの仕組み
そもそも、ディープラーニングは機械学習手法の一環として近年注目を集めている学習アプローチの一種です。
ディープラーニングの鍵を握るのがニューラルネットワークと呼ばれる枠組みで、これは人間の神経回路に着想を得ています。多層構造を採用することで、インプットしたデータを複数の層を用いて解釈し、各層で重みづけが行われることで、自発的にデータから特徴を見出すことができる仕組みです。
これまで、機械学習においては「教師あり学習」と呼ばれる、人間のAI開発者が意図的にAIへ正解を伝えながらデータを読み込ませる手法が採用されてきました。確実性の高い学習効果が見込める反面、開発者の指標にAIは従わなければならず、人間の判断能力を上回るパフォーマンスを獲得するのが難しいことが課題とされています。
しかし、ディープラーニングは自力でデータから特徴を抽出できる「教師なし学習」と呼ばれる手法を実現しています。人間に物事の判断の基準が依存するのを回避できるため、人間の能力を超えたパフォーマンスを発揮することができるようになります。
反面、ディープラーニングは膨大な学習データを読み込ませることと、それを効率良く処理するためのハードウェアが求められるようになりました。このような背景から注目されるようになったのがCPUとGPUの違いです。
CPUとは
これまで、コンピューターにおける計算処理のすべてを担ってきたのが、CPU(Central Processing Unit)でした。これはコンピューターにおける大脳のような部分で、あらゆるタスクはCPUによって実行されています。
CPUの役割
CPUは、コンピューティングに必要なほぼすべて計算を行い、素早いアウトプットを実現しています。マウスの挙動からソフトウェアの立ち上げ、またはスムーズなソフトの運用に至るまで、多くのタスクをCPUだけで担当しています。
機械学習においても同様で、これまでAI開発のパフォーマンスは、CPUの性能に大きく左右されていたのが一般的でした。ただ、GPUにおけるAI開発が主流になってきたことで、CPUがAI開発の現場で重視されるケースは少なくなりつつあります。
GPUとは
AI界隈から大いに注目を集めるGPUですが、元々はグラフィックの描画に特化したユニットとして開発、および搭載されるようになったものです。GPUの正式名称は「Graphic Processing Unit」で、その名の通りグラフィックに特化した機能を備えています。
GPUの役割
GPU登場以前、コンピューターはCPUにすべての計算処理を任せていましたが、2000年代に差し掛かったあたりから、3Dグラフィックの普及などにより、グラフィック処理の負担が急激に増加していきました。
そのため、負担の大きなグラフィックについてはGPUが新たに搭載され、その処理だけをこなすために、すべてのPCに搭載されるようになっていったというわけです。
ディープラーニングにはCPUとGPUのどちらが最適?
それでは、CPUとGPUではどちらの方がディープラーニングに適しているのでしょうか?結論からお伝えすると、GPUの方が遥かにディープラーニングを始め、AI開発全般における貢献度は高いとされています。
GPUがディープラーニングの現場で脚光を浴びることとなったのは、2012年に行われた、AIによる物体認識の精度を競い合う大会、ILSVRCでの活躍です。トロント大学の研究チームは、同大会においてGPUとニューラルネットワークを採用したAIを採用したことで、従来のエラー率26%という数字を大幅に塗り替え、17%という数字を叩き出し、大いに注目を集めました。
これ以降、AI研究の潮流は大きな変化を迎え、GPU主体のディープラーニングの活用が進んでいくこととなりました。
ディープラーニングにGPUが活躍する理由
それでは、このようなGPUの起用がディープラーニングで盛んに行われるようになったのには、どのような背景があるのでしょうか?その理由としては、次の2つのポイントが挙げられます。
高度な演算能力を持っているから
1つ目の理由は、純粋にGPUの技術開発が進み、高度な演算能力が実装されるようになったことです。
ここ10年でGPUの処理能力は以前とは比べ物にならないレベルでグレードアップが進んでおり、安価なモデルでも高いパフォーマンスが期待できます。GPUの活用機会は非常に多く、映像処理やゲーミングはもちろん、AI開発や仮想通貨のマイニングに至るまで、ビジネスでの活躍も進んでいます。
今後も多くの投資がGPU分野に行われ、さらに高度なGPUが次々と登場するでしょう。
GPUをAI開発に転用できるフレームワークが登場したから
GPUは元々グラフィックに特化したユニットでしたが、AI開発に特化したフレームワークが登場したことも、GPUのAI活用を後押ししました。
本来、機械学習のために設計されているわけではないため、研究者たちはAI開発へGPUを転用できるよう、独自にフレームワークを構築する必要がありました。しかし、近年はGPUがAI活用に役立てられるよう、公式の開発環境が提供されたり、フレームワークが一般公開されたりと、AI活用を前提とした環境整備が進んでいます。
これらのサポートをフル活用することで、GPUさえあれば気軽にAI開発へと取り組めるようになっています。
CPUとGPUの比較結果からわかること
CPUとGPUのどちらがディープラーニングに優れているかについては、すでにさまざまな検証が行われています。実際の検証結果をもとに、両者のパフォーマンスにどのような違いが表れているのか、確認してみましょう。
特定のタスクにおいてはGPUが無類の強さを発揮する
参考記事で行われた検証結果を見てみると、そのパフォーマンスの高さが目につくのがGPUです。同じタスクを実行した場合、GPUはCPUの10倍近い速度で実行することができるケースもあるなど、優れたポテンシャルを備えていることがよくわかります。
もちろん、GPUとCPUのどちらが優れているかは製品の性能にもよりますが、同じ価格帯のユニットを導入するとなれば、ディープラーニングというシングルタスクの現場では間違いなくGPUが優れた結果を残してくれます。
汎用性ではCPUが勝る
一方で、GPUも万能ではありません。前述の通り、GPUはあくまでもグラフィック描画に特化したユニットであるため、多面的な活躍を促すためには、専用のフレームワークを実装しなければならないなどの制約もあります。
この点においては、CPUに軍配が上がります。ディープラーニングに限らず、コンピューティング全般のタスクを満遍なくこなすとなれば、CPUが優勢です。
それぞれの役割や得意分野の違いに注目しながら、運用を進めていくことが重要になるでしょう。
ディープラーニングのGPU運用におけるポイント
ディープラーニングをGPUで運用する上では、次の2つの条件を満たすことが肝要です。
十分なGPUリソースを確保する
十分なGPUのリソースを確保することが何よりも重要になります。
GPUはディープラーニングに優れているとはいえ、ビジネスレベルで運用可能なAIを開発するためには、家庭用のGPUでは限界があります。業務用の大型サーバーを導入するなどして、十分なリソースを確保して初めて、その進化を発揮できます。
AI人材を確保する
ディープラーニングの開発は、ただGPUさえ用意すれば完了というわけではなく、それらを有効活用できる人材の確保も欠かせません。
近年はDXの積極的な推進もあり、AI開発をはじめとする各エンジニアの需要が急激に増加しています。そのため、優れた人材を確保する上ではそのための予算も十分に用意しなければならず、今後の開発競争の激化に備えておく必要があるでしょう。
クラウドGPUを導入するメリット
上記のようなコストの問題を解消するのに役立つのが、クラウドGPUです。当社モルゲンロットが提供するクラウド型のGPU「M:CPP」がどのようなメリットをもたらすのかについて確認しておきましょう。
ハイエンドGPUを好きなだけ使える
クラウドGPUの大きなメリットの一つが、ハイエンドのGPUを好きなだけ利用できるという点です。クラウドサービスの利用にあたっては初期費用が無料、あるいは非常に低価格に設定されているため、負担は最小限に抑えられます。
買い替えの必要がない
GPUは最新モデルの登場サイクルが早く、通常であれば数年ごとに買い替えが必要です。クラウドGPUの場合、このような買い替えの負担は一切発生せず、規定の料金負担で最新の環境を常に利用できます。
買い替えコストが発生しないので、その分データ収集や人材確保に予算を回すことが可能です。
迅速に導入できる
クラウドGPUは、導入に当たって多くの時間を必要としないことが強みです。ライセンスを契約するだけですぐに利用が可能なので、搬入や初期設定の負担はほぼ発生しません。もちろんGPUサーバーを設置するためのスペースも必要ないので、オフィスへの負担もありません。
まとめ
GPUはディープラーニングにおいて無類のパフォーマンスを発揮しますが、コスト面でのネックが懸念事項となります。
当社モルゲンロットが提供する「M:CPP」では、そんなGPU運用におけるコストの課題を解消すべく、優れた料金設定のクラウドGPUを提供しています。
AMD社製のハイエンドGPUを専有サーバーで好きなだけ利用することができるため、GPUとしてのパワーは申し分ありません。
また、大手クラウドGPUサービスと比べても大幅に利用料金を抑えられるケースもあり、すでにクラウドGPUを利用しているという方にとっても利用価値の高いサービスとなっています。クラウドGPUの導入および乗り換えをご検討の際には、お気軽に当社モルゲンロットへご相談ください。