
かつては、「機械学習」をするためには高スペックなPCが必要でした。しかし近年、「クラウドサービス」が発展したことで、低スペックPCやスマホからでもできるようになりました。その理由は、ネットを介して高性能なGPUや大容量のストレージを利用できるからです。
今回は、ケース・パーツ別に機械学習をするうえで必要なPCスペックや機械学習向けクラウドサービスの種類、おすすめのクラウドGPUを解説します。
機械学習とは?ディープラーニングとの違い
「機械学習」とは、コンピュータが数式に基づいてデータのパターンを自動的に抽出し、未知のデータを予測する技術のことです。機械学習には、線形回帰やニューラルネットワークなど、さまざまなAIモデルが含まれます。
一方で、「ディープラーニング」とはニューラルネットワークの一種で、ニューラルネットワークの構成要素のうち「中間層」と呼ばれる演算処理部分が3つ以上のモデルのことを指します。ニューラルネットワークを基準にすると、機械学習とディープラーニングの違いは次のように定義可能です。
- 機械学習:すべてのニューラルネットワークモデルを含むAI技術
- ディープラーニング:中間層が3層以上の大きなニューラルネットワークモデル
ディープラーニングは大規模なニューラルネットワークのみであるのに対して、機械学習は手計算でもできる簡単なモデルも含むという違いがあります。両者のより詳しい違いについては、『「機械学習」と「ディープラーニング」の違いとは?AIの基礎をわかりやすく解説』を参考にしてみてください。
【パーツ別】機械学習をするために必要なPCスペック
機械学習では、大量のデータを高速で処理する必要があります。そのため、ある程度性能があるPCでなければ、機械学習を行うことができません。ここでは、機械学習をするために最低限必要なPCスペックについて紹介します。
CPU
CPUとは、コンピュータ全体の計算を処理する装置で、データの計算やメモリ・マウスなどの制御を行います。
CPUは機械学習に使う「データの加工作業・結果の可視化」のために使われることが一般的ですが、高スペックなCPUを搭載しているPCであれば機械学習モデルの実行も可能です。高スペックPCがモデルの実行に対応できる理由は、処理能力が高い「コア」が搭載されているからです。
機械学習をするために高性能なコアが搭載されているPCを選ぶ際には、「CPUの型番」に注目してください。具体的には、次に挙げている型番より上位のモデルを選んでおくと安心です。
- Core i5 10400
- Core i7 8700
一般的に型番の数字が大きいほど高性能なコアが搭載されているため、PCの見分け方がよくわからない方は型番だけでも押さえておくと良いでしょう。
GPU
GPUとは、3Dグラフィックス等の高画質な画像描画処理に特化した半導体チップのことです。
GPUは、CPUに内蔵されている「内蔵型GPU」と、グラフィックボードと呼ばれる「外付けGPU」に大きく分けられます。機械学習のモデルを動かす場合には、内蔵型よりも外付けの方が適しています。なぜなら、内蔵型は一般的にCPUとメモリを併用しているため、機械学習に必要なメモリ容量・処理能力を満たしていないからです。
また、機械学習に必要なGPUを選ぶ際には、「CUDA・Tensorコア数」を基準にしてください。具体的には、次に挙げるコア数以上のGPUが機械学習向けです。
- CUDAコア:3,000
- Tensorコア:100
基本的に、コア数が多いモデルほど高性能とされているので、コア数以外にもスペック基準はありますが、迷ったときにはコア数を目安にすると良いでしょう。
なお、機械学習向けのGPUについては、『機械学習でなぜGPUは重要性なのか?クラウドGPUを活用するメリット』で詳しく解説しています。
OS
OSとは、マウス・メモリ・CPUなど、コンピュータを動かすために必要な制御や管理を行うソフトウェアのことです。OSの代表例には、「Windows・Ubuntu・macOS」が挙げられます。
機械学習で使うOSを選ぶ際には、利用したい「GPUの種類」によって決めることができます。たとえば、NVIDIA製のGPUを利用したい場合には「WindowsもしくはUbuntu」を選び、AMD製のGPUの場合には「macOS」を選ぶ必要があります。3つのうちであれば基本的な機械学習環境に十分対応しているので、自社のニーズや好みに合わせて選ぶと良いでしょう。
メインメモリ
メインメモリとは、コンピュータ内のデータやプログラム内容を一時的に保存するPCパーツのことです。
CPU・GPUのメインメモリ容量が大きいほど、処理能力が高くなるため、さまざまな機械学習モデルを実行できます。それぞれのメインメモリのスペックは、次を参考にしてください。
PCパーツ名 | メインメモリのスペック目安 |
---|---|
CPU | 8〜16GB |
GPU | 8〜24GB |
機械学習をするのであれば、CPU・GPUともに「8GB以上」のメインメモリを用意すると良いでしょう。
ストレージ
ストレージとは、データを保存するための補助記憶装置のことで、「SSD・HDD」が代表的な例です。
機械学習は大量のデータを使うため、十分な容量のストレージが必要です。そのため、SSD・HDDどちらか一方でも「1TB以上」のものを用意しておくと安心です。
【ケース別】機械学習向けPCのおすすめスペック例
機械学習には、「線形回帰」のように軽い処理のモデルもあれば、「ディープラーニング」のように大規模な処理が必要なモデルもあります。
ここでは、機械学習向けPCのおすすめスペック例を3つのケース別に紹介します。機械学習をするうえで、どのようなPCを準備すれば良いかわからない方は、それぞれ参考にしてみてください。
ニューラルネットワーク以外の教師あり学習を動かす場合
機械学習のうち「教師あり学習」には、ニューラルネットワーク以外に「線形回帰・決定着・主成分分析」など、比較的軽いモデルも含まれます。ニューラルネットワーク以外の軽い教師あり学習を動かす場合には、次のスペックを参考にしてください。
PCのパーツ | スペック例 |
---|---|
CPU | ・Core i5 10400~
・Core i7 8700~ |
GPU | ・CUDAコア数:3,000程度
・Tensorコア数:100程度 |
メインメモリ | 8〜16GB |
ストレージ | 100~300GB |
このケースの機械学習モデルには高度な処理能力を必要としないため、「ミドルクラスのPC」で十分です。
強化学習・ニューラルネットワークをする場合
強化学習やニューラルネットワークは、機械学習モデルの中では比較的重たい処理となるため、次のような高スペックのPCが必要です。
PCのパーツ | スペック例 |
---|---|
CPU | ・Core i7 10700~
・Core i9 9900~ |
GPU | ・CUDAコア数:5,000程度
・Tensorコア数:300程度 |
メインメモリ | 16GB以上 |
ストレージ | 500GB程度 |
このケースの機械学習モデルでは「ミドルクラス〜ハイエンドモデルのPC」が適しており、特に画像データを扱う場合にはハイエンドモデルのPCを選ぶと良いでしょう。
ディープラーニングをメインでする場合
ディープラーニングをメインで行う場合には、次のような最上級クラスのPCをそろえる必要があります。
PCのパーツ | スペック例 |
---|---|
CPU | ・Core i7 10700~
・Core i9 9900~ ・Xeonシリーズ |
GPU | ・CUDAコア数:6,000~10,000以上
・Tensorコア数:300〜500以上 |
メインメモリ | 16〜24GB以上 |
ストレージ | 1TB以上 |
ディープラーニングモデルは大容量のデータ・大規模な計算処理を必要とするため、必ず「ハイエンドモデルのPC」を選びましょう。
機械学習に低スペックPCがおすすめできない理由
機械学習には比較的軽いモデルもあるとはいえ、性能が低いPCを使って良いわけではありません。ここでは、機械学習に低スペックPCがおすすめできない理由について解説します。
メモリ不足で動かない機械学習もあるから
低スペックPCは、メインメモリの容量が「4GB」程度しかありません。メモリ容量が小さい分できることが限られており、Webサイトを数記事同時に閲覧するだけでメモリ容量がいっぱいになってしまいます。
一方で、機械学習では大規模な演算処理を行うモデルもあるため、モデルの演算処理のための十分なメモリ容量が必要です。したがって、メモリ容量が小さい低スペックPCでは、試してみたい機械学習がメモリ不足で動かない場合もあるため、おすすめできません。
なお、メモリ不足については、『ディープラーニングで「メモリ不足」にならないためには?』で詳しく解説しています。
実行するのに時間がかかるから
低スペックPCは計算処理用のコアが少ないため、高スペックPCと比較するとかなり処理速度が劣っています。そのため、1,000以上のコアを搭載している高スペックPCでは「10分程度」で実行処理が完了する機械学習モデルであっても、2桁程度しかコアを搭載していない低スペックPCでは、「1週間以上」かかってしまうケースもあります。
仮に低スペックPCで機械学習モデルを実行できたとしても、完了するまでに時間がかかるため、おすすめできません。
データ加工の処理が遅くなるから
機械学習に使うデータ作り用に、低スペックPCを利用するケースも多いですが、その場合にも注意が必要です。
機械学習用に大量のデータを加工するために、データ同士をくっつけたり、リスト化したりするだけでも、ある程度のメモリ容量と処理能力が必要です。しかしながら、低スペックPCでは、データ加工処理に必要な分の容量も処理能力も足りないことが多く、処理が遅くなってしまいます。
そのため、データ加工の処理用のためだけであっても、低スペックPCの利用はおすすめできません。
クラウドサービスを活用すれば低スペックPCでも機械学習ができる!
これまでにお伝えしてきたように、低スペックPC単体では機械学習をするのは困難です。ただし、あるサービスを使えばPC環境に依存することなく、どのような環境でも機械学習ができることをご存じでしょうか?
実は、機械学習向けの「クラウドサービス」を活用すると、低スペックPCでも機械学習が可能になります。クラウドサービスの利用により低スペックPCで機械学習ができる理由は、ネットを介してクラウド上の高スペックなPC環境やストレージを使うことができるからです。
クラウド上のGPUで機械学習モデルを実行するため、自分が使っているPCが低スペックであっても関係ありません。そのため、低スペックPCしか用意できないからといって諦めるのではなく、まずはクラウドサービスをうまく利用し、機械学習を始めてみることをおすすめします。
機械学習に使えるクラウドサービスの種類
機械学習をあらゆるPC環境でできるように、さまざまなクラウドサービスが提供されています。ここでは、「機械学習に使えるクラウドサービスの種類」について、次の3つを紹介します。
- クラウドGPU
- 機械学習プラットフォーム
- クラウドストレージ
それぞれのサービスの特徴や、できることを解説していきます。
クラウドGPU
クラウドGPUとは、ネットを介してベンダーが管理するGPUを利用できるクラウドサービスのことです。クラウドGPUを利用すれば、自社で維持管理することなく、最新のGPUを利用できるメリットがあります。
なお、クラウドGPUについて深く知りたい方は、『クラウドGPUとは?オンプレミスと比較したメリット』を参考にしてみてください。
機械学習プラットフォーム
機械学習プラットフォームは、プログラミングエディタやモデル実行環境、ストレージなど、機械学習に必要なシステム環境が一つにまとめられたAI用のクラウドサービスです。
機械学習プラットフォームでは、機械学習モデルの実行はもちろんのこと、データ加工やモデルのカスタマイズ、結果の可視化など、機械学習の一連の流れが体験可能です。
クラウドストレージ
クラウドストレージとは、データを保管できるオンラインサービスのことです。GoogleドライブやDropbox、OneDriveが代表的な例です。
クラウドストレージは、機械学習に使う大量のデータを保存しておくのに役立ちます。また、クラウドGPUや機械学習プラットフォームの中には、クラウドストレージも利用できるものもあります。
機械学習にクラウドサービスがおすすめである理由
機械学習用のオンプレミス型サービスがある中で、なぜクラウドサービスがおすすめといえるのでしょうか?ここでは、その理由を3つ解説していきます。
コストを大幅に抑えられるから
機械学習を始めるためには、グラフィックボードやSSDなど、必要な装置を購入するだけでも100万円以上かかり、さらに各装置の保守・運用のためにも何十万円もの費用を毎月負担しなければなりません。
一方で、クラウドサービスではGPUやストレージなどがそろっているため、初期費用や月額費用を含めて10万円程度の負担で済みます。クラウドサービスを利用すれば、機械学習に必要な設備用のコストを大幅に抑えられるためおすすめといえるのです。
PCの知識がなくても環境構築ができるから
機械学習向けのクラウドサービスでは、ネットを介してベンダーが提供するGPUサーバーやセキュリティシステムを使えるため、機械学習に必要なシステム環境をそろえることができます。そのため、サーバー等のPCの知識がなくても環境構築ができるため、ITが専門でない方にもおすすめといえます。
なお、機械学習に必要な環境システムは、『機械学習のための環境構築方法は?必要な準備と手順』を参考にしてみてください。
機械学習が初めてでも試せるから
機械学習向けのクラウドサービスの中には、クリック操作だけでAIモデルの作成から結果の可視化まで、ひと通りの実行が可能なものもあります。プログラミングの実装スキルやAIの知識を必要とせずに、機械学習モデルを動かすことが可能です。
そのため、クラウドサービスを利用すれば、機械学習が初めての方でも試せるためおすすめといえます。
機械学習向けクラウドGPUは「M:CPP」がおすすめ
機械学習向けのクラウドGPUには、当社モルゲンロットが提供する「M:CPP」がおすすめです。M:CPPがおすすめである理由は、機械学習をするために必要なGPUやプログラミング環境が、それぞれのニーズに合わせてそろえることができるからです。それでは、M:CPPの特徴やおすすめである理由について解説していきます。
M:CPPの特徴
M:CPPは、大手半導体メーカーのAMD社のGPUを利用できるクラウドGPUです。機械学習用にGPU・CPU環境の構築やライブラリ・フレームワークのインストール、HDDの増設など、企業・個人のニーズに合わせて柔軟なカスタマイズが可能です。
M:CPPについては、『GPUクラウドサービスなら「M:CPP」!概要とおすすめの理由』で詳しく解説しています。
M:CPPがおすすめの理由
ほかのクラウドGPUと比較した中で、M:CPPがおすすめできる理由は、次のとおりです。
- 利用目的に合わせたプランをプロのエンジニアから提案してもらえるから
- フリートライアル期間でコストパフォーマンスやスペックの過不足を確認できるから
- 大手クラウドサービスと比較して「2分の1以下」の費用で導入でき、コストパフォーマンスに優れるから
特にM:CPPを導入するうえで、自社の既存システム環境や人材に合わせた最適な契約プランをプロの視点で提案してもらえるという魅力があります。さらに、提案されたプランでスペックの過剰や不足がないかどうかを、フリートライアル期間で確かめられるメリットもあります。
M:CPPには、導入するうえで安心できるサポートがたくさんあるため、これから機械学習を始める場合に特におすすめです。
まとめ
ひと昔前までは、機械学習をするためには高スペックなPC環境をそろえる必要がありましたが、近年では「クラウドサービス」の利用により、低スペックのPCでもできるようになってきました。
さまざまな機械学習向けクラウドサービスが増えてきている中で、もっともおすすめなのがクラウドGPUサービスの「M:CPP」です。M:CPPでは、GPUに加えて、ストレージやネットワーク通信量もすべてオールインワンで提供し、大手GPUクラウドと比べて「最大84%」のコスト削減が可能です。
また、自社のシステム環境や人材に合わせて、当社のエンジニアが最適なプランを提案し、PCスペックの無駄を最小限に抑えます。
今まではPC環境のコストパフォーマンスが問題で機械学習事業を先延ばしにしていた企業の皆さまも、まずは当社のM:CPPを利用し、機械学習を試してみてはいかがでしょうか?