
AI技術の最先端を行くディープラーニングの台頭によって、今やさまざまな領域においてAIが導入されることとなりました。また、ディープラーニングは高度な環境を用意する必要があるとされてきましたが、近年基本的な環境さえ整えることができれば、家庭でも実践が可能になりつつあります。
今回は、そんなディープラーニングをコストパフォーマンス重視で実践する上で必要なスペックの見方や、GPU選定のポイントについて解説します。
ディープラーニングを実行できるPCとは
10年ほど前までさかのぼると、ディープラーニングは研究用の巨大なサーバーを運用しなければ実現が難しいとされてきた技術です。しかし、今や一般のPCでも実践が可能な技術にまで進化しており、多くの企業で独自にディープラーニングを使ったAIの開発が行われています。
AI開発の需要が高まる中、AIを開発できるスキルを持った人材の需要も高まっていますが、個人でのAI開発やディープラーニングも、家庭にあるPCで行うことができるため、スキル開発のハードルも低くなりました。
ただ、自宅にあるPCで高度なディープラーニングを実践することはまだ難しく、本格的な運用のためには相応のスペックが求められます。というのも、ディープラーニングは高度な演算処理が行われるため計算の負荷が大きいことはもちろん、膨大なデータを十分な学習のために必要とするためです。
そのため、本格的なディープラーニングによるAI開発を実践したい場合、たとえコストパフォーマンスを重視するにしても、場合によっては新たにマシンを用意する必要があることは覚えておきましょう。
ディープラーニングにおいて注目すべきPCの各スペック
では、ディープラーニングを実践するためにはどれくらいのスペックのPCを用意すれば良いのでしょうか?ここではディープラーニングにおいて注目すべきPCの各スペックについて解説します。
GPU
ディープラーニングに最も重要とされているPCスペックが、GPUです。GPUはGraphic Processing Unitの略称で、その名のとおり、PCのグラフィック処理を担当しているユニットです。
実は、ディープラーニングの演算処理においても活躍しているのがGPUで、後ほど紹介するCPUよりも相性やパフォーマンスに優れることから、今日のディープラーニングを使ったAI開発には欠かせない存在となっています。そのため、ディープラーニング向けのPCを用意する場合も、必然的にGPUの重要性は高くなります。
極端な話ですが、GPUの性能にさえ優れていれば、あとは最低限でも良いほど、ディープラーニングにはGPUが重要です。コスパ重視でPCを用意する際には、とにかくGPUの性能を丁寧にチェックすることが大切です。
CPU
CPUはCentral Processing Unitの略称で、PC全体の処理を担当しているユニットです。以前は、グラフィックの処理も含めたすべての処理をCPUが担当していましたが、グラフィック技術が向上した現在はGPUにその役割を任せています。
ディープラーニングを実施する場合、主な処理を担うのはGPUであるため、実はディープラーニングにおいてはCPUの立ち位置はそこまで重要ではありません。そのため、CPUの性能よりはまずGPUの性能を確認し、予算内でフルパフォーマンスを発揮できるマシン選びが大切になるでしょう。
とはいえ、CPUも各種ソフトを動かす上では必要になるため、最低限の性能を備えていることに越したことはありません。
メモリ
メモリは、PCの演算処理の際に発生するデータを一時的に保存し、スムーズな演算を可能にしてくれるユニットです。メモリ容量が大きいほど、一度に多くのデータを蓄え処理できるようになるため、パフォーマンス向上にはメモリサイズも考慮する必要があります。
ただ、ディープラーニングにおいてはGPUに内蔵されているビデオメモリ(VRAM)の方が重要になるため、PC本体のメインメモリはさほどディープラーニング影響を与えません。そのため、PC選びの際にはCPUのスペックと同じくらいの感覚でチェックをすると良いでしょう。
ストレージ
ストレージは、PCを扱う上で発生したデータをまとめて管理するための保管庫です。ディープラーニングにおいてはとにかく大量のデータが発生するため、PCのストレージも大きいに越したことはありません。
ただ、ディープラーニングの学習データはあまりに膨大ということもあり、PCに直接保管するのではなく、外部サーバーやクラウドストレージに保管するケースが一般的です。ディープラーニング向けPC選びを考える上ではあまり優先順位は高くないため、大きかったらラッキーくらいの感覚で考えておけば良いでしょう。
OS
OSはPCで扱えるソフトウェアや日々の使用感に大きく影響を与える、重要なミドルウェアです。
一昔前まで、AI開発やディープラーニングの運用にはWindowsかLinuxが絶対必要といわれていましたが、近年ではMac OSでも機能するサービスも非常に増えています。そのため、ディープラーニングを実践する上では必ずこのOSでなければならないということはないため、好みで選んでも良いでしょう。
ただし、注意点として、Mac OSとWindows OSのどちらでも良いということであれば、Windows OSの方がおすすめといえます。というのも、Mac OSは基本的にApple製品でしか運用することができず、同社の製品はいずれもハードウェアの拡張性を備えていないため、マシンのカスタマイズができないためです。
また、価格もWindows OSに比べてApple製品は割高であり、コスパを重視したい場合には不利に働く要素が多いこともデメリットです。本格的なディープラーニング運用を今後考えている場合は、Windows対応のマシンを選ぶようにしましょう。
ディープラーニングを実現するために必要な費用
ディープラーニングを実現するためには、具体的にどれくらいの費用がかかるのでしょうか?正確な金額を特定するのは環境にもよるため難しいですが、大きく分けて個人用の場合とビジネスや研究目的の場合で区別することができます。
個人用の場合
個人用の場合、ディープラーニングのための費用は新しいPCを一台購入する金額と想定しておけば問題はないでしょう。いわゆる格安PCでは少しスペックに難があるため、想定すべき価格帯としては15万円〜25万円ほどです。
これくらいの価格帯であれば、相応のスペックが揃ったPCを探しやすく、GPUの性能も平均以上のものが期待できます。個人でディープラーニングを学びたいという場合には適正の価格です。
逆に、これよりも低い価格で環境を整備できるのであれば、コストパフォーマンスに優れているといえ、10万円前後でPCを購入、あるいは自作でパーツを賄い組み立てることができれば、安価にマシンを用意できたと考えられます。
ビジネス・研究目的の場合
ビジネス・研究目的の場合、結論をお伝えすると、本格的な運用を行いたい場合にはある程度の予算を計上しておく必要があり、マシンスペックを融通してコストを抑えることが困難になります。というのも、本体の性能がディープラーニングのパフォーマンスにも大きく影響するため、マシンにお金をかけなければかえって初期投資を回収することが難しくなるためです。
こういった用途でディープラーニングを運用する場合、本格的なGPUサーバーの導入が必要です。GPUサーバーはPC向けのそれとは価格帯がまったく異なり、一基導入するのに数百万円から数千万円かかることが一般的です。そのため、本格的なディープラーニングの実践にはまだまだ潤沢な資金が必要である点は注意しておきましょう。
ディープラーニングに適したGPUの探し方
GPUにはさまざまな種類があり、価格も性能も多様です。ディープラーニング向けGPUを探す場合は、次の項目に注目して選定を進めると良いでしょう。
メモリサイズ
GPU性能においてまず大切なのがメモリサイズです。
GPUには「VRAM」と呼ばれるメモリが備わっています。このメモリサイズが大きければ大きいほど、演算処理の効率は高くなります。
GPU選定の際は、できるだけメモリサイズの大きい製品の中から、価格が安価なものを選ぶと良いでしょう。10GB以上あるものであれば、安定したパフォーマンスを期待できます。
CUDAコア数
CUDAコアは、GPUの処理を高速化させるために不可欠なコアのことを指します。CUDAコア数が多いほどGPUは高いパフォーマンスを発揮できるため、CUDAコア数の大きい製品を選ぶことをおすすめします。おおむね1万を超えるCUDAコア数が、安心できる目安です。
アーキテクチャ
アーキテクチャは、そのGPUの新しさを表す目安のようなものです。アーキテクチャは新しいものであることが望ましく、2022年11月現在最新のアーキテクチャは「Ampere」と呼ばれるものです。
Tensorコアの有無
Tensorコアは、NVIDIA製品のGPUに実装されている、AI特化の演算処理を可能にするものです。最新のGPUであれば実装されていることが多く、Tensorコアの有無を確認してから購入すると良いでしょう。
コスパ重視でGPUを選ぶ際のポイント
コスパ重視でのGPU選定のポイントとしては、次の3つが挙げられます。それぞれのポイントを意識した選定を進めましょう。
あらかじめ用途を限定する
GPUはゲームや編集、AIとさまざまな用途に活躍しますが、特定の用途に特化して選定することで、余計な機能に惑わされることなく正しいGPUを選べます。たとえば、ゲーミングに特化したGPUは、映像表現を支援する機能が備わっていたりもしますが、AI向けのGPUにこの機能は必要ありません。
用途をディープラーニングに特化することで、予算を抑えての導入が可能になります。
型落ちモデルを探す
最新のGPUを購入できるに越したことはありませんが、型落ちモデルでも運用は可能です。型落ちモデルは幾分か最新モデルより費用を抑えられるため、こちらを選ぶようにしましょう。
消費電力などの維持コストにも注目する
GPUは初期の購入費用だけでなく、その後のコストパフォーマンスも正しく評価する必要があります。パワフルなGPUは、モデルによっては多くの諸費電力を必要とし、維持費がかさむこともあるため、その点にも配慮が必要です。
コスパに優れる主なGPU製品
続いては、コスパに優れると評判の主なGPU製品について解説しましょう。
NVIDIA GeForce GTX 1060
NVIDIAのGeForce GTX 1060は、安価に購入できるGPU製品です。メモリサイズは6GBとやや物足りないものの、価格は2.5万円程度と非常に安価であるため、最低限必要なGPUを整えたい際には覚えておきたいモデルです。
NVIDIA GeForce RTX 2070
GeForce RTX 2070はGT Xシリーズよりも価格帯は上がりますが、その分優れたパフォーマンスを実現するGPUです。TensorコアとDLSS(Deep Learning Super Sampling)機能を備えており、AI開発の効率を高めてくれる効果が期待できます。価格帯は10万円以内での販売となっています。
AMD Radeon RX 6600
AMD製のRadeon RX 6600は、8GBのメモリサイズを備えるものの、価格は6万円台に収まっているコスパに優れるGPUです。独自のAMD RDNA 2 アーキテクチャを実装し、スピーディな演算処理を実現しています。
クラウドGPUがコスパ重視のディープラーニングに最適である理由
ここまで解説してきたように、コスパ重視のディープラーニング向けマシンを用意する上でネックとなるのがGPUの存在です。GPU本体を自前で用意するには相応の費用がかかりますが、活用したいのがクラウドGPUサービスです。
初期費用を抑えられる
クラウドGPUは、クラウド経由でGPUのリソースを利用できるサービスですが、最大のメリットはそのコストパフォーマンスです。クラウドGPUは月額課金や従量課金といった料金システムで利用するため、本体を購入する必要がありません。
高額な本体費用を負担する必要がなく、マシンの用意の際に発生する初期費用を大きく抑えられるため、個人での運用はもちろん、ビジネス用途での運用を考えている方にもおすすめできるサービスです。
従量課金でコスト管理に無駄がない
クラウドGPUの料金プランはサービスによって異なりますが、基本的には使用するリソースの量や質に応じた従量課金制です。そのため、サービスを使った分だけ費用負担が発生する無駄のないコスト管理が可能となり、「高額なGPU導入費用のもとを取らないといけない」といったプレッシャーに追われる心配もなくなります。
リソースの増減を自由に設定できる
クラウドGPU経由で利用できるリソースは、必要に応じて自由に増減できることも魅力です。たとえば、繁忙期の際には多めにリソースを契約してスペックに余裕を持たせ、閑散期は契約するリソース量を減らし、余計な出費を抑えることができます。
GPUを自前で用意すると、こういった融通を利かせることができないため、非常に柔軟性に優れているといえるでしょう。
まとめ
今回は、ディープラーニングをコスパ重視で実践するための、GPU選びのポイントについて解説しました。GPUは今やAI開発の主軸となるユニットとして知られており、PC選びの際にもGPUのスペックを確認することが大切です。
ただ、GPUはその演算処理能力の高さや需要の拡大から、非常に購入価格が高額であるという問題を抱えています。コスパ重視でマシンを用意する際のネックとなるポイントですが、そんなときに活用したいのがクラウドGPUです。
コストパフォーマンスに優れるクラウドGPUを活用することで、平凡なGPUしか実装できていないPCも、質の高いディープラーニングを実行できるようになります。
当社モルゲンロットが提供する「M:CPP」は、そんなクラウドGPUのコストパフォーマンスをさらに向上させたサービスを展開しているクラウドGPUです。大手クラウドGPUサービスと比較して、最大で1/2のコストでGPUを活用できるのはもちろん、最新のAMD製GPUサーバーを採用し、マシンパフォーマンスも申し分ありません。
サーバーもユーザーごとに割り当てられた専有サーバーを提供するの、他のユーザーの利用に伴う干渉を受ける心配もなく、常にフルパフォーマンスを発揮できる環境が整います。サーバープランを検討する際も、当社エンジニアがニーズに合わせてプランを検討するため、サーバー導入時の負担軽減に活躍します。
クラウドGPUの導入を検討の際にはM:CPPをご検討いただき、お気軽にお問い合わせください。