【2023】エッジAIにディープラーニングが必要な理由は?活用事例とクラウドAIとの違い

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エッジディープラーニング

ディープラーニングはAI開発の最先端を行く技術ですが、すでに多くの領域でその成果が現れ始めています。代表的な例としてはエッジAIの登場が挙げられ、広範なAI活用を力強く支える技術といえます。

今回は、そんなエッジAIの役割や他のAI技術との違い、エッジAIの真価とディープラーニングの関係性について、事例を踏まえながら解説します。

エッジAIとは

エッジAIは、エッジコンピューティング技術の一種です。

通常、コンピュータはすべての処理を一箇所で実行し、情報を集約して運用するものと決まっています。一方のエッジコンピューティングは、デバイスそのものが情報処理能力を持つため、中央のサーバーに必ずしもデータを集約する必要はありません。

エッジAIは、AI技術を末端の端末でも運用ができるものであり、AIをより身近に、そして効果的に利用できることから注目を集めています。

エッジAIの仕組み

エッジAIの仕組みは非常にシンプルで、各端末にAIを直接実装することで実現します。端末を通じて取得した情報を、その端末上で直接処理・学習し、その結果を本体のサーバーに送信するというものです。

本来なら中央に集積されたデータをまとめて処理することが一般的ですが、エッジAIなら計算が終わった状態でデータを集積できるため、処理の効率が極めて高いメリットを持っています。

エッジAIの主な用途

エッジAIが活躍する用途は、多岐にわたります。たとえば、工場の中に設置している検品用のセンサーにエッジAIを実装すれば、検品の精度が高くなったり、速度が向上したりする効果が期待できます。

あるいは、店舗における顧客の行動分析ができます。来店者の数や性質、どの棚に注目しているのかなどを分析にかけることで、より正確でスピーディな需要予測や、購買意欲を高められる動線づくりに貢献します。

領域や業界を問わない運用方法を実現するため、今後技術革新が進めば、より多くの導入ケースが期待できるでしょう。

エッジデバイスとは

エッジデバイス

エッジデバイスは、エッジAIを実装するためのデバイス全般を指します。

通常のPCなどとエッジデバイスで異なるのは、その設置場所や大きさです。通常のPCやコンピュータはサイズが大きく、パワーはあるものの設置できる箇所が限られています。

一方のエッジデバイスは、電源コンセントのようにさりげなく設置して置けるようなサイズであることが特徴です。PCよりも小型で、廊下や小さな施設の中に複数設置していても、業務や来店者の行動を妨げることはありません。

本体の汎用性が高く、さまざまな情報収集や計算処理に役立つのが、エッジデバイスというわけです。

「エッジAI」と「クラウドAI」の違い

エッジAIと似たような役割を果たす技術として、クラウドAIと呼ばれるものもあります。これらは一見すると同じような役割を果たしますが、厳密にはそのアプローチに大きな違いが見られます。どのような点を考慮して使い分けられているのか、確認しておきましょう。

推論処理を実行する場所

まずは、実際に推論処理を実行する場所です。

エッジAIの場合、AIを使った推論処理はそのためのデータを取得したエッジデバイス上で実行されます。一方で、クラウドAIは、エッジデバイスはあくまで情報のインプットのためで、AIを使った情報処理は中央のサーバーで実行されます。

処理をエッジデバイスで行うのか、そうでないのかが変わることで、デバイスにかかる負担は大きく異なりますが、近年はエッジAI技術が発展し、日常的な運用も進んでいます。

デバイスに求められる要件

2つ目は、デバイスに求められる要件です。

エッジAIはデバイス上で計算処理を行いますが、必ずしも十分なパフォーマンスを発揮できるとは限りません。扱うデータ量が多ければ、小型のエッジデバイスでは短時間で実行するのが困難であるためです。

一方のクラウドAIは、エッジデバイスではなく中央のサーバーで処理を実行します。エッジデバイスはあくまでデータを集めるためだけの手段であり、それ以上のタスクを求めることはありません。

サービスの豊富さ

後で少し紹介しますが、現状ではクラウドAIよりもエッジAIの方が、実現が困難であるため、サービスのバリエーションはクラウドAIに軍配が上がります。

クラウドAIは、各種センシングをWi-Fi化するだけである程度実現できますが、エッジAIはそうもいきません。小型でなおかつAI運用ができるデバイスの開発には多額の資金を必要とするため、気軽に採用できないのがネックです。

エッジAIが注目される背景

このような条件下でも、エッジAIが注目される背景には次の3つの理由が挙げられます。

リアルタイム処理が可能なため

まず、エッジAIはリアルタイムでの処理をユーザーに可能にするため、最新情報をいち早く利用できます。交通渋滞情報などは、特に即時性が求められる分野ですが、エッジAIがあれば即座に渋滞を把握し、配送ルートの変更などに応用することができます。

従来のエッジデバイスでは、即座の情報を反映したりそれを実行したりすることは困難です。情報の鮮度が高い状態で、有効活用ができます。

通信コスト削減につながるため

エッジAIを導入せず、エッジデバイス経由の通信を継続していると、通信コストの増大につながります。というのも、あらゆる情報をエッジデバイスから本体サーバーに送るのには、多大なデータ負担が発生するためです。

通信回線が低下してしまうリスクはもちろん、より高級な通信回線を開く必要性も高まるところですが、エッジAIであればすでに処理されたデータをインポートできます。処理されたデータは、生のデータよりも洗練され軽量化されているため、送受信の負担も小さく済みます。

セキュリティ対策に効果があるため

エッジAIの活用は、セキュリティ対策の面でも導入効果を期待できます。データ管理はすべてエッジデバイス上で実行されるため、データを分散し情報流出のリスクを最小限に抑えられます。

一箇所にデータを集積する場合、肝心の本体サーバーがハッキングされると一気に情報が流出する可能性もあります。このようなリスクを回避する上でも、エッジAIは有効です。

ディープラーニングのエッジAIにおける役割と課題

エッジAIは実現すれば非常に便利な技術ですが、そのためには越えるべき課題もあります。ディープラーニングの役割に注目しながら、エッジAI運用の課題について解説しましょう。

ディープラーニングの役割

ディープラーニングは、エッジAIの高度な演算能力を支える重要な機械学習手法です。その負荷こそ大きいものの、適切なデータ処理を実現する上ではディープラーニングの活躍が不可欠で、ディープラーニングのおかげで正確でスピーディな算出を行えています。

エッジAI運用の課題

ディープラーニングが実行できるようなマシンを、小型デバイスに採用するのは、それこそ多大な技術力が求められます。現在もコンピュータの小型化は進んでいますが、そのためには開発費用がかかることはもちろん、販売時の価格もまだまだ高いことが予想されるのです。

そのため、エッジAI運用のメリットを把握しきれていない企業では、高価なエッジAI搭載デバイスを大量に導入することは、予算を計上できず、エッジAIの活用に遅れをきたします。導入に伴うコストの問題をどのようにしてクリアするかが課題となるでしょう。

エッジAIの活用事例

エッジAIは、すでに国内の企業でも複数の活用事例が登場しています。最後に、実際の導入ケースを確認し、エッジAIがどのように活躍しているのか確認しましょう。

株式会社あきんど

回転寿司の「スシロー」でお馴染みの株式会社あきんどは、食べたお寿司の皿を自動でカウントができるエッジAIを導入し、注目を集めました。レーンにカメラを搭載し、各席に座る来店者がお寿司をレーンから取ったのを画像認識で確認することで、価格と皿の枚数を確認する仕組みです。

エッジAIによる画像認識を使った自動会計システムは、飲食業界においては初めての試みであり、成功すれば大幅な業務効率化や省人化を推進することができます。自動案内システムをすでに採用しているスシローですが、会計についても自動化が進めば、いずれは全自動でお店を切り盛りすることも可能になるかもしれません。

株式会社そごう・西武

大手百貨店を経営する株式会社そごう・西武では、エッジAIを使った来店者の可視化に取り組んでいます。エッジAIを使った実証実験は、地下1階と2階に合計29台のAIカメラを設置し、性別と年代という顧客属性のデータを自動で取得することができるというものです。

丁寧な接客や顧客のニーズ解消を第一とする百貨店業において重要なのが、顧客の分析です。同社では顧客データの取得や分析は以前から取り組んでいますが、エッジAIを使って情報のさらなる取得や最新バージョンへの頻繁な更新、データを活用した更なるサービスの向上を実現したいとのことです。

千葉県柏市

千葉県柏市では、安心安全、快適な暮らしを実現するためのスマートシティ計画を推進しています。その一環として導入されているのがエッジAIであり、同市内の柏の葉キャンパス駅周辺にエッジAIカメラを設置し、人流の分析を開始しました。

リアルタイムのカメラ映像分析機能を実装することで、不審者の特定などを早期かつ正確に行い、防犯や見回りの実現を促しています。

現在の街中に設置されている防犯カメラの多くは、映像を記録しておくだけで防犯効果については多くを期待できません。エッジAI搭載の防犯カメラが普及すれば、事前に犯罪やトラブルの予兆を速やかに検知し、現場に警官が速やかに急行したりすることを支えてくれるかもしれません。

まとめ

エッジAIの概要や仕組み、そしてディープラーニングとの関係について解説しました。コンパクトなハードウェア上で完結するエッジAIは、クラウドAIよりも高度な情報処理が可能になるため、今後さらなる普及が見込まれています。

ただ、そういった高度なAI活用を可能にするためには、ディープラーニングによる優れた演算処理能力が求められます。まだ十分なハード性能が確保できているケースは少ないですが、すでに国内でも実践的な事例が登場しつつあります。今後はマシンの小型化も進み、より多くの企業で導入が進むでしょう。

高度なディープラーニング活用のためには、十分な計算処理能力が欠かせないのが現状です。エッジAIを可能にするためには膨大なコストがかかる点がネックですが、その際に役立つのがクラウドGPUです。

クラウドGPUは、インターネット経由でGPUリソースを確保し、豊富な計算能力を確保するための技術です。当社モルゲンロットが提供する「M:CPP」では、そんなクラウドGPUを大手クラウド事業者よりも最大で1/2程度のコストで提供しており、最小限の負担でディープラーニングを推進したい方にぜひ利用してもらいたいサービスです。

MCPP

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専有サーバーの提供となるため、他のユーザーの干渉を受ける心配がなく、常にハイパフォーマンスを維持できます。GPUリソースの確保にお困りの際には、お気軽に当社モルゲンロットまでご相談ください。

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