「機械学習」と「ディープラーニング」どっちを活用すべき?違いと選び方のポイント

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ディープラーニング機械学習どっち

企業のデータ活用が次々と進む中、新たに導入が進められているのが人工知能(AI)です。未来の技術と言われたAIも、今では多くの企業によって、さまざまな目的に応じて採用され、日々の生活においても利用機会は増えています。

そんなAI開発を支えているのが、「機械学習」や「ディープラーニング」といったテクノロジーです。今回は、そんな機械学習とディープラーニングの違いに焦点を当て、どっちを活用するのが良いのかについて解説します。

機械学習とは

機械学習とは

機械学習は、コンピュータに特定のデータを読み込ませることで、そのデータの内容と目的に応じて学習を行い、タスクを自動的に処理できるよう促すプロセスです。英語ではMachine Learningと呼ばれることから、機械学習をMLと訳す場合もあります。

機械学習はAI開発の中核にある技術で、20世紀末から今日に至るまで、長い間AI分野において重要な役割を果たしてきました。中でもポピュラーな技術が「教師あり学習」という手法で、現在もスタンダードなAI開発手法として、広く普及しています。

教師あり学習は、教師データと呼ばれる学習に特化したデータを読み込ませることで、AIに適切な判断能力を付与する技術です。たとえば、りんごとみかんの判別ができるAIを開発する場合、「りんご」とタグづけされたりんごの画像、「みかん」とタグづけされたみかんの画像を読み込ませることで、AIが自動的に判別できるよう促します。

りんごとみかんの違いを、画像データに付与されたタグデータを参考に判断できるようになるので、比較的短期間かつ高い精度で判別が可能となります。多くのAIは、教師あり学習によって開発されてきました。

機械学習でできること

基本的にAIツールは、すべて機械学習のプロセスを通じて開発されています。画像の判別やデータ分析、自動入力機能など、多様なツールが機械学習を通じて開発されています。

生活の役に立ったり、業務効率化に役立ったりするツールはすべて機械学習、さらにいえば、教師あり学習によって成立できます。

ディープラーニングとは

ディープラーニングとは

AI開発の技術も進歩しており、2010年代以降はAI開発に急速な発展が見られるようになりました。そんな高度なAI開発に貢献してきたのがディープラーニングで、従来の機械学習ではできないことを実現できる技術です。

ディープラーニングは、ニューラルネットワークと呼ばれる仕組みを活用し、より複雑なAIの構築に役立てられています。ニューラルネットワークは、元は人間の神経細胞から着想を得た技術で、大量のデータを読み込ませて複雑な思考能力を養うことができます。

ディープラーニングでできること

ディープラーニングの登場によって、従来の機械学習では実現が難しかった技術も容易に開発が可能となりました。自動車の自動運転などはわかりやすい例で、完全無人での自動車の運転を叶えています。

また、英語を日本語へ翻訳する自然言語翻訳も、従来の機械翻訳とは比較にならないディープラーニングの登場で高度な翻訳を実現しています。

医療業界における活躍や3Dグラフィックの自動生成など活躍できる領域が幅広く、新しい技術が次々と登場しています。近年のAI開発はまさにディープラーニングに支えられているといっても過言ではないでしょう。

機械学習とディープラーニングの違い

AIに興味を持った多くの人が疑問に思うのが、機械学習とディープラーニングの違いです。結論からお伝えすると、厳密にはディープラーニングは機械学習の一種です。ただ、最近では従来の教師あり学習主体の機械学習と、ディープラーニングではその運用方法やパフォーマンスに大きな違いがあることから、分けて使われるケースも見られます。

具体的な両者の違いとしては、次の2つの点が挙げられます。

教師なし学習を実装できるかどうか

1つ目の違いは、「教師なし学習」を行えるかどうかです。教師なし学習は、教師データを必要としない学習手法で、教師あり学習とは対照的な学習手法です。

一般的な機械学習においては、教師なし学習を実行することはできません。データの違いを判別する材料が少なく、それを自ら見つけ出すことができないためです。

一方、ディープラーニングを使った機械学習の場合、教師なし学習を実装することができます。ニューラルネットワークと呼ばれる独自の仕組みを実装し、一つのデータを深く解釈できるよう設計されているためです。

そのため、機械学習は教師あり学習を使ったAI開発手法、ディープラーニングは教師なし学習を使ったAI開発手法として分けられることもあります。

人間には思い付かないアプローチを実現できるかどうか

2つ目のポイントは、AIの独自性です。

教師あり学習を行う機械学習の場合、判断のソースとなるのは教師データを加工した人間です。人間の判断をAIでも行えるようにするのが教師あり学習のやり方で、人間以上の判断能力を持つことはできません。

一方のディープラーニングは、特定の目的を与えるのは人間ですが、その実践方法についてはコンピュータが自動的に判断します。どのようなプロセスで、どんな方法を実行するかは人間にもわかりませんが、時としてそれが人間にはとても真似できない判断基準で実行されることもあります。

人間を超えたAI開発の可能性を探求するには、ディープラーニングの技術が不可欠です。

機械学習に必要な環境

機械学習に必要な環境

ここでは、機械学習を実践するためにはどのような環境が必要なのかについて解説していきましょう。主に必要とされているのが次の3つで、PC環境がある程度整備されていれば問題なく開発を進めることができることが特徴です。

PC

機械学習を行うためには、まずPCが必要です。とはいえ、一昔前のように高度な処理能力を備えたコンピュータではなく、一般的な家庭用のPCがあれば、十分に機械学習を行い、簡素なAIを組み上げることができます。

既存のPCからすぐに機械学習を始めることができることはもちろん、最近ではスマホから機械学習を実行できるよう促すサービスの開発も進んでいます。

標準的なGPU

また、家庭用のPCを機械学習のために改造、カスタマイズする必要もありません。高度なGPUはAI開発をサポートするユニットとして知られていますが、GPUについても標準的なモデルを搭載していれば、すぐにでも機械学習を実行できます。

初期投資を抑えて開発を進められるのが、機械学習の特徴です。

プログラミング環境

機械学習を実行するためには、そのためのプログラミング環境を整える必要があります。ただ、これも今では無料のツールやライブラリを導入するだけで準備は整うので、余計なコストはかかりません。

本格的なプログラミングには有料のツールが良いともいわれていますが、最初から導入するよりも、必要に応じて実装するものを後から選ぶだけで良いでしょう。

ディープラーニングに必要な環境

ディープラーニングに必要な環境

続いては、ディープラーニングを実施する場合の必要環境をご紹介します。機械学習の一種であるディープラーニングですが、高度な学習を実行する以上、相応の環境を用意しなければなりません。

高性能なGPU

まず、ディープラーニングに欠かせないのが、高性能なGPUです。

ディープラーニングは通常の機械学習と比べ、多くの計算処理を実行する手法であるため、計算処理能力に優れていればいるほど高度なAIを開発できます。元々GPUはグラフィック描画のために実装されたユニットですが、GPUの並列処理能力の高さが評価され、今ではディープラーニング運用に欠かせない要素として注目されています。

GPUにはAI開発に特化したモデルも登場しており、今後さらなるGPU開発が加速することが予想されます。ただ、高性能なGPUほど購入の際のコストは大きくなるため、予算内でどれだけハイエンドなものを用意できるかが重要になるでしょう。

大量のデータ

AI開発には学習用データの用意が必要ですが、ディープラーニングは従来の機械学習以上に大量のデータを必要とするため、そのための時間や費用がかかる点に注意が必要です。

目的に応じて最適なデータを用意するためには、自社で収集したり、調査会社などから購入したりするといった方法が採用されています。自社でデータを用意できるのであれば問題ありませんが、そうでない場合にはデータ収集にコストがかかるため、注意が必要です。

高度なAI人材

ディープラーニングは以前よりも運用しやすい技術になってきてはいるものの、依然として相応の技術力が求められます。特に、データを正しく読み取り分析できるAI人材が不可欠とされており、正しくデータを活用したり分析したりできる人物が求められています。

AI人材は希少価値が高く、雇い入れることが困難であるため、自社で人材育成に力を入れることも欠かせません。

機械学習とディープラーニングのどちらを運用すべき?

機械学習とディープラーニングのどちらを運用すべき?

上記のような条件の違いがある中、機械学習とディープラーニングはどのように使い分け、運用すべきなのでしょうか?最後に、両者を正しく使い分けるための判断基準について解説します。

初めてのAI運用であれば機械学習(教師あり学習)

まず、初めてのAI開発という場合には、「教師あり学習」を採用した機械学習を選ぶのがおすすめです。

これまでプログラミングやAIに触れたことがない人でも運用が可能なよう、さまざまなツールやサービス、そしてノウハウ共有が進んでいるため、滞りなく開発を進められます。また、機械学習を始まるにあたっての準備も少なく、標準的なPC環境が整っていれば始められるため、初期費用もかからないのが強みです。

とりあえずAIがどんなものなのか、実際に作ってみたいという場合には、従来型の機械学習を選びましょう。

高度なリソースと人材を確保できるならディープラーニング

一方で、それなりにAI開発に知見のある人材が確保できており、相応の予算やマシンを用意できる場合には、ディープラーニングの活用を進めても良いでしょう。

ディープラーニングがもたらす技術的な貢献度は非常に高く、非常に便利なツールの提供に活躍します。社内向けツールはもちろん、一般向けWebサービスやアプリを展開する際にも多くの集客が期待でき、運用の見返りは大きいです。

ただ、ディープラーニングを運用するためには膨大なデータを必要とすることや、潤沢なGPUリソースを確保しなければならないため、一筋縄では環境を整えられません。特にGPUの確保には多くの費用がかかるため、一工夫する必要があるでしょう。

コストパフォーマンスに優れたGPU運用を実現する上で、活躍しているのがクラウドGPUの存在です。GPUを購入するのではなく、ライセンス形式で好きなだけ用意できるので、初期費用を抑えて効率の良い運用ができます。

導入もオンライン経由でスムーズに進められるため、人的リソースに余裕がない場合でも活躍できるのが魅力です。

まとめ

機械学習とディープラーニングは本来同じような意味で使われていますが、ディープラーニングは従来の機械学習よりも高度なパフォーマンスを発揮できる分、運用ハードルが高めに設定されています。自社の人的・経済的余裕を考慮しながら、適切な手段を選ぶと良いでしょう。

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