
AI開発をスムーズに進めるためには、CPUだけでなく高性能なGPUが必要です。「なぜ必要なのか」「どのようなものを準備すべきか」など、疑問がある方も多いのではないでしょうか?
今回は、GPUが必要な理由やCPUとの違い、選ぶ時のポイントを詳しく解説します。また、AI環境に最適な「クラウドGPU」も紹介します。AI用の開発環境に悩みを抱えている企業の皆さまは、ぜひ最後までご覧ください。
GPUとCPUの違い
GPUとCPUは、可能な処理内容が異なります。GPUは画像処理に特化している一方で、CPUはコンピュータ全体の計算処理が可能です。
GPUには「コア」が数1,000個以上も搭載されており、高速に計算を処理可能であるため、高画質な画像を描画することができます。
一方で、CPUには複雑な計算を得意とする高性能なコアが搭載されているため、コンピュータを動かすうえで必要となるあらゆる処理を行えます。もちろん、CPUのみでも画像を描画することは可能ですが、コアが数10個程度しかないため、GPUのように高画質な画像は出力できません。
GPUは大量の計算を素早く処理することが得意であるため、大規模な行列演算を行う「AIモデル」を動かす際にも活用されています。
GPUの種類
GPUには、多種多様なタイプがあります。ここでは、3つの種類に分けて解説します。それぞれの特徴やどのようなケースで使用されるのかについて解説するので、違いを理解したい方はチェックしてみてください。
内蔵GPU
内蔵GPUとは、CPUと一体になっているGPUのことです。家庭向けPCのGPUは、内蔵GPUが一般的です。
また、大手CPUメーカーのIntelとAMDでは、さまざまなニーズに合わせた内蔵GPUを提供しています。中には高性能なGPUが内蔵されているものもあるため、線形回帰などの単純なAIモデルであれば、内蔵GPUでもスムーズに動かせます。
ただし、内蔵GPUはCPUとメインメモリを共有するため、単体のGPUと比較すると処理能力が劣ります。そのため、ディープラーニングのような大規模な計算処理を行うAIモデルを実行するには性能が足りません。
内蔵GPUはGPU単体として見ると性能が低いため、簡単なAIモデルの作成やテスト実行時に活用されます。
オンプレミスGPU
オンプレミスGPUとは、CPUから独立し据え置くタイプのGPUです。「グラフィックボード」や「ビデオカード」という呼び方もされます。
内蔵GPUとは異なり、GPU専用のメモリである「VRAM」で処理を行うため、大量の計算処理でもスムーズに実行可能です。
また、大手GPUメーカーのNVIDIAとAMDのオンプレミスGPUには、AIモデルの処理に特化した「Tensorコア」を搭載したGPUもあります。ミドルからハイエンドモデルまでさまざまなスペックのものがあるため、どのようなAIモデルにも柔軟に対応できます。
オンプレミス型はGPUとしての性能が優れることから、大規模なAI開発において積極的に活用されています。
クラウドGPU
クラウドGPUとは、ネットワーク経由でベンダーが管理するGPUを使用できるクラウドサービスのことです。ネットワーク環境さえ整っていれば、場所や時間に限定されることなく好きなタイミングで高性能なGPUを使用可能です。
また、GoogleやAmazon、Microsoftなど有名なIT企業から提供されており、さまざまなスペックのGPUをクラウド上で利用できます。
クラウド型GPUは、オンプレミスと同じように性能が高いGPUをネットワークにつなぐだけで利用できることから、AI人材がいない企業や個人など幅広いケースで活用されています。
AI開発にGPUが必要な理由
CPUと比べて、GPUは大量の計算を高速に処理できることからAI開発で積極的に活用されています。ここでは、CPUと比較しながら、AI開発にGPUが必要な理由を解説します。
大規模な演算処理を行うから
AIモデルの中には、大規模な行列演算を行うモデルもあります。そのため、大量の計算処理でも実行できるGPUがなければ学習が進みません。
AIモデルの実行上でCPUのスペックだけでは足りないケースがあることから、AI開発にはGPUが必須といえます。
大量のデータを使うから
AIモデルの多くが学習精度を上げるため、大量のデータを使います。しかしながら、CPUはコンピュータ全体の処理を行う必要があるため、メモリ容量の空きが少なく大量のデータを処理することはできません。
そのため、メモリ容量を気にせずにAIを実行するためには、AIモデルの処理だけにメモリを割けるGPUが必要です。
高速な処理が求められるから
AI開発では、高速な処理が求められます。CPUはコア数が少なく、大量の計算を迅速に処理することができません。
一方で、GPUはCPUの数100倍以上のコアを搭載しているため、CPUと比べて早く実行できます。実際のところ、AIモデルの1つであるニューラルネットワークをCPUのみで動かすと1日以上かかる処理を、GPUではたったの10分程度で済ませられます。
AI開発では試行錯誤するために短期間で複数回モデルを実行しなければならないため、高速な計算処理ができるGPUが必要です。
AIに最適なGPUを選ぶ際の5つのポイント
さまざまなGPUの中から、自社に合ったものを選ぶのは簡単ではありません。ここでは、AIに最適なGPUを選ぶ際のポイントを5つ解説します。
メーカー
1つ目のポイントは、「メーカー」です。
GPUの主要メーカーは「NVIDIA」と「AMD」であるため、この2つから選ぶと良いでしょう。ただし、それぞれのメーカーでは、ゲーミングPC向けなどAI用ではないGPUシリーズも取り扱われているため、間違わないように注意が必要です。
それぞれのメーカーにおけるAI向けのシリーズは、次のとおりです。
- NVIDIA製:RTX Aシリーズ
- AMD製:Ryzen 7040シリーズ
それぞれのシリーズの中で、扱われているGPUのスペックの違いを比較したうえで決めると良いでしょう。また、どちらのメーカーのGPUを購入すべきかは、パソコンの「OSの種類」によって決めることができます。
たとえば、「WindowsもしくはUbuntu」を使っている場合には、NVIDIA製のGPUを選び、「macOS」の場合には、AMD製を選ぶ必要があります。メーカーを基準に選ぶ際は、OSの種類とGPUのシリーズに注目するようにしましょう。
コア数
2つ目のポイントは、「コア数」です。
コアは計算処理を行う部分であるため、一般的にコア数が多いほど、GPUの性能は高くなる傾向にあります。逆に、コア数が少ない場合にはGPUであってもAIモデルをスムーズに実行できないケースもあるため、ある程度たくさんのコアを搭載したGPUを選ばなければなりません。
AI向けGPUのコア数の目安は、次のとおりです。
- CUDAコア:3,000〜
- Tensorコア:100〜
特に、AI向けGPUのコア数の基準は、AI処理に特化した「Tensorコア」を重視すると良いでしょう。
メモリ容量
3つ目のポイントは、「メモリ容量」です。
GPUのメインメモリは、AIモデルを学習している際に一時的にデータを保管しておくために利用されます。メモリ容量が小さいと、学習させるデータの量を少なくしたりモデルを小さくしたりと、メモリ容量に合わせてモデルの性能を落とす必要が出てきます。
そのため、高性能なAIモデルを実行するためには、「8GB以上」のメモリ容量があるGPUを選ぶと良いでしょう。
ただし、一度に複数のモデルを動かす場合には、「1TB以上」の大容量メモリが必要になるケースもあります。そのため、メモリ不足が発生しないように、メモリ容量を後から拡張できるタイプのGPUを選ぶことも一つの方法です。
冷却性能
4つ目のポイントは、「冷却性能」です。
AIモデルを処理する際にはGPUに大きな負荷がかかるため、パソコン内から熱を逃す必要があります。たとえば、グラフィックボードに「水冷システム」が取り付けられているものや、「エアフロー」が考慮された通気性の高いものなど、GPUの冷却性能に優れたものを選ぶと良いでしょう。
GPUの冷却がうまくできないと、処理速度が遅くなるデメリットがあります。そのため、快適なAI環境を整えるうえではGPUの冷却性能も重視しましょう。
価格
5つ目の選び方のポイントは、「価格」です。パソコンの価格は、GPUのスペックやメーカーによって大きく変わります。
一般的に、GPUのスペックが高くなるほど価格も上がる傾向にあります。そのため、とりあえずハイエンドモデルのGPUにしてしまうと、コストパフォーマンスが悪くなってしまうため注意が必要です。AIモデルの種類やGPUを使う人数に合わせて、過不足ないスペックのGPUを選ぶことが大事です。
また、NVIDIA製とAMD製の同じスペックくらいのGPUを比較した場合には、AMD製の方が安くなる傾向にあります。そのため、価格面を重視して選ぶ場合には、導入費用を抑えられる「AMD製のGPU」がおすすめです。スペックだけでなく、予算面も重視して最適なGPUを選びましょう。
AI開発に「クラウドGPU」が最適な理由
内蔵GPUやオンプレミス型などのGPUもありますが、AI開発には「クラウドGPU」が最適です。では、なぜクラウドGPUが良いのか、オンプレミスGPUと比較しながらその理由を解説します。
最新のGPUをお得に使えるから
最新のオンプレミス型のGPUを導入する場合には、購入費用だけでも「100万円以上」かかるケースもあります。一方で、クラウドGPUでは、初期費用を含めても「10万円程度」で導入可能です。
クラウドGPUを利用すれば、最新のGPUをお得な価格で使うことができ導入のハードルが下がるため、高性能なGPUが必要なAI開発に最適といえます。
環境構築が不要だから
AI用の環境構築は、OS・GPUドライバーのインストール等のGPU自体の「システム設定」だけでなく、エディタ環境やライブラリ・フレームワークなどの「AIプログラミング環境」も必要です。
オンプレミスGPUの場合には、一から環境を自分たちで構築する必要があり、慣れていない場合にはかなり時間がかかってしまいます。
その点、クラウドGPUサービスの中には、ベンダー側がAI用の環境構築を行ってくれる場合があります。クラウドGPUを活用すれば工程が多い環境構築を省くことができるため、開発の瞬発力が重要なAI開発に最適です。
管理コストを抑えられるから
オンプレミスGPUを複数導入する場合には、GPUを管理するための冷却設備付きの部屋や、置き場所を用意しなければなりません。また、GPUがサイバー攻撃の対象とならないように、セキュリティシステムを構築する必要もあります。
そのため、オンプレミスの場合には導入費用に加えて、維持管理するコストもかかります。一方で、クラウドGPUの場合にはベンダーがGPUを管理するため、置き場所やGPU自体のセキュリティ面の配慮が必要ありません。
このようにスペースの問題やセキュリティリスクを解決できることから、クラウドGPUが最適といえます。
AI用のクラウドGPUなら「M:CPP」がおすすめ
さまざまなAI向けのクラウドGPUが提供されていますが、当社モルゲンロットが提供する「M:CPP」がもっともおすすめです。ここでは、M:CPPの概要やAIにおすすめである理由を詳しく解説します。
M:CPPとは
M:CPPとは、AMD製の「ハイエンドモデルGPU」を低コストで利用できるクラウドGPUのことです。M:CPPでは、ローモデル・ミドルモデル・ハイエンドモデル・ウルトラパフォーマンスの4つのプランが提供され、プランの中からニーズに合わせてGPUのスペックやシステム環境を柔軟に選ぶことができます。
なお、M:CPPについてさらに詳しく知りたい方は、『GPUクラウドサービスなら「M:CPP」がおすすめ!メリットと注意点』をチェックしてみてください。
M:CPPがAIにおすすめである理由
M:CPPがAIにおすすめである理由は次のとおりです。
- TensorflowやPytorchなどのAI用のライブラリやフレームワークに対応している
- AnacondaやDocker環境などAI用の実行環境の構築をエンジニアにサポートしてもらえる
- CPUの変更やHDDの増設など、GPU以外のスペック調整もできる
- 代表的なGPUクラウドと比較して「2分の1以下」の費用で導入でき、コストパフォーマンスに優れている
このように、M:CPPにはAI用の環境構築から機能サービス、コスト面が優れているため、これからAIを始める方におすすめといえます。
まとめ
AI開発には、高性能なGPUが欠かせません。GPUにはAI処理に特化したコアが1,000個以上も搭載されているため、大規模なAIでもスムーズに実行することができます。
また、GPUには内蔵GPUやオンプレミスGPUなど多種多様な種類がありますが、AI開発にはコスト面と性能面を両立する「クラウドGPU」が最適です。
さまざまなAI向けのクラウドGPUがある中で最もおすすめなのが、当社モルゲンロットが提供するクラウドGPUサービス「M:CPP」です。M:CPPでは、プロのエンジニアがお客さまの環境・予算をトータル的に考慮するため、自社に合った最適なGPUを利用できます。
まずは当社の「M:CPP」を利用し、AI事業を始めてみてはいかがでしょうか?