GPUの「並列処理」は何が凄いのか?活用方法とは?

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GPUの並列処理

コンピューターはさまざまなプロセッサが作用することでパフォーマンスを発揮していますが、中でも近年注目を集め始めているのがGPUです。GPUは現代のPC利用においても不可欠な存在ですが、GPUが持つ並列処理のポテンシャルは、特に重視されるようになってきました。

今回は、GPUの並列処理がなぜここまで注目を集めているのか、どのような活用方法が存在するのかについて解説していきます。

GPUとは

そもそもGPUは、コンピューターにおける映像処理を担当するためのユニットです。正式名称はGraphic Processing Unitというだけあり、グラフィック特化のプロセッサとして活躍してきました。

近年は美麗な3DCGや美しい映像をテレビやYouTubeなどでも視聴できるようになりましたが、あのような映像を出力したり、あるいは編集したりするためには、優れたGPUの存在が不可欠です。質の高いGPUは、このような映像技術の発展に支えられてきたとも言えるでしょう。

CPUとの違い

GPUと似たような役割を持つユニットとして、CPUの存在が挙げられます。CPUはCentral Processing Unitの略称で、コンピューターの計算処理全般を担当しているプロセッサです。キーボード操作からブラウザの表示、アプリの起動に至るまで、すべての処理はCPUが一挙に担っています。

もともと、コンピューターにおける計算はCPUがそのすべてを担ってきました。しかし、映像技術の発展に伴いグラフィック処理の負担が大きくなっていったことで、CPU単体ではパソコンの処理すべてを賄えなくなってきたのです。

そこで登場したのが、GPUです。GPUはそんな高負荷であるグラフィック処理だけを担うユニットとして搭載されるようになり、今ではCPUとGPUの2枚体制が一般的になっています。そのため一般的に普及しているPCはどちらか一方というわけではなく、両方とも搭載されています。

また、CPUは計算処理を一つずつ実施する直列的な計算を採用している一方、GPUは同時に複数の計算を行える並列処理を採用していることも大きな相違点です。なぜこのような違いが生まれているかについては、後ほど解説します。

GPUが注目を集める背景

GPUはコンピューティングにおける基本的なユニットですが、近年特に注目を集めるようになりました。GPUが注目されるようになった背景としては、以下の2つの理由が大きいと言えます。

GPUの性能が向上したため

一つ目は、GPUの基本性能が大幅に向上している点です。GPUはグラフィックに特化したパーツであるとはいえ、グラフィックの処理は非常に重く、高度な映像処理が必要になるほど、負荷が大きくなります。

そのため、優れた映像体験のためにはGPU性能が左右するので、近年流通しているGPUの多くは非常に優れたパフォーマンスを発揮するまでに進化しています。

GPUの性能が向上し、安価に流通するようになったことで、手軽にハイパフォーマンスなPCを組めるようになりました。GPUの性能は年々アップグレードしており、その進化スピードは加速しつつあります。最新のGPUはもちろん高額ですが、数年もすればより優れた最新モデルが登場するので、型落ちモデルとして安く手に入れることもできます。

高度なGPUを気軽に入手できる環境は、更なるコンピューターの進化を後押ししています。

GPUの活用機会が増加しているため

GPUが広く普及されるようになったもう一つの理由が、GPUの活用機会の増加です。前述のとおり、従来のGPUというのはグラフィックに特化したユニットだったという登場背景もあり、汎用性の面では期待されていませんでした。むしろ、CPUの性能の高さばかりが注目され、GPUはその次というケースが普通だったのです。

しかし、近年のGPUブームの背景にあるのが、GPUの活躍が映像に留まらない汎用性の獲得です。GPUメーカーや開発者の増加により、優れたGPU向けのフレームワークが登場しています。フレームワークの実装によって、GPUをグラフィック以外の分野でも扱えるようになりました。

その結果、GPUの利用機会は増えそのパフォーマンスにも注目が集まり、近年のGPU開発を後押しすることとなっています。

GPUが並列処理である理由

GPUの特徴として、計算を実行する際に並列処理を採用している点にあります。並列処理を行うことで、どのようなメリットがあるのかについて解説します。

同じ計算処理を効率良く行うため

並列処理を採用しているメリットは、同様の計算処理を複数同時にこなせる点にあります。コンピューターが実行する計算タスクにはさまざまな種類がありますが、中には同様のプロセスで処理できるタスクも数多く発生します。C

PUの場合、たとえ同じ内容の計算でも一つずつ実行しなければなりませんが、GPUの場合、同時に複数のタスクを処理することが可能です。GPUの性能によって、どれだけ同時に処理ができるかというのは大きく異なりますが、いずれにせよCPUより効率的に動作できることがメリットです。

グラフィック処理は同様の計算が多数発生するため

GPUになぜ並列処理の機能が備わっているかというと、グラフィック処理には同一の計算が多数発生するためです。

グラフィック描写というのは、ディテールの表現のために同じシーンでも多くの計算が必要になります。そのため、微妙な表現の変化を捉えるためにGPUは多くの同一処理が必要となり、並列計算の能力が役に立つというわけです。

逆に、CPUが直列的な処理を採用しているのは、多様な計算に対応できる汎用性の高さを優先しているためといえます。キーボード入力とアプリの起動はまったく別のタスクであるため、これらを別個に対応する上では直列計算が有効です。

GPUの並列処理が活躍する分野

続いて、GPUの並列処理能力の高さが活躍する分野について解説します。GPUの活躍の場は広く、今では以下のような複数のカテゴリで計算処理の役目を果たしています。

4KやVRなどの高度な映像・画像の描画

GPUのポピュラーな利用方法が、高度なグラフィック処理です。これまでも映像処理にはGPUが欠かせない存在でしたが、近年は4Kや8Kといった超高画質なコンテンツが普及し、次世代の映像体験を届けることが一般的になっています。

また、ARやVRなど、2D空間に止まらない新しい映像体験を届ける機会も増えてきました。これらの映像処理においては、質の高いGPUリソースの確保が求められるため、高度な並列処理能力を持った最新のGPUが不可欠です。

単にこれらを動画として再生するだけでも負荷はかかるため、優れたGPUの一般普及が求められます。

映像・CG編集作業

二つ目の活用方法は、映像やCGの編集です。単に映像を再生するだけでなく、これらを作成・編集する上ではより高度な処理技術が求められます。というのも、動画はある程度編集・圧縮されたデータであるため、そこそこの性能のGPUでも処理は可能ですが、オリジナルデータの扱いにはよりパワフルなモデルが必要になります。

近年、非常に映像や3DCGのディテールが向上しているため、データ一つひとつの容量も大きくなっています。そのため、データの増大に合わせて編集環境の強化も求められるようになりました。

映像関係やゲーム関係の制作費用が大きくなっているのには、こういったスペックの問題に対処するための設備投資が必要になっていることも背景に挙げられるでしょう。

ゲーミング

もう一つポピュラーな使い方として、ビデオゲームが挙げられます。

近年はゲーミングPCのように、GPUのスペックに焦点を当てたPCの販売も盛んになっており、家庭用ゲーム機ではなくPCでゲームをする人も増えてきました。優れたグラフィックでーゲームを楽しむためには、性能の良いGPUが必要になります。

そのため、PCに特別詳しいというわけではない人でも、GPUについての知見を持っている人は増えてきています。

人工知能開発

GPU運用の新しい方法として注目されているのが、人工知能の開発です。

実は、人工知能もグラフィック処理同様、膨大な計算処理が発生する一方、そのプロセスが大幅に変化することはありません。そのため、並列処理能力を持ったGPUの活用は、AI開発に大きな変革をもたらしました。

ディープラーニングのような高度なAI開発の現場では、今やGPUの活用が当たり前となっています。高度なAIの開発においてはどれだけ素早く計算を行えるかということが問題となりますが、パワフルなGPUの実装、あるいは豊富なリソースを持ったGPUサーバーの導入は、多くの組織や研究機関で採用されています。

仮想通貨(暗号資産)のマイニング

新しい貨幣として脚光を浴びた仮想通貨(暗号資産)のマイニングにおいても、GPUは活躍します。

仮想通貨の通貨の価値を決定しているのは、マイニングと呼ばれる計算処理がどれだけ行われているかです。多くの計算を行えば行うほど、その通貨における暗号資産は増加し、その価値も増大していきます。

仮想通貨のマイニングは誰でも参加することができ、ビットコインやイーサリアムといったポピュラーな暗号通貨のマイニングは、数年前にブームにもなりました。パワフルなコンピューターを用意すればするほど、多くの通貨を獲得できる一方で、通貨の総量は決まっているので、発掘が進むごとに掘削量は少なくなっていきます。

そのため、莫大なマイニングを続けている企業や組織は、世界中にサーバーセンターを設置し、膨大な数のGPUサーバーを設置することで、日夜通貨のマイニングに取り組んでいるというわけです。

並列処理能力を最大限活用できるクラウドGPUのメリット

GPUの並列処理能力は魅力的ですが、一方でリソースの絶対数が少なければ、その効果を十分に体感することはできません。そこで近年多くの組織が導入を進めているのが、クラウド方式のGPUサーバー、いわゆる「クラウドGPU」です。

クラウドGPUは、従来のGPUサーバーと違ってどのようなメリットがあるのかについて紹介します。

コストパフォーマンスに優れる

まず、クラウドGPUはコストパフォーマンスに優れるサービスである点が高く評価されています。

自社でGPUサーバーを導入する場合、一台あたり何百万円もする本体を購入しなければならないため、多くの初期費用がかかります。また、維持費用や点検費用も定期的に発生するため、常に発生する負担を考慮して運用しなければなりません。

一方のクラウドGPUは、初期費用は発生せず、毎月使った分だけ支払う従量課金でシステムを利用できることが強みです。維持費用についても毎月の料金に含まれているため、複数の負担に悩まされることもありません。

当社モルゲンロットが提供する「M:CPP」ではそんなクラウドGPUのコストパフォーマンスに注目したサービス提供を進めています。大手クラウドサービスよりもコストをさらに抑えられるプランも用意しているので、費用を抑えてGPUを利用したい方におすすめのサービスです。

MCPP

豊富なリソースを活用できる

二つ目のポイントは、豊富なリソースの確保です。自社でサーバーを導入しても、大規模な処理が必要になった際にはリソース不足に陥ることもあり、その対応に追われることも珍しくありません。

クラウドGPUは、こういったリソースの不足が発生することなく、必要なときにはいつでも追加で利用ができる強みを持ちます。増設に当たっては簡単な手続きだけで処理は完了なので、スピーディにリソースの確保を行えます。

リモート環境でも利用できる

また、クラウドGPUはインターネット経由でGPUを利用するので、場所にとらわれず利用できるのも嬉しいところです。自社サーバーはオフィスに赴かなければ利用することはできませんが、クラウドGPUはどこからでも利用できるため、リモートワークの実践にも役に立ちます。

まとめ

GPUの並列処理がなぜ優れているのかについて、その理由を解説しました。GPUの活用機会は増加傾向にあり、今後も技術革新とともに更なる利用が進むと予想されます。

そんなときに活用したいのが、どこからでも利用が可能なクラウド型のGPUサーバーです。M:CPPではAMD社製のベアメタルGPUを採用しており、コストを抑えながらも豊富で質の高いサーバー提供を行なっています。

利用に当たってはエンジニアとの打ち合わせの上、最適のプランや利用方法を提案することができるので、事前準備の負担を最小限に抑えることができます。GPUリソース拡充を検討の際は、お気軽にご相談ください。

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