
ディープラーニングの実践に欠かせないのが、膨大なデータを処理できるマシンの存在です。近年のAI開発において重宝されているのがGPUで、ディープラーニングにおいても例外ではありません。
元々は異なる役割を持つGPUが、ディープラーニングの現場で活躍しているのにはどんな理由があるのでしょうか?今回は、そんなGPUの役割やディープラーニングとの関係、そしてディープラーニングの実践に適したおすすめのGPUの選び方を解説します。
GPUとは
GPUはGraphic Processing Unitの略称で、その名のとおり、主にコンピュータのグラフィック処理を担当しているユニットです。グラフィック技術は近年急激に進化したことで、コンピュータにかかる負荷も大きくなっています。
GPUはそんな膨大なグラフィック処理を単体で担うべく、優れた演算処理能力を備えているのが特徴です。
ディープラーニングにGPUが必要である理由
本来はグラフィック用のGPUですが、近年はAI開発の現場での活躍が頻繁に見受けられます。ディープラーニングにGPUが必要な理由としては、次の点が挙げられます。
CPUよりもはるかにパフォーマンスに優れるから
まず、GPUはCPUよりもはるかに処理能力が高く、単純に計算スピードが速いという点が挙げられます。
CPUは、グラフィック処理以外の計算全般を担うユニットです。他方でGPUはグラフィック処理のみがタスクであるため、前者の方が、負担が大きいようにも思えるかもしれませんが、実は後者の方がパワフルなユニットといえます。
それだけ現在のグラフィック処理には多くの計算が発生し、スムーズなコンピュータ利用を妨げているためです。
ディープラーニングには多くの負荷がかかるから
グラフィック処理には多大な負荷がかかりますが、ディープラーニングはその点も同様です。
ディープラーニングは、通常の機械学習とは異なり、ニューラルネットワークと呼ばれる仕組みを使ってデータを読み込みます。ニューラルネットワークは、何度もデータを計算し、それを膨大なデータで実行するため、普通のCPUではとても実行ができません。
そこでGPUを活用することで、速やかな計算が実現するというわけです。
GPUとディープラーニングは計算処理の相性が良いから
また、GPUとディープラーニングは計算処理の相性が良いこともメリットとして挙げられます。
GPUが実行するのは並列処理と呼ばれる手法で、一度に複数のタスクを同時に計算するものです。これは同じ種類のタスクが発生するときにのみ使用できる能力ですが、実はグラフィック処理も大量の同種のタスクが発生するため、GPUが活躍します。
GPUなしでディープラーニングはできる?
それでは、GPUを使わずにディープラーニングを行った場合、どのような結果になるのでしょうか?
CPUでも実行可能だがメリットは小さい
GPUを使わないディープラーニングを実施するとなると、CPUを用いることになります。
結論をお伝えすると、ディープラーニングはCPUでも実行可能です。ただ、そのパフォーマンスはひどく遅く、GPUのそれよりもはるかに劣ります。
CPUで実行するメリットは、GPUの導入費用がかからないことですが、ある程度の結果を求めるとなると、GPUの導入は不可欠です。そのため、CPUを使ったディープラーニングを選ぶ利点はないと考えて良いでしょう。
格安モデルでも良いのでGPUを導入した方が良い
ノートPCのように、GPUを実装していないPCを普段使いにしている人は少なくありません。GPUがなくともディープラーニングを試すことはできますが、それでは期待しているような結果を得ることは極めて難しいといえます。
実用性のあるAIを開発したい場合、格安モデルでも良いので別途GPUを用意し、開発を進めることをおすすめします。
ディープラーニング向けGPUの選び方のポイント
ディープラーニング向けGPU選びのポイントは、次の2点が重要です。
スペックを丁寧に確認する
まず、ディープラーニングを実行する上で必要になるスペックが十分に足りているかどうかを確認します。ポイントなるのは、次の3つのスペックです。
CUDAコア数(ストリームプロセッサ)
CUDAコア数は、そのGPUの性能を端的に示す数値です。NVIDIA製のGPUではCUDAコア数ですが、AMD製GPUではストリームプロセッサと呼びます。
この数値が大きいほどパワフルなGPUであるといえるため、予算内で可能な限り大きな数字のモデルの購入を検討しましょう。
メモリサイズ
メモリサイズとは、計算処理を行う際、一時的にデータを保存するためのストレージの大きさを指します。この値が大きいほど、一度に計算できる量が増え、計算スピードも速くなります。
大体8GB以上のメモリであれば、ディープラーニングの基本的な処理を実行できます。
アーキテクチャ
アーキテクチャは、そのGPUの新しさを示す項目です。最新のGPUほど性能が良いため、その時々で最新のアーキテクチャを確認し、それを基準にして選ぶことが大切です。
購入価格と運用にかかる費用を見積もる
GPUの価格は非常に幅が広く、あらかじめ予算を決めておかないと、いつまで経っても選定を進めることができません。また、GPUを購入するだけでディープラーニングを始めることはできず、どこかからデータを取得する必要もあります。
学習データは無料で手に入るものもありますが、膨大なデータを集めるとなると、専門の会社から購入することも必要です。データ獲得にかかる費用も踏まえ、GPU選びを進めましょう。
ディープラーニングにおすすめのGPU:コスパ重視の場合
では、ディープラーニングの実践に適したおすすめのGPUを確認しておきましょう。まずは、予算面での制約が大きい場合に検討したいコストパフォーマンスに優れるGPUを紹介します。
GeForce RTX 3050
画像引用元:Amazon
GeForce RTX 3050は、一般に広く普及しているGeForceシリーズのスタンダードモデルです。価格は3〜4万円程度で、GPUとしては気軽に購入しやすい製品のため、とりあえずGPUを用意しなければならないというニーズに幅広く応えてくれます。
メモリサイズは8GBと標準的で、大抵のタスクに対応することが可能です。NVIDIAの独自AI技術であるTensorコアを内蔵しており、ディープラーニングをはじめとするAI開発にも適しています。
Radeon RX 6600 Challenger D 8GB
画像引用元:Amazon
Radeon RX 6600 Challenger D 8GBも、4万円前後で購入できるコストパフォーマンス重視のGPUです。メモリサイズは8GBで、オリジナルクーラーと騒音を低減するセミファン機能を実装し、運用環境への負担軽減に努めます。
ディープラーニングにおすすめのGPU:性能重視の場合
それでは、ディープラーニング用GPUを予算の制限を設けずに選ぶ場合、どのようなGPUを導入することになるのでしょうか?ここでは性能重視で選んだ場合GPUを紹介します。
NVIDIA Tesla T4シリーズ
画像引用元:NVIDIA
ハイエンドGPUとして知名度が高いのは、NVIDIAのTeslaシリーズです。そのうちの一つであるTesla T4は、価格にして40万〜50万にも達するモデルであり、これ一台を購入するだけでPCが複数台購入できるような負担が発生することがわかります。
その分性能は申し分なく、メモリサイズは通常の倍にもなる16GB、CUDAコア数は2560と、強力なパフォーマンスを発揮します。
AMD Instinct MI25
画像引用元:AMD
さらに強力なGPUを求める場合、AMD Instinctシリーズと呼ばれるモデルも存在します。その中の一つであるMI25は、価格にして100万円前後にもなる高級なモデルで、簡単には購入できない製品です。
その分スペックも強力で、メモリサイズは16GB、ストリームプロセッサは4,096にのぼります。
クラウドGPUを活用するメリット
優れたディープラーニング環境を整えるためには、高級なGPUの導入は不可欠です。ただ、先ほども紹介したように、ハイエンドGPUを導入するとなると購入費用も高額になり、気軽に導入できるものではなくなるのが課題です。
そこで活用したいのが「クラウドGPU」です。コストパフォーマンスやメンテナンスコストなどの面で、大きなアドバンテージを有しています。
初期費用が安い
まず、クラウドGPUは初期費用が非常に安価に抑えられるため、気軽に導入できることが特徴です。
通常のGPUの場合、導入に当たっては購入費用をあらかじめ用意しなければなりません。一方、クラウドGPUは、導入に伴う費用といえば初期費用手続きくらいであり、GPUリソースの使用料金は従量課金制です。そのため、使った分だけ月毎、あるいは年毎に支払うため、まとまった予算を確保できない場合に非常に便利です。
維持管理負担がかからない
維持管理のコストが小さいことも、クラウドGPUの特徴です。
通常、GPUリソースを自社で賄う場合、GPUを購入する費用はもちろん、その後も継続的にコストが発生します。GPUサーバーを設置するためのテナント費用や、GPUとGPUを冷却するための電気代、サーバーのメンテナンスを行うための保守管理費など、継続的な負担が半永久的にもたらされます。
一方のクラウドGPUは、これらの費用もすべて日々の従量課金に含められるため、別途予算を計上する必要はありません。また、GPUサーバーのメンテナンスもサービス事業者が実施してくれるため、ユーザーの側で特別な作業が必要ないのも嬉しいポイントです。
リソースを柔軟に増減できる
クラウドGPUなら、手続き一つで気軽にリソースを増減できます。
自社でGPUを賄う場合、GPUが不足した際、さらにサーバーを購入して対処する必要がありますが、これは負担の大きな選択です。購入費用もさることながら、実際に導入されるまである程度時間を必要とするため、今すぐにリソースが欲しいときには有効ではない点も課題といえます。
一報、クラウドGPUの場合はネット経由でリソースを提供してもらえるため、GPUを新たに購入する際の待ち時間は発生しません。プランを変更すればすぐに、潤沢なリソースを提供してもらえるため、スピーディな業務遂行が必要な場合でも心強いサービスです。
まとめ
GPUの仕組みやディープラーニングとの関係、そして選び方などについて解説しました。
GPUがなくともディープラーニングは実行可能ですが、そのパフォーマンスは低く、事実上GPUがなければまともなディープラーニングは行えないのが現状です。目的に応じたGPUを上手にピックアップし、導入することをおすすめします。
とはいえ、GPUは家庭用であれば気軽に導入も可能ですが、本格的なビジネス用途でディープラーニングを実践する場合、販売価格が高く容易には購入できないハイエンドなGPUを必要とするため、ハードルは高くなります。
そこで活用したいのがクラウドGPUで、初期費用を抑えて長期にわたって運用ができるため、非常にコストパフォーマンスに優れる選択肢といえます。
当社モルゲンロットが提供する「M:CPP」は、そんなクラウドGPUの魅力をさらに高めたサービスを提供しています。大手クラウド事業者よりも、最大で1/2程度のコスト削減ができるプランを用意しており、費用面での負担を軽減したい方にとっては最適なサービスです。
もちろん、利用できるクラウドサーバーは最新のAMD製GPUで構成されており、性能面で他のサービスに劣ることはありません。ユーザーは専有サーバーを使うことができるため、他のユーザーから干渉を受け、パフォーマンスが低下することもないことが強みです。
導入に当たっては、エンジニアがユーザーに最適なプランを提案しているため、ユーザー側で時間をかけてサーバー構成を検討する必要もありません。クラウドGPUの導入を検討の際には、お気軽に当社モルゲンロットまでご相談ください。