
近年、高性能なPCがなくても気軽に機械学習を楽しめる「クラウドサービス」が増えてきています。クリック一つで機械学習ができるものや、最新のAIモデルが使えるものなど、さまざまなサービスが提供されています。
今回は、機械学習ができる10個のクラウドサービスをまとめて解説します。また、クラウドGPUの「M:CPP」も紹介します。クラウドサービスの特徴を比較できるので、興味がある方はぜひ最後までご覧ください。
機械学習とは
機械学習とは、コンピュータが数式に基づいてデータのパターンを学習し、未知のデータを予測するAI技術です。機械学習はパターンの学習方法の違いから、「教師あり学習・教師なし学習・強化学習」の3つに分類されます。
教師あり学習は、入力・出力データの関係性を学習する機械学習で、重回帰分析やサポートベクターマシンが例として挙げられます。
教師なし学習は、入力データの特徴やパターンを学習する方法で、強化学習は推測結果の価値が最大となるパターンを学習する方法です。
いずれの機械学習も、人間では判断できない新たなパターンを見出せる技術として注目されています。なお、機械学習については『「機械学習」と「ディープラーニング」の違いとは?AIの基礎をわかりやすく解説』で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
クラウドサービスとは
クラウドサービスとは、サーバーやアプリなど、ベンダーが提供するサービスをクラウドシステム上で利用できるサービスのことです。実は、身近なサービスの中にもクラウドサービスのものがあり、「GmailやSkype、Facebook」が代表的な例です。
近年、AI活用の一般化が進んでいることから、機械学習向けのクラウドサービスが増えてきています。
クラウドサービスの種類
クラウドサービスは、次の3つのカテゴリーに分けられます。
・IaaS
・SaaS
・PaaS
それぞれの違いを理解すると、自分のケースに合った適切なクラウドサービスを見つけることができます。ここでは、それぞれの特徴やサービスの具体例を解説するので、機械学習向けのクラウドサービスを選ぶ際の参考にしてみてください。
IaaS
「IaaS(Infrastructure as a Service)」とは、GPUやストレージなどのインフラ製品が利用できるクラウドサービスです。機械学習向けのIaaSには、当社モルゲンロットが提供するクラウドGPUの「M:CPP」や「さくらのクラウド」があります。
それぞれのサービスでは、高性能なGPUをはじめ、CPUやオンラインSSDなどが提供されています。
IaaS型のGPUを利用すると、高性能なGPUだけではなくストレージやCPUもお得な価格で使えるメリットがあります。そのため、機械学習向けのIaaSは、ハイスペックなハードウェア環境を整えるうえで重要です。
SaaS
「SaaS(Software as a Service)」とは、オンラインストレージやAIプラットフォームなどのソフトウェアアプリを使えるクラウドサービスです。機械学習で活用できるSaaSの代表例は、「GoogleDrive」や「Amazon SageMaker」です。
特にAIプラットフォームは、機械学習の実行環境がアプリ化されているため、プログラミングを必要とせず、クリックやドラッグ&ドロップなどの簡単な操作で機械学習を楽しめるメリットがあります。
機械学習向けのSaaSを活用するとノーコードで気軽に実装できるため、機械学習をとりあえず試してみたい場合に最適なサービスです。
PaaS
「PaaS(Platform as a Service)」とは、GPU・ストレージ・プログラミング実行環境・可視化ツールなど機械学習で必要なハードウェアとソフトウェア環境が網羅されているクラウドサービスです。PaaSの具体例は、「GCP・AWS・Microsoft Azure」です。
機械学習用のPaaSを一つ契約するだけで、機械学習のデータ保管からモデル作成・実行、評価まで開発に必要なひと通りの作業を高性能な開発基盤で行えます。すべてオンライン上で機械学習向けの開発環境を整えたい場合は、PaaSを利用するとよいでしょう。
機械学習でクラウドサービスを使うメリット
機械学習でクラウドサービスを活用することには、さまざまなメリットがあります。ここでは、そのメリットを詳しく解説します。
・機械学習のノウハウがなくてもできる
・最新のGPUが格安で使える
機械学習のノウハウがなくてもできる
機械学習をするには、数式・アルゴリズムの知識に加えて、PythonやTensorflowなどの機械学習向けのプログラミング理解が必要です。その点、機械学習向けクラウドサービスのAIプラットフォームでは、機械学習モデルがクリック操作のみで実行できるため、プログラミングやフレームワークの知識がなくても、機械学習を動かすことができます。
AIプラットフォームを活用すれば、機械学習のノウハウがなくても簡単に運用できるメリットがあります。
最新のGPUが格安で使える
機械学習の中でもディープラーニングなどの高負荷がかかるモデルを実行する場合は、高度な処理に対応できる最新のGPUが必要です。
その点、機械学習向けのクラウドサービスでは、NVIDIAやAMD製の比較的新しいGPUが提供されています。たとえば、クラウドGPUのM:CPPでは、フルHD環境でも高パフォーマンスの「Radeon RX Vega 56」を月額5万円以下から利用可能です。
このように、機械学習向けのクラウドサービスでは最新のGPUが格安で使えるメリットがあります。
なお、詳しいメリットとデメリットは『機械学習でクラウドサービスを活用するメリットは?おすすめGPUを紹介』で詳しく解説しているので、チェックしてみてください。
機械学習を楽しめるクラウドサービス10選
ここでは、機械学習を楽しめるクラウドサービスを10個解説します。数多くのクラウドサービスがありますが、今回紹介するのは、「AWS・Microsoft Azure・GCP」の大手クラウド企業から提供される機械学習向けサービスです。それぞれの特徴やおすすめの利用ケースを比較してみてください。
・Amazon SageMaker
・Amazon Forecast
・Amazon Transcribe
・Amazon Rekognition
・Azure Machine Learning
・Azure Cognitive Services
・Vertex AI
・Recommendations AI
・Vision API
・Natural Language API
画像引用元:Amazon SageMaker
「Amazon SageMaker」は、データの準備から機械学習モデルの学習・調整・評価まで、機械学習の一連の工程を自動化できるAWSのサービスです。
Amazon SageMaker内には機械学習用のデータを自動で最適な形式に加工してくれるサービスがあるため、データ準備にかかる手間を減らせるメリットがあります。
また、AWS内で連携してデータの保管やモデルの分析ができるため、AWS内のサービスを普段から使う場合に活用するとよいでしょう。
Amazon Forecast
画像引用元:Amazon Forecast
「Amazon Forecast」は、時系列データを与えるだけで、自動的に将来予測をしてもらえるAWSの機械学習・統計サービスです。たとえば、Amazon Forecastを使うことで、コンビニの新商品における売り上げや工場のIoTセンサーの使用状況、食品の製造に必要な原材料など、小売・工場・製造などあらゆるシーンの時系列データ予測を行えます。
また、Amazon Forecastでは、データの欠損値の補完や水増しを自動で処理してくれる機能があり、機械学習用にデータを加工する作業まで自動化できるメリットがあります。
Amazon Forecastは、時系列データに特化した機械学習を行いたい場合に最適なサービスです。
Amazon Transcribe
画像引用元:Amazon Transcribe
「Amazon Transcribe」は、会議の記録やインタビュー、Zoom会議などの音声データをAIが抽出し、自動的に文字に起こすサービスです。
Amazon Transcribeでは、複数人の音声を区別し、それぞれの属性を設定できる機能があるため、議事録を作成する際に役立ちます。さらには、専門用語や社内用語など、一般的な辞書に載っていない独自の言葉を登録できるため、より精度の高い文字起こしが可能です。
このような特徴から、Amazon Transcribeは、専門性の高い音声データの文字起こしを自動化したい場合におすすめのサービスです。
Amazon Rekognition
画像引用元:Amazon Rekognition
「Amazon Rekognition」は、画像や動画データにおいて、顔・物・テキストなどの検出が自動的に行えるAWSの機械学習向けサービスです。たとえば、工場ラインの異常検知や危険性の高い動画の抽出、社内会議室のオンライン本人確認など、さまざまなケースで活用できます。
Amazon Rekognitionは何百万もの画像を一瞬で分析できるため、大量の画像データの分析業務を自動化したい場合におすすめのサービスです。
Azure Machine Learning
画像引用元:Azure Machine Learning
「Azure Machine Learning」は、Microsoft社の機械学習用クラウドサービスで、基本的にクリック操作のみであらゆる分野の機械学習を実行できます。
Azure Machine Learningでは、「AIダッシュボード」を通じてエラーの分析からモデルの可視化、評価ができるなど、機械学習の詳細な解析ができます。そのため、Azure Machine Learningは、機械学習のブラックボックス化を防げるサービスとして多くの企業で役立てられています。
Azure Cognitive Services
画像引用元:Azure Cognitive Services
「Azure Cognitive Services」は、音声・言語・画像の3つの認識AIと異常検知AIが使える機械学習向けクラウドサービスです。たとえば、音声認識AIサービスでは、文字起こしやテキストの自動読み上げ、リアルタイムでの音声翻訳などの機械学習が楽しめます。
また、それぞれのサービスでは、Dockerコンテナを使用することで事前学習済みの機械学習モデルを利用できます。そのため、Azure Cognitive Servicesは、Dockerコンテナを使うことに抵抗がない方におすすめのサービスです。
Vertex AI
画像引用元:Vertex AI
「Vertex AI」は、画像・テキスト・自然言語など、さまざまなデータに対応した機械学習モデルを実行できるGCPの機械学習向けサービスです。クリック操作や簡単な設定で、事前学習済みの高性能な機械学習を実行できるメリットがあります。
また、機械学習モデルのパラメータ調整やTensorBoardによるモデルの可視化が可能で、分析内容を踏まえてケースに合った最適なモデルを作成可能です。
このようにVertex AIでは、ノンプログラマー向けに簡単に操作できるツールと、AI人材向けの本格的な分析ツールが兼ね備えられています。
Recommendations AI
画像引用元:Recommendations AI
「Recommendations AI」は、商品情報とお客さまの行動履歴データを与えるだけで、ディープラーニングが個人に合わせたおすすめ商品の情報を提示するサービスです。
具体的には、商品のカテゴリーや価格、特徴とお客さまの年代や購買・検索履歴などの詳細なデータを入力することで、お客さまのニーズに合わせてECサイト上やDMなどでおすすめの商品をピックアップしてくれます。
さらには、データの加工や機械学習のモデル選択、通信トラフィックの対策など、機械学習の調整だけではなくサイトの最適化まで自動で行ってもらえるメリットがあります。
このような特徴から、Recommendations AIはECサイトを運営している方におすすめのサービスです。
Vision API
画像引用元:Vision API
「Vision API」とは、画像認識AIが使えるGCPサービスです。具体的には、画像内の物や顔の検出、手書き文字の読み取り、ファイル内のテキスト検出などが可能です。
Vision APIでは「AutoML」と呼ばれる機械学習の自動化システムが採用されているため、利用者側はプログラミングを記述することなく、画像や動画をアップロードするだけで各サービスを利用することができます。
また、GCP内のアプリとの連携も可能なため、GCPを利用している方におすすめの機械学習サービスです。
Natural Language API
画像引用元:Natural Language API
「Natural Language API」とは、感情の分析や特定文字の抽出、構文解析などの機能がある言語AIが利用できるGCPサービスです。
たとえば、Natural Language APIの感情分析を利用すれば、お客さまに対するアンケートから肯定的な意見と否定的な意見を効率的に抽出でき、社内のマーケティング工程をスムーズに運用できるようになります。
また、Natural Language APIは簡単なプログラミングを行う必要があるため、多少AIプログラミングの知識がある方におすすめのサービスです。
機械学習用のクラウドGPUは「M:CPP」がおすすめ
さまざまな機械学習向けのクラウドサービスがある中で、もっともおすすめなのが当社モルゲンロットが提供する「M:CPP」です。ここでは、M:CPPのサービス概要や機械学習で使うメリットについて解説します。前述したサービスと比較しながらご覧ください。
M:CPPのサービス概要
M:CPPは、AMD社が提供する「Vega 56・Radeon VIIなどのハイエンドモデルGPU」を利用できるクラウドGPUサービスです。IaaS型のサービスであるため、GPUのほかにCPUやストレージなどのインフラ機器が利用し放題です。
また、M:CPPでは、ローモデル・ミドルモデル・ハイエンドモデル・ウルトラパフォーマンスの4つのプランが提供されており、さまざまなスペックのGPUから選ぶことができます。
M:CPPについてさらに詳しく知りたい方は、『GPUクラウドサービスなら「M:CPP」!概要とおすすめの理由』をチェックしてみてください。
M:CPPが機械学習におすすめである理由
機械学習を行う際にM:CPPを使うメリットは次のとおりです。
・TensorflowやPytorchなどの機械学習用のライブラリやフレームワークに対応している
・AnacondaやDocker環境など機械学習用の実行環境の構築をプロのエンジニアからサポートしてもらえる
・大手クラウドサービスと比較して「2分の1以下」の費用で導入でき、コストパフォーマンスに優れる
M:CPPには、機械学習に必要なシステムや機能を自社のニーズに合わせて搭載できるメリットがあります。なお、M:CPPのコスパの良さが気になる方は、『AWSとM:CPPのコストパフォーマンスを比較する』を参考にしてみてください。
まとめ
近年、機械学習のニーズ増加から、サイト上のレコメンド機能を自動化できるサービスや顧客アンケートから感情分析ができるサービスなど、多種多様な機械学習向けクラウドサービスが提供されています。
さまざまな機械学習向けのクラウドサービスがある中でおすすめなのが、当社モルゲンロットが提供する「M:CPP」です。M:CPPでは、あらゆる機械学習のニーズに合わせて、ローコストモデルからハイエンドモデルまで、幅広いプランを用意しています。
まずは当社の「M:CPP」を利用し、機械学習を始めてみてはいかがでしょうか?