【2022】GPUの仮想化(vGPU)とは?得られるメリット・運用時に覚えておきたいポイント

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GPUの仮想化

業務のハイテク化が進む中で、課題となりつつあるのがリソースの有効活用です。

ハイテクをフル活用するためには、CPUやGPUのリソースに余裕を持って業務を遂行する必要があります。しかし、機械学習などの高負荷なタスクが発生する業務において、リソースの節約を実施するには限界もあります。

そこで近年注目を集めているのが、GPUをはじめとするハードウェアの仮想化です。サーバーやストレージの仮想化を推進することで、コスト削減やパフォーマンスの向上が見込めることから、導入が進んでいます。

今回は、GPUの仮想化に注目し、仮想化によって得られるメリットや仮想化に適した業務について詳しく解説します。

仮想化とは

仮想化とは

仮想化は、GPUやサーバー、ストレージといった物理的なITリソースを、デジタル上で仮想的に再現する技術を指します。1台のサーバーしかないのにも関わらず、仮想化ソフトを使って複数のサーバーが存在するように見せかけることで、効率的なリソースの運用が実現します。

また、場合によっては複数台のサーバーを1台のサーバーであるように見せかけることで、業務の効率化を図ることもできます。

たとえば、負荷の小さい業務には仮想化によって小分けにした仮想サーバーを割り当て、その余剰分をより大きな負荷のかかる業務に割り当てるといった使い方が可能になります。

物理的なリソースを足りない分だけ増設するというのはシンプルな解決策ではあるものの、導入にはそれだけコストがかかるため、リソースの仮想化によって効率良く既存の資源を有効活用できます。

仮想GPU(vGPU)とは

仮想GPU(vGPU)

仮想GPUは「vGPU」とも呼ばれており、仮想化されたGPUのことを指します。

GPUはもともとグラフィック処理に特化しているユニットとしてコンピュータに実装されていますが、近年はグラフィック技術の向上や、人工知能開発において重要な役割を果たすようになったことから、GPUにかかる負荷は上昇しつつあります。

そのため、GPUを仮想化することによってGPUにかかる負荷を分散し、効率よく既存リソースを活用できる環境を整備することで、余計なGPUの増設などを回避することができます。

仮想GPUの仕組み

仮想GPUを実装するためには、専用の仮想化ソフトが必要です。ソフトウェアを立ち上げることで、物理GPUが有するリソースを仮想化して複数のGPUに小分けすることにより、物理GPU単体で運用するよりも効率的なリソース配分を実現します。

GPUは並列処理を得意としているユニットですが、仮想化によってより多くの並列処理を行えるようになることで、パフォーマンスが向上するという仕組みです。

GPUの仮想化により得られるメリット

GPUの仮想化により得られるメリット

GPUは単体でも十分活躍してくれますが、仮想化を実行することによって、さらにそのポテンシャルを引き出すことができます。ここでは、GPUの仮想化から得られるメリットを確認しておきましょう。

システムの効率化

GPUの仮想化は、まず社内システムの効率化につながります。GPUのリソースが足りなくなった場合でも、仮想化によって足りないマシンスペックを補うことで、物理的な増設を行わなくとも必要なパフォーマンスを獲得することができます。

既存資源を余すことなく使えるため、設備投資にかかるお金を削減できるのはもちろん、導入にかかる時間や労力も減らすことができるため、「もう少しリソースをなんとかできないか」というシーンにおいては活躍できる解決策です。

CPU使用率の低下

GPUの仮想化は、GPUの運用効率を高めるだけではなく、CPUの使用率の低下にも貢献します。GPU仮想化によってデータセンターの処理能力が高まることで、稼働に必要なCPUの処理能力を減らすことができるためです。

これまで30%程度のCPU使用率に達していたアプリケーションの稼働にも、GPU仮想化によってリソースの効率化が図られ、CPUへの負荷も10%程度に抑えられるようになるなど、CPUへの負担削減効果は非常に高いとされています。

仮想化は、GPUの負担増加に対するソリューションとしてはもちろん、CPU負担の増加を解消するための方法としても有効であることが知られつつあります。

職場環境の改善

GPUの仮想化によって、必要以上に設備を設置しないことにより、職場環境が悪化するのを回避できるというメリットも挙げられます。

仮想化ソフトの導入は、GPUを効率良く運用するために配分をコントロールできるだけでなく、GPUリソースを一元管理できるよう環境を整備するのにも役立ちます。システム担当者は社内のGPUリソースをまとめて把握できるため、GPUの維持管理のためにあちこちとマシンを見て回る必要はなくなります。

また、余計な設備の増設を回避することで、オフィススペースを圧迫したり、マシンの稼働によって室温が上昇したりするのを回避できるため、労働環境の改善に役立ちます。

余計なマシンを稼働させる必要がなくなることは、光熱費の削減、ひいては排出CO2の削減につながります。環境負荷の小さなビジネスモデルの構築やSDGsの達成は、企業のブランド価値向上にも大きく貢献するため、仮想化はその足がかりにもなるでしょう。

仮想GPUが得意とする役割

仮想GPUが得意とする役割

仮想化されたGPUは、物理GPUが持つリソースを小分けにして効率よく配分できる点が最大の特徴です。ここでは、仮想化されたGPUが得意としている役割について確認しておきましょう。

グラフィックス関連業務

仮想GPUが最も活躍できる業務としては、グラフィックス関連業務が挙げられます。仮想化されたGPUは、物理マシン同様大量の計算処理をこなすことを得意としているため、多大な計算タスクを一度にこなさなければならないグラフィック関連のタスクを、仮想GPUはサポートします。

グラフィック技術の進化は非常に高速で、たった数年で購入当時は最新だったGPUも、瞬く間に時代遅れのモデルとなってしまう可能性を抱えています。グラフィック技術が進化するたびにGPUを買い換えるのは非効率ですが、仮想化によってスペックを補うことで、物理マシン単体では発揮できないパフォーマンスを実現できるようになります。

通常のレンダリング業務はもちろんのこと、仮想デスクトップを稼働させる際にも仮想GPUは役に立ちます。通常のデスクトップとは異なり、仮想化環境で動作するデスクトップは、映像やマウス、キーボード処理が行われるまでにタイムラグが発生する可能性があり、十分なリソースが確保されていなければ、ラグがひどく、ユーザビリティの低下を招きます。

GPUの仮想化を実行することで、仮想デスクトップ上で複雑な処理を行っても、通常のパフォーマンスを維持しながら運用できるため業務上で余計なストレスを抱えてしまう心配はありません。

稼働時間の長い機械学習アプリ

GPUの仮想化は、人工知能開発のための機械学習においても活躍します。仮想GPUの強みは、通常の物理GPUよりも一度に多くの計算処理を並行して行えることにあります。

機械学習はグラフィック処理と同様、一度に多くのタスクを同時並行的に処理する必要があるため、仮想GPUの導入は機械学習を高速化するのに役立ちます。ただ、GPUを仮想化すれば機械学習を簡単に効率化できるとは限らない点にも注意が必要です。

仮想化されたGPUが役に立つのは、あくまで実際にデータをAIに読み込ませる際のパフォーマンスを支えるときに限定されるため、データの加工からパラメータの調整まで、機械学習のプロセスすべてに良い影響を与えるわけではありません。そのため、GPUの仮想化が最も効果を発揮するのは、読み込ませなければならないデータ量が多く、計算処理に多大な時間を要しているケースに限定されます。

十分なデータを用意することができたものの、その処理を効率化するためのGPUを満足に確保できていないとき、GPUの仮想化を検討すると良いでしょう。

あるいはすでにAIアプリケーションとして実践の現場で稼働している、多くの計算処理を必要とするシステムを動かすためにGPUの仮想化を実行するのも良いでしょう。ポピュラーな例としては、空港の税関における顔認識システムが挙げられます。

空港では日夜多くの渡航客が自身のIDチェックを入国前に行いますが、その際に採用されているのが顔認識によるID確認の簡略化です。顔認識技術のように、リアルタイムで多くのグラフィック処理を必要とするだけでなく、常に演算処理をフル稼働させなければならない現場においては、仮想化されたGPUが最も真価を発揮するでしょう。

仮想GPUが苦手とする役割

仮想GPUが苦手とする役割

仮想化されたGPUは効率的なGPU活用を推進する反面、必ずしも常にユーザーへメリットを提供するとは限りません。むしろ、仮想化そのものが余計なプロセスとして発生し、物理GPUのリソースを圧迫してしまうケースもあります。

事例としては、GPUリソースを多く必要としないタスクが主に当てはまります。仮想GPUは、常にGPUを使った演算処理を必要としている現場において真価を発揮し、休みなくGPUを動かし続けている現場では大きな効果を発揮します。

一方で、対してGPUへの負担が発生せず、たまにリソースを圧迫する程度の現場においては、仮想化による恩恵は小さいものに終わってしまいます。GPUの仮想化にも相応のコストは発生するため、そのコストに見合うだけの成果が期待できるかどうか、あらかじめ検討しておきましょう。

仮想化をサポートしている主なGPU製品

ディープラーニングのcpuとgpuの比較

仮想GPUの普及が進んだことで、製品の中には仮想化を前提としたモデルも登場しつつあります。仮想化を公式にサポートしている主なGPU製品について、ご紹介します。

NVIDIA A100

NVIDIAが販売しているA100は、NVIDIAの仮想化ソフトと親和性の高いGPUです。通常のデータ処理はもちろん、AI開発や運用といった膨大な演算処理能力が求められる現場においても活躍できる高性能なモデルとなっており、40GBのメモリサイズで高度なコンピューティングを満足にサポートします。

AMD Radeon™ PRO V620 GPU

AMD社が提供するRadeon PRO V620は、クラウドゲーミングをはじめ、仮想デスクトップやワークステーションの稼働に役立つ専用プラットフォームに対応し、演算処理を高速化します。

世界初となるハードウェアベースでのGPU仮想化ソリューションを提供しているため、仮想化を前提とした物理GPUの導入を進め、業務全般をクラウド経由で実行したいと考えている現場において、高いパフォーマンスを発揮します。

まとめ

GPUの仮想化によって得られるメリットや、具体的にどのような業務に適用するのがベターなのかについて解説しました。

GPUは仮想化によってリソースを有効活用できる一方、負荷の小さな業務に適用する場合、かえって仮想化が重荷となる可能性もあるため、運用には注意が必要です。現場への設備コストを抑え、十分なGPUリソースを確保したい場合には、クラウドGPUサービスの利用がおすすめです。

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