
近年の人工知能開発を大いに支えているのが「ディープラーニング(深層学習)」の存在です。ここ10年ほどでAIは飛躍的な進化を遂げましたが、その背景としてディープラーニングの積極的な活用があったことは今日では広く認知され、多くの科学者や企業がディープラーニングの採用を進めています。
そんなディープラーニングの運用において重要な役割を果たすのが「GPU」です。従来はCPUによってAI開発を進めてきたのが、今ではGPUなしでは考えられないものとなっています。
今回は、そんなGPUがディープラーニングへどのように影響を与えているのかについて解説しつつ、運用のための環境設定方法を紹介します。
GPUとは
そもそも、GPUとはGraphic Processing Unitの略称で、コンピューターのグラフィック描画を処理する役割を果たすユニットです。元々コンピューターの計算処理は、CPU(Central Processing Unit)が一基で賄っていましたが、グラフィック技術の進歩に伴い、負荷の大きなグラフィック処理をGPUに任せてしまうことで、負担の分散を実現していました。
近年はそんなGPUの計算処理能力の高さに注目が集まり、グラフィック描画以外のタスクにも頻繁に用いられるようになっています。ディープラーニングへの転用もまた、GPUのポテンシャルの高さに注目した取り組みです。
ディープラーニングとは
ディープラーニングは機械学習の一種ではあるものの、従来の「教師あり学習」では辿り着けないレベルに高度なAI開発を実現する技術として注目を集めています。ディープラーニングは日本語で「深層学習」とも呼ばれていますが、その理由はニューラルネットワークを活用した深いレベルでのデータインプット能力の高さにあります。
ニューラルネットワークとは、人間の神経細胞の働きに着想を得て考案された学習モデルの一種です。コンピューターの中に多層構造を形成し、それぞれの層をデータが通過し、層が互いにそのデータの特徴を独自に重み付けしていくことで、自発的に特徴を見出すことができます。
自律的なAIによる学習が実現したことでAI開発は急速に進化を遂げ、自動運転や高度な画像生成能力などを実現するに至っています。
従来の機械学習との違い
従来の機械学習との大きな違いとしては、「教師なし学習」が実現した点にあります。
従来の機械学習では、「教師あり学習」と呼ばれる、教師データを必要とする人工知能開発が主流でした。教師データは、AIに読み込ませるための学習用データを加工し、あらかじめAI開発者がデータに正解データをメタデータとして付与することで、AIに理解を促すために行うものです。これによって学習精度とスピードを改善できるため、今でもAI開発のスタンダードとして多くの場で採用されています。
欠点としては、教師データの用意に時間がかかること、そして簡単な正誤判定など、人間が良し悪しを正しく判別できるタスクにしかAIを対応できない点が挙げられます。
一方で、ディープラーニングが実現する「教師なし学習」は、AIが自発的に特徴を発見して学習できるため、人間が想像もしなかった領域のソリューションへとたどり着くことができます。近年のAI開発がめざましいのは、そんな教師なし学習が身近になったことが背景にあります。
GPUがディープラーニングで活躍する理由
では、GPUがディープラーニングで活躍しているのにはどんな理由があるのでしょうか?ここで押さえておきたいのは、次の2つのポイントです。
グラフィック描画と似たような処理が発生するため
1つ目の理由は、機械学習においてはグラフィック描画と同じような処理が発生することです。
グラフィックの処理には大きな負荷がかかりますが、同じような計算が大量に発生するだけであるため、複雑な計算を解かなければならないわけではありません。そのため、GPUは同じ計算を同時に複数こなせる並列回路を備えており、これによって大量の計算を瞬時にこなすことが可能となっていす。
ディープラーニングの計算タスクも、グラフィックと同じく大量で類似の計算処理が発生します。そのため、GPUはAI開発に最適なユニットとして注目されることとなりました。
CPUよりも高いパフォーマンスを発揮するため
GPUは、単一のタスクであればCPUよりも高い演算能力を備えています。
前述のとおり、GPUはグラフィックに特化している設計のため、複雑な計算処理を柔軟にこなすことには向いていません。このような処理に強いのがCPUで、あらゆるタスクに対応できるよう作られている代わりに、膨大なタスクをこなす上では不向きとされています。
ディープラーニングにおいては同じことを何度も繰り返すタスクの処理能力が求められるため、GPUの方が高いパフォーマンスを発揮できるというわけです。
ディープラーニングにGPUを用いる方法
GPUをディープラーニングへ運用しようとしても、すぐに実現できるわけではありません。GPUは最近のPCには漏れなく搭載されていますが、ここでディープラーニングをGPUへ転用するための方法について解説します。
NVIDIA製GPUを用意する
ディープラーニングに最適といわれているのが、NVIDIA製のGPUです。
GPUにも複数の種類がありますが、AI開発の場合はNVIDIA製がおすすめです。というのも、NVIDIAのGPUに特化したディープラーニング向けのフレームワークが提供されていたり、NVIDIAもAI開発向けのGPUを展開したりと、多くの恩恵を受けられるためです。
まだ手元に満足のいくGPUがないという場合には、NVIDIA製品を選ぶと良いでしょう。
CUDAをインストールする
GPUが用意できたら、CUDAをインストールします。CUDAはNVIDIAが提供しているAI向けの開発環境で、これをインストールしておくことで、GPUを使ったディープラーニングが実現します。CUDAを用いることで、初めてGPUの高度な演算処理を活かせます。
CUDAのインストールは、以下のページから行えます。
Tensorflowをインストールする
続いて、Tensorflowのインストールも進めておきましょう。
Tensorflowは、ニューラルネットワークを使ったGPUによる計算処理をスムーズに行うためのフレームワークで、ディープラーニング活用には欠かせないものです。以下のサイトから誰でも自由にインストールができるため、実際にダウンロードして試してみましょう。
ディープラーニングにGPUを活用する際の課題
このように、GPUを使ったディープラーニングの運用は誰でも簡単に行えるような時代となっている一方、実施にあたっては課題もあります。解消すべき課題は主に次の2つです。
強力なGPUを必要とする
ディープラーニングを実現するためには、タスクにもよりますが相応の強力なGPUを用意する必要があります。ディープラーニングの運用プロセスこそシンプルですが、ビジネスレベルでも通用する処理を実現するためには、高度なGPUが求められます。
場合によっては数百万円から数千万円というGPUサーバーを導入しなければならないため、ビジネス向けの運用の際には十分な予算を確保しておきましょう。
十分な電力の確保が必要になる
GPUの運用には維持管理のコストも発生し、その中でも負担が大きいのが電力の問題です。GPU本体を動かすための電力確保はもちろん、GPUを冷却するための空調コストも発生するため、これらの維持費をどう回収するかが重要です。
クラウドGPUを活用するメリット
上記のような課題を解消する上で役に立つのが、クラウドGPUの存在です。GPUをクラウド化することで、どのようなメリットが得られるのかを確認しておきましょう。
優れたコストパフォーマンスを実現できる
クラウドGPUは、必要な分だけリソースを確保できる高い柔軟性とパワーを有していることが特徴です。また、それらの利用料金は従量課金制で、初期費用はオンプレミスに比べてはるかに安く抑えられるため、財布に優しい設計といえます。
また、電気代やメンテナンスのコストも従量課金によって発生した費用に含まれるため、新たにコストが発生する心配をする必要もないのが嬉しいところです。
ハイエンドなGPUを利用できる
また、クラウドGPUは常に最新のGPUを提供してくれるため、GPUを買い替えるコストが発生しないのも嬉しいところです。手軽にハイエンドGPUを利用できるため、高い演算処理能力をキープできます。
柔軟な働き方を実現できる
クラウドGPUの導入は、特定の場所に縛られない働き方を実現するのにも有効です。GPUのあるオフィスに限定されず、リモート環境でも計算を行えるので、オフィスコストの削減でさらなるコストパフォーマンスを目指せます。
まとめ
GPUは今やディープラーニングには欠かせない存在となり、多くの組織や企業で活躍しています。ネックとなるのがその運用コストですが、当社モルゲンロットが提供する「M:CPP」では、そんなGPUの運用コストを抑えるべく、リーズナブルなクラウドGPUサービスを提供しています。
料金は最大で大手クラウドGPUサービスの半分にまで抑えられるケースもあるなど、高いコスト削減効果を発揮します。とはいえ、導入GPUはハイエンドモデルとなっているだけでなく、専有サーバーを各ユーザーに提供し、ノイジーネイバーなどの問題も解消可能です。
クラウドGPUの運用をご検討の際には、お気軽に当社モルゲンロットまでご相談ください。