ディープラーニングと「教師あり学習」の違いとは?メリットと課題

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人工知能の開発は、テクノロジーの進歩によってますます高度なものへと進化を遂げつつあります。特に、ここ10年ほどの発展は目覚ましく、研究分野での飛躍はもちろん、私たちの一般的な生活においてもこれらの技術を目にする機会は急増しています。

そんなAI開発の進歩へ大いに貢献しているのが「ディープラーニング」と呼ばれる技術です。これまでは、「教師あり学習」と呼ばれる学習プロセスがポピュラーだったAI開発を、ディープラーニングはどのような変化をもたらしたのでしょうか?

今回は、そんな「教師あり学習」のメリットと課題を確認しながら、ディープラーニングの登場がどんな影響を与えたのかについて紹介していきます。

教師あり学習のメリット

教師あり学習のメリット

教師あり学習は、人工知能開発の分野においては最もポピュラーな機械学習プロセスの一種とされています。ここでは、そんな教師あり学習が好んで採用されている理由のメリットについて解説します。

誰でも簡単に取り組める

教師あり学習のメリットの一つが、誰でも簡単に取り組めるという点です。

教師あり学習は、教師データと呼ばれる正解ラベルが付与された状態のデータを使った学習方法です。AIに解答させたい課題を設定し、問題解決の決め手となる正誤判定の答えをあらかじめ伝えながら、データをインプットすることで正しい答えを高い確度で導きやすい手法になっています。

教師あり学習は正解ラベル月のデータ、いわゆる教師データを用意すれば、後はそれらを読み込ませるだけでAIを育てることができるため、簡単にAI開発を実現できます。

AIの学習モデルを実装する方法も、今ではネットでさまざまな手法を探すことができるため、個人でも開発が可能です。初めてAIを実装するという人が、初めに取り組むことになるのが教師あり学習というわけです。

汎用性が高い

教師あり学習はシンプルな仕組みの学習プロセスでありながら、汎用性が高いという点も評価されています。

教師あり学習の最もポピュラーな使い方として、正誤判定が挙げられます。画像やテキストデータなどを読み込み、どのデータが正しくて、どれが誤っているのかを瞬時に判断できる能力は、さまざまな業界で活躍できます。

たとえば、農業では収穫物の品質判定、製造業では故障検知や予防システム、金融では株価予測など、すでに多彩な活躍を見せています。

教師あり学習の課題

教師あり学習の課題

このように、教師あり学習は私たちの生活へさまざまな利益をもたらしてくれますが、一方で運用においては解消すべき課題も見られます。ここでは、教師あり学習の運用における2つの課題について紹介します。

膨大な教師データが必要

1つ目の課題は、膨大な教師データを必要とする点です。教師あり学習は確かに教師データさえ読み込めれば効率的な学習を行い、精度の高いシステムへと育ってくれますが、肝心の教師データの確保は多くの企業が困難を抱えている点でもあります。

実際、AI開発の大半の時間とコストはデータ収集に充てられているとされており、AIの学習に費やされている時間はそれよりもはるかに少ないと言われています。AI開発と聞くと高度な研究が繰り返されているようなイメージを想起させますが、実際には教師データの確保に奔走しているのが現状です。

教師データは通常のデータとは異なり、一つひとつに正誤判定のラベルを付与しなければなりません。そのため、ただデータの量を用意すれば良いということではなく、用意したデータを教師データとして加工する手間が発生します。教師あり学習のためのデータ確保は、このような背景から負担が大きいとされているのです。

運用シーンには限界もある

2つ目の課題が、運用シーンの限界です。確かに教師あり学習は汎用性の高い人工知能開発に役立つ一方、必ずしも万能であるとはいえません。

教師あり学習が苦手としているのは、正解のない答えを求められるケースです。たとえば、自然言語を使った文章の生成を行ったり、画像を生成したりといった、クリエイティブな解が必要になるものです。

というのも、教師データに付与されるラベルは、何が正しくて、何が誤っているのかが明らかな場合に限定されているため、無限の可能性を秘めた答えをラベルとして提供することができないためです。正解のラベルを有効活用できない問題に対応するためには、教師あり学習以外のアプローチでAIの開発を行わなければなりません。

ディープラーニングとは

ディープラーニングとは

教師あり学習を用いたAI開発の限界を突破するきっかけとなったのが、ディープラーニングです。ディープラーニングは日本語で「深層学習」とも呼ばれる手法で、機械学習の一種として台頭している技術です。

ディープラーニングの最大の特徴は、自らデータの特徴量を発見できるという点です。教師あり学習では教師データに付与されたラベルをもとにデータの特徴を学習してきましたが、ディープラーニングを採用したAIは、正解のラベルがなくともデータの特徴を理解し、学習を進められるのです。

ディープラーニングの仕組み

ディープラーニングを支えているのは、「ニューラルネットワーク」と呼ばれる構造です。これは人間の神経細胞(ニューロン)から着想を得て構築されたシステムで、「入力層」「隠れ層」「出力層」という三層構造を軸とし、データのやりとりを層同士で行うことで、特徴量を抽出します。

ディープラーニングに実装されているニューラルネットワークは、隠れ層のボリュームが大幅に膨れ上がっていることが特徴です。必要最低限である三層だけでは有力な結果を得ることはできませんでしたが、100を超える隠れ層を実装することにより、確かな成果が得られるようになったのです。

ディープラーニングにおいてポピュラーなアルゴリズムが、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)です。複数の隠れ層を通じてデータを読み込ませるだけでなく、層が深くなるごとに複雑な特徴の発見に努めてくれるため、安定したパフォーマンスを発揮しやすい手法とされています。

このようなディープラーニングの仕組みを採用して、近年頻繁に採用されているのが「教師なし学習」です。その名のとおり、教師データがなくともAIはディープラーニングを用いて学習を進められるため、AI学習の利便性を高めるだけでなく、より高度なAIの登場に拍車をかけています。

ディープラーニングが「教師あり学習」よりも優れている点

ディープラーニングが教師あり学習よりも優れている点

ディープラーニング台頭のインパクトは、AI分野において教師あり学習を陳腐化させるほどのインパクトをもたらしました。ここでは、ディープラーニングがどのような点で教師あり学習よりも優れているのかについて、確認しておきましょう。

特徴量を自ら抽出できる

ディープラーニングが教師あり学習よりも優れている点としては、特徴量の自動抽出が挙げられます。

教師データ作成においては、人間が自ら特徴量を抽出し、ラベルとして貼り付ける必要がありました。しかし、ディープラーニングを用いた教師なし学習では、このラベル貼り付けの作業が発生しないため、手持ちのデータを丸ごと読み込ませることが可能です。

より高度なAIを構築できる

特徴量の自動抽出によってAI開発の効率化が進んだことはもちろん、もう一つのメリットとして人間では気づかなかった特徴量も察知できるようになった点が挙げられます。

教師データを使った学習プロセスは、人間が発見した特徴量にAIのパフォーマンスは依存します。ベーシックなAI開発においてはそれでも十分な効果を発揮しますが、人間を超えるAIを目指す場合、人間に学習を依存していては到達することができません。

一方のディープラーニングありきのAI開発においては、人間では気づかない特徴量をAIは発見し、物事の意思決定の基準として取り入れることができるようになります。一見すると区別がつかないような課題に対して、AIは瞬時に判断が下せるようになる可能性を得られます。

ディープラーニングを活用した技術の例

ディープラーニングを活用した技術の例

続いて、ディープラーニングを活用することで、具体的にどのようなことができるのかについて解説していきましょう。ディープラーニングはすでに多くの分野で成果を挙げており、今後もさらなる活躍事例が登場すると考えられます。

物体検出

ディープラーニングのポピュラーな活用方法として、物体検出が挙げられます。これは、画像や映像に捉えられている、あらかじめ指定したオブジェクトを特定するだけでなく、具体的な位置情報などの詳細情報を読み取ることができる技術です。

従来の教師あり学習では、画像や映像に表示されている特定のオブジェクト、たとえば人間や自転車の存在を確認することはできました。これは「画像内に自転車が存在するか」などのYes/NOクエスチョンで回答ができる問題であるため、教師あり学習でも対応は可能だったのです。

物体検出の場合、特定のオブジェクトの存在を確認するだけでなく、それがどのあたりにあるのか、そして何個あるのかなどの情報も合わせて検出することができます。ディープラーニングによって、オブジェクトの特徴量を自動で抽出し、非常に細部まで特定できるようになったためです。

物体検出の技術は、セキュリティカメラの精度向上はもちろん、イベント会場における混雑度合いのチェックにも活用できるなど、幅広い活躍が見込まれています。

画像生成

画像生成は、ゼロからお題に基づいて画像を生成するという技術です。たとえば、「ネコの画像」という指定があった場合、言われたとおりにネコのイメージ図を生成できるという技術です。

教師あり学習では、ネコの画像を特定することはできても、実際にネコの画像を作ることは非常に困難でした。ネコの定義づけを、教師データをインプットする際に細部まで指定しなければならないため、あまりにも手間がかかりすぎてしまうためです。

しかし、ディープラーニングを採用した教師なし学習を活用することで、ネコのイメージ映像を大量に学習させることで、自らネコの画像を生成することができるようになっています。画像生成の技術は、あらゆる画像の生成に応用が効くだけでなく、映像や3Dグラフィックなど、別のデータでも応用が可能です。いわゆる芸術活動のようなクリエイティブな活動も、AIによって実現することができるでしょう。

自然言語処理

英語翻訳や日本語の文章生成といった、自然言語処理もディープラーニングの登場で飛躍的に進歩を遂げた分野の一種です。自然言語は人間が感覚的に用いている側面も強く、細かい定義づけを前提としたコンピュータには理解しがたいものでした。

しかし、教師なし学習によって、開発者が指定しなくても細かい分節の意味や単語の捉え方、文脈などへの理解が深まったことで、今では自然な文章もスムーズに生成することが可能となっています。

ディープラーニング運用の課題

ディープラーニング運用の課題

ディープラーニングは、教師あり学習よりも可能性に溢れた技術である一方、運用については課題も存在します。ここでは、ディープラーニング運用に伴う主な2つの課題について紹介します。

膨大な量のデータを必要とする

一つ目の課題は、膨大なデータを必要とする点です。

教師データを用意する必要性は小さくなった一方で、特徴量を効果的に発見し、学習を深めていくためにはデータの母数を強化する必要が出てきました。いわゆるビッグデータのような、煩雑なデータの塊が注目されている理由も、大量のデータを必要とするディープラーニングの台頭が背景に挙げられます。

自社の蓄積データだけで賄うことは難しくなりつつあるため、販売されているデータセットを購入したり、新たにデータを確保する方法を確立したりすることが重要です。

リソースに優れたマシンを必要とする

ディープラーニングは計算処理さえできれば高度なAIが開発できる一方、そのための高度な業務に耐えうるマシンを用意しなければなりません。近年はGPUを使った AI開発が盛んですが、GPUサーバーを導入してリソースを増やすなどして、十分なスペックを確保する必要性が高まっています。

まとめ

ディープラーニングがどのような点で教師あり学習に優っているのか、どんな活用方法があるのかについて紹介しました。

ディープラーニングの運用は多くの可能性を持っている一方で、実現のためには大量のデータを確保したり、十分なリソースを確保したりと課題も残ります。

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