【2021】ディープラーニングが医療業界に与える影響とは?活用シーンと事例

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【2021】ディープラーニングが医療業界に与える影響

AIの活躍の裾野はますます広がりを見せていますが、その後押しとなっているのがディープラーニングです。ディープラーニングの登場はAI活用をあらゆる業界で加速させることとなりましたが、中でも医療業界に与える影響は軽視できないスケールと考えられています。

今回は、ディープラーニングの技術が医療業界へどのようなインパクトを与えると考えられているのか解説します。

医療業界でAIを活用するメリット

医療業界でAIを活用するメリット

そもそもAIは、医療の現場でどのような活躍が期待されているのでしょうか?AI導入による医療業界の主なメリットを挙げると、主に次の3点に集約できます。

人材不足を解消できる

1つ目のメリットは、人材不足の解消です。

医療業界は高齢化の影響により、その需要が大きくなっている一方で、十分な数の医師や看護師などの医療従事者を確保することが難しくなってきています。その上、少子化によって医療従事者となれる人材の総数も減少傾向にあるため、現場では少ない人数で効果的な医療サービスを提供できる仕組みづくりが重要視されています。

そんな中でのAIの登場は、医療業界にとって大きなソリューションとなりうる可能性を秘めています。事務作業など、高度な医療知識を持たなくとも対応できる作業労働を自動化することで、医療従事者にかかる負担を最小限に抑えられるようになります。

作業負担が小さくなることで、少ない人数でも病院や診療所の運営が可能となり、地方に点在するクリニックなどの維持コストを抑え、地方における医療サービスの安定した提供を継続できます。人口の多いエリアでのサービス提供はもちろん、過疎化が進む地域でもAIは活躍します。

ヒューマンエラーを回避できる

AIの活用によって、ケアレスミスによるヒューマンエラーを回避できることも強みです。

人間が作業労働に従事すると、必ずどこかでミスが発生してしまいます。医療分野におけるミスは、時として患者の命にも関わってくるため、医療従事者によるダブルチェックなどは欠かせません。

AIを導入することによって、そんなヒューマンエラーのリスクを大幅に削減できるため、効率的な業務遂行が可能です。また、チェックの際の負担も減らすことが可能なので、従来よりも安心安全な業務遂行を実現しながら、負担を小さくできるというメリットを発揮します。

高度な診断や治療を実現できる

まだまだ実験段階のプロダクトも目指しますが、AIを医療の最前線の現場に導入することで、人間よりも高度な診断、および治療を実施することも不可能ではありません。AIを用いた画像認識技術を活用することで、患者のレントゲン画像やカメラの映像をリアルタイムで分析し、病気の兆候や異常の有無をチェックできます。

時として人間の目では判断できない、あるいはミスを誘発するようなわかりにくい症例も、AIの手にかかれば高い精度で言い当てられるという頼もしさもあります。

AIが判断基準とするのは、あくまでも過去のデータをもとにした予測です。AIが実装に至るまでは膨大な数のデータを読み込ませるため、熟練の医師と同等、あるいはそれ以上の経験値を現場で発揮できるようにもなります。

AIの場合、そんな名医の診療能力を大量に量産できるため、医療レベルの底上げにも役に立ちます。

医療業界におけるAI活用の課題

医療業界におけるAI活用の課題

このように、AIの登場は医療業界に多大なインパクトを与えることが期待される一方で、まだまだ実践レベルに及んでいないのには、いくつかの理由があるためです。主なAI活用の課題としては、主に次の3つが挙げられます。

精度面に不安が残る

1つ目の課題は、精度面での不安です。

AIはいくら人間よりも優れた学習能力を持っているとはいえ、学習能力における柔軟性については人間のそれに劣るケースもあり、万能ではありません。人間の経験や勘が統計データを上回る可能性もあり、いわゆる外れ値にも対応できる能力をAIは持ち合わせていないのです。

人間の体はまだまだ解明ができていない部分も多く、日々未知の症例や体の異常が世界中で発見されています。その治療法や判断基準についても不透明なことが多いため、過去のデータへ過度に依存するAIでは限界もあります。

データ収集が難しい

AI向けのデータ収集を医療業界で行うのは非常に難しいという点も課題です。

AIを医療向けに開発するためには、それに特化したデータセットを用意する必要があります。一般的に普及しているAIの学習方法は「教師あり学習」と呼ばれる手法で、これは教師データを使ってAIを育てていくものです。

教師データは単にデータを用意すれば良いというものではなく、アノテーションと呼ばれるプロセスを経て、データにタグ付けを行わなければなりません。このタグづけの作業には多くの時間と人手を要するため、一筋縄では用意することは難しいものです。

また、医療AIに不可欠な患者のデータを集めるのは、プライバシーの観点から収集が困難であったり、そもそもその病気に関する症例の母数が少なかったりするために、AI開発のために十分なデータを集められないというケースもあります。

データを集められなければAIは開発ができないため、実践レベルにまで辿り着けるAIの数は限られています。

患者の同意を得るのが難しい

もう一つ医療業界におけるAI活用において不安視されているのは、患者の同意が得られるかどうかです。確かに数値上や期待値においては優れた結果を残しやすいAIですが、実際にAIの治療を受けるのは人間であるため、人間がAIに対して不信感を抱いているとなると、その活用機会は限定されます。

特に、まだまだAIによる治療事例が少ない今日においては、医療業界でのAI活用に対する風当たりは決して優しいものではなく、少しずつ実績を積み重ねていく必要があります。仮に外科手術ができるAIロボットが今日明日で登場しても、すぐに実践現場へ配備され、患者への治療が始まるとは考えにくいのが現状です。

人間の医師が対応する場合でも手術には患者の同意が求められるため、AIを使った手術となると、混み入った手続きや深い理解が求められるようになるかもしれません。

ディープラーニングの強み

ディープラーニングの強み

このようなAI運用における課題を乗り越えるべく、活躍が期待されているのがディープラーニングです。ディープラーニングは従来のAIのパフォーマンスを超えるとされていますが、どのような点で強みを発揮するのでしょうか?

ここでは、ディープラーニングの運用メリットについて解説していきます。

高度なソリューションを提供できる

ディープラーニングの強みは、なんと言っても高度なAIを開発できる点にあるでしょう。

ディープラーニンは、ニューラルネットワークと呼ばれる仕組みを活用した「教師なし学習」を実践することで、「教師あり学習」よりも高い精度のモデル構築を行えます。正誤判定一つをとっても、「教師あり学習」では辿り着けないようなレベルの精度と処理能力を発揮するため、従来のロボットやAIのイメージを覆せる可能性を秘めています。

これまで、AIに対して不信感が抱かれてきたのは、従来のAIがロボットアームなどと変わらない技術レベルに留まっていたためです。ディープラーニングの発展は2010年代に入って飛躍的な成長を見せましたが、その過程で自然言語翻訳や画像生成技術、さらには自動運転に至るまでと、2000年代以前には考えられなかったようなパフォーマンスを発揮してきました。

医療業界でもディープラーニングを採用したAI開発は次々と進んでおり、2020年代は更なる飛躍が期待できるでしょう。

少ないデータで実践レベルに成長できる

2つ目の強みは、少ない学習データでも高度なAIを開発できるという点です。ディープラーニングを使った「教師なし学習」のもう一つのメリットは、教師データを用意する必要がないということです。

「教師あり学習」を実践する場合、データに一つずつタグ付けを行う必要があったため、データの用意にもある程度の工数が求められていました。しかし、教師なし学習の場合、タグ付けによってAIに正解を示す必要がなくなり、データから直接特徴を抽出してくれます。そのため、データ処理にかかる手間は格段に小さくなるのです。

また、ディープラーニングを使えば、「自己教師あり学習」と呼ばれる、より高度な機械学習も実践可能です。これは、少数のデータをAIに読み込ませることで、そのデータから多くの特徴を抽出し、独自にラベルづけが行えるという方法です。

これによって、元の学習データの数が不十分でも、十分な教師データを確保したときと同じ学習結果を得られます。医療業界におけるAI活用の課題であった、学習用のデータが不足している問題を解消できます。

人間では解決できない問題にも対処できる

ディープラーニングの強みは、人間では対処ができないレベルのタスクもクリアできるという点にもあります。「教師なし学習」を実施する場合、AIは自発的に特徴量を抽出しデータ毎の違いを理解するため、時として人間では認識できない違いに注目できる場合もあります。

そのため、これまで人間の目では判別不可能だった症例なども、ディープラーニングを行ったAIであれば早期に発見し、リスクの小さい段階で手術を行うなどの新しい医療のあり方を地球できます。

このように、ディープラーニングは単に高性能なだけではなく、新しいAI開発の可能性も提案してくれる次世代の手法です。医療業界においても例外ではなく、ディープラーニングによって今後は多くの恩恵を受けられると期待されています。

医療業界におけるディープラーニングの主な活用シーン

医療業界におけるディープラーニングの主な活用シーン

ディープラーニングを医療業界に導入することで、具体的にどのような活躍が期待できるのでしょうか?ここでは、主なディープラーニングを使ったAIの活用方法について解説します。

事務作業の効率化

最もポピュラーで、なおかつ実現可能性が高いのが事務作業の効率化です。カルテ情報の電子化であったり、患者の予約管理などを一つのデータベースを統合したり、事務に必要な業務負担を大幅に削減できます。

ディープラーニングを活用したシステムを導入すれば、文字認識機能を使った手書きのカルテのデジタル化を自動で進めたり、入力作業の自動化なども高度に実践することができます。直接医療行為には関係しないものの、患者と関わらない部分での負担を小さくできることで、優先度の高い診療にリソースを割くことができます。

高度な画像判定

ディープラーニングに期待されている技術の一つが、画像判定の高度化です。従来では発見し得なかった病気の予兆や、熟練の意思できなければ判別がつかない病気の種類なども、ディープラーニングによって容易に特定することができます。

特に、医師の数が不足している地方などでは、こういった精密検査を行える病院は限られており、適切な検査を受けられないケースもあります。ディープラーニングを用いたAIであれば、機器やソフトを購入するだけで全国・全世界の診療所に配備できるため、どこででも高度な検査を受けられます。

迅速な治療の提供

ディープラーニングによって業務を効率化し、精密検査をどこででも受けられるようになれば、治療そのものを迅速に提供できるようにもなります。医師の不足や検査に伴い負担を軽減できるだけでなく、検査の結果を従来のように時間をかけて待つ必要もなくなるため、必要とあればすぐに薬を処方、あるいは手術へと移行できます。

あらゆる業務や診療のスピードがAI活用によって向上し、結果的に患者に向けた医療の質をそのまま、あるいは高めた形で迅速に提供されます。

ディープラーニングを実装した医療業界の事例

ディープラーニングを実装した医療業界の事例

最後に、実際にディープラーニングが活用されている医療業界のテクノロジー事例について、3つご紹介します。

エルピクセル株式会社

医療AI系スタートアップのエルピクセル株式会社は、ディープラーニングを用いたAIを使った医用画像解析ソフトウェア「EIRL aneurysm(エイル アニュリズム)」を開発しました。

これは、脳MRI画像をディープラーニングによって解析し、脳動脈瘤の疑いがある部分を検出することができるソリューションで、すでに「管理医療機器」としての承認を取得しており、日本国内での発売を控えています。

同ソフトは脳MRI分野のプログラム医療機器として日本初の薬事承認ということもあり、医療におけるAI活用を前進させる大きなプロジェクトとして注目されています。

実際の運用シーンとしては、脳MRI画像より2mm以上の嚢状動脈瘤に類似した候補点を検出し、マークを表示することで、医師による読影をサポートすることを想定しています。医師単独で読影した場合、その感度は68.2%にとどまる一方、同ソフトを活用した場合、感度は77.2%にまで向上するなど、実戦でも高い成果が期待されます。

京都大学

京都大学は、創薬におけるディープラーニング運用の可能性について、先駆的な研究を進めています。創薬には疾患の要因となるタンパク質の特定を行う必要がありますが、同大学ではディープラーニングを使った化合物の結合するパターンを、膨大なデータから学習し、それを予測できる仕組みの開発を進めています。

将来的には、病名をシステムに入力するだけで創薬をAIの力で行えるようにもなると想定されています。これまで1品目あたり1,000億円を超える研究開発費が必要とされてきましたが、AI創薬の普及によって4年ほどの開発期間の短縮、そして開発費を560億円まで削減できる見込みも立っているということです。

Google LLC

世界最先端のテック開発を進めるGoogleでも、医療分野におけるディープラーニング活用が積極的に実施されています。

この度、GoogleのAIが到達したのは、99%の精度で転移性乳がんを検知できる学習ツールです。LYNAと名付けられたこちらのツールは、腫瘍の特徴を検知するようアルゴリズムに学習を繰り返すことで、さまざまな状態の腫瘍を発見することができるようになりました。

人間よりも小さな腫瘍を発見することもできるほどの精度を持っており、早期発見と早期治療の実現に貢献することが期待されています。また、検査そのものも一分以下の速度で完了することができ、簡易的な検査と同等のスピードで診断を行い、患者の負担軽減に努めます。

まとめ

ディープラーニングによる医療分野での活躍の事例は、氷山の一角に過ぎません。他にも多くの開発途上にある技術や、今後登場が期待されるツールも多様であるため、より有益で実用性の高いサービスも登場するでしょう。

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