
近年、GPUサービスの多様化が進み、インターネット経由で簡単に導入できる「GPUのクラウドサービス」が増えてきています。開発のスピード力が重視されるAI・IT業界において、今やPC環境のクラウド化は欠かせないものとなりつつあります。
今回は、GPUのクラウドサービスの概要やメリット・デメリット、具体例を解説します。自社のPC環境に悩みを抱えている企業の皆さまは、ぜひ最後までご覧ください。
GPUのクラウドサービスとは
GPUのクラウドサービスとは、クラウドシステムを経由してベンダーが管理するGPUを利用できるサービスのことです。インターネット環境さえあれば、いつでも好きなタイミングで高性能なGPUを自分のPC上で利用可能です。
また、GPU単体のみ利用できる場合や、AIプラットフォーム内のサービスの一つとしてGPUを利用できるものなど、さまざまな形式のクラウドGPUサービスが提供されています。いずれも、NVIDIAやAMDの最新モデルを気軽に利用できるサービスとして、IT業界に限らずさまざまな業界から注目されています。
GPUクラウドサービスを利用するメリット
GPUのクラウドサービスを利用すれば、従来のオンプレミス型GPUのコスト面・管理面のデメリットを解決することができます。ここでは、GPUクラウドサービスを利用するメリットをオンプレミス型GPUと比較しながら解説します。
最新のGPUを使える
オンプレミス型GPUでは買い替えに多額の費用がかかるため、一度導入すれば壊れることがない限り、同じマシンを使い続けることになります。そのため、古いGPUによるスペック不足が発生し、開発が思うように進まないこともしばしばです。
一方で、GPUレンタルサービスでは常に新しいモデルが取り扱われているため、利用者側は最新モデルを使い続けることができます。そのため、GPUのクラウドサービスを利用すれば常に時代に合ったGPUを使えるため、マシンのスペック不足が原因で開発スピードが落ちてしまうことはありません。
容易に導入できる
オンプレミス型GPUの中には、初期費用に100万円以上かかるものもあるため、導入するにも予算面がネックとなり、すぐに導入できないケースも多くあります。
一方で、GPUのクラウドサービスは初期費用なしで一定期間のレンタル料金だけで済むものも多く、予算を抑えて導入することができます。そのため、クラウドサービスを利用すれば比較的容易にGPUを導入できるため、開発スピードが重視されるAI・VR事業において大きなメリットになるでしょう。
保守コストを削減できる
オンプレミス型では自社でマシンを管理する必要があるため、マシンが壊れないように冷却設備を整えたり、強固なセキュリティシステムを構築したりと、保守のために手間や費用がかかります。
一方でGPUのクラウドサービスは、ベンダーが保有するGPUをクラウド経由で利用する仕組みであるため、マシンの管理を自社で行う必要がありません。そのため、GPUの運用上で必要なセキュリティシステムの構築費用を減らせるため、保守コストを大きく削減できるメリットがあります。
好きなタイミングでGPUを使える
オンプレミス型で社内ネットワークでの利用に限定されている場合は、出張先やクライアント先などの社外から使う必要が出た際にGPUを使うことができません。
一方でGPUのクラウドサービスは、ネットワークを使える環境であれば、クラウドシステムにアクセスするだけでGPUを動かすことができます。場所や時間に限定されず、いつでも好きなタイミングで使えるのは、GPUクラウドサービスの大きなメリットといえるでしょう。
システム構築が不要なケースもある
オンプレミス型では、OSの設定や仮想環境の設定など、自社の開発環境に合うようにGPUのシステム構築を自分たちで行う必要があります。
一方で、GPUのクラウドサービスの中にはGPUの開発環境構築サービスがあり、自社でシステム構築が不要なケースもあります。そのため、システム構築に時間をかけることなく、契約後スムーズに使い始められるメリットがあります。
GPUクラウドサービスのデメリット
GPUクラウドサービスには多くのメリットがある反面、デメリットもあります。ここでは、そのデメリットについて具体的に解説します。
サービスが停止する可能性がある
GPUのクラウドサービスでは、システム管理を自社で行う必要がない分、ベンダー側のシステムがサイバー攻撃にあった場合には、GPUサービスが停止してしまうリスクがあります。ベンダー側の都合とはいえ、クラウドシステムが停止してしまった場合には、利用者側の開発やサービス提供もストップしてしまうデメリットがあります。
自社環境に合わせて自由にカスタマイズできない
GPUのクラウドサービスは、ベンダーが提供するサービスの範囲内でしか利用することができません。そのため、OS環境やGPU・CPUのスペック、ストレージの容量など、事業や開発の展開に合わせて変更する必要が出てきても、自由にカスタマイズできないデメリットがあります。
GPUクラウドサービスの具体例
GPUのクラウドサービスは、日本国内だけでなく世界中の企業で展開されています。ここでは、GPUクラウドサービスの具体例を4つ紹介します。
それぞれの特徴やメリットを踏まえて、どのようなケースにおすすめのサービスかも解説するので、選ぶ際の参考としてみてください。
Google Cloud GPU
Google Cloud GPUとは、Googleのクラウドサービスである「Google Cloud Platform」上で利用できるGPUサービスのことです。Google Cloud GPUでは、「NVIDIA K80・P4・V100・A100」などさまざまなスペックのGPUを利用できます。
Google Cloud GPUは、他のクラウドサービスと比較して選べるGPUの種類が多いことから、GPUを複数の事業で使う場合におすすめのサービスです。
AWS
AWSとは、Amazonが提供するクラウドサービスの総称です。AWSのうち「SageMaker」と呼ばれるAIプラットフォームでは、実行環境の「Docker」を利用することでNVIDIA製のGPUを使うことができます。
また、使用メモリ量と実行時間分に応じて料金がかかる仕組みとなっており、費用の無駄使いをなくすことができます。
AWSは、AWSの各種クラウドサービスやAIプラットフォームを積極的に活用する場合におすすめのサービスです。
GPUSOROBAN
GPUSOROBANは、ハイレゾ社が提供するGPUクラウドサービスです。高性能なGPUである「NVIDIA A100・A4000」を使用できるプランが提供されています。
クラウドサービスの中では珍しく、高性能なGPUを8つも搭載した「GPUスーパーコンピュータ」の利用も可能です。また、「Ubuntu OSやCUDA、TensorFlow」など、AI開発に欠かせないシステム環境や実行環境がひととおりプリインストールされており、インストールの手間を省けるメリットがあります。
GPUSOROBANでは環境構築の無料サポートがあるため、AI事業をスムーズに開始したい方におすすめのクラウドサービスです。
さくらのクラウド
さくらのクラウドでは、「NVIDIA Tesla V100」を利用できる「高火力シリーズ」が提供されています。また、GPUの搭載数やOS・CPUの種類などが異なるプランが提供されており、自社の環境に合わせて選べる魅力もあります。
さくらの専用サーバは、支払い方法やプラン内容に選択肢が複数あるため、カスタマイズ性を重視する場合におすすめのサービスです。
GPUクラウドサービスの選び方のポイント
同じGPUモデルのクラウドサービスでも、支払い方法やサポート内容などが大きく異なります。とはいえ、同じようなGPUクラウドサービスの中から、自社に合ったサービスを選ぶのは大変でしょう。ここでは、GPUクラウドサービスの選び方のポイントを4つ紹介します。
PCスペック
1つ目の選び方のポイントは、「PCスペック」です。
クラウドサービスによって、低コストが売りの「ローモデルGPU」や高性能な「ハイエンドGPU」など、さまざまなGPUスペックのプランが提供されています。また、GPUだけでなく、CPUのスペックやストレージの容量、OSの種類も多種多様です。
そのため、お試し利用の場合は「ローモデル」、ディープラーニング等の大規模な開発での運用の場合には「ハイエンドモデル」といったように、自社のニーズに合わせて過不足がないようにPCスペックを選ぶと良いでしょう。
なお、ケース別のPCスペック目安については、『【ケース別】機械学習に必要なPCスペックをわかりやすく解説』を参考にしてください。
コストパフォーマンス
2つ目の選び方のポイントは、「コストパフォーマンス」です。
初めてGPUを導入する場合に多いのが、とりあえず高性能なGPUクラウドサービスを導入するケースです。高性能なGPUを導入すれば、スペック不足に悩むことはありませんが、コストパフォーマンス面では大きく損をしてしまうことがあります。
そのため、コストパフォーマンスを高めるうえでは、適切なスペックや使用量に応じた課金制など、自社の使用ケースに合わせたGPUクラウドサービスを利用することが大事です。
カスタマイズ性
3つ目の選び方のポイントは、「カスタマイズ性」です。
たとえば、GPU・CPUのモデルチェンジやストレージの増設など、サービス契約後も自由に変更できるタイプや、モデル変更・増設もできず決められたGPUしか利用できないタイプなど、カスタマイズ性もサービスによってさまざまです。
そのため、長期的にGPUを使う場合にはカスタマイズ性が高いものを選び、試してみたいGPUが決まっている場合には、カスタマイズサービスがないものを選択すると良いでしょう。
運用・構築サポート
4つ目の選び方のポイントは、「運用・構築サポート」です。
GPUクラウドサービスの中には、システムやプログラミング実行環境の運用・構築サポートを提供しているものもあります。
たとえば、AI向けのクラウドGPUサービスでは、AIで必要なフレームワーク・仮想環境のインストールをプロのエンジニアがサポートしてくれる場合もあります。また、サポート方法は電話やチャット、オンラインビデオなど、クラウドサービスによってさまざまです。
実行環境用を一から構築するのは時間がかかるため、特にGPUの導入が初めての場合には、運用・構築サポートが手厚いサービスを選ぶことをおすすめします。
クラウドGPUサービスなら「M:CPP」がおすすめ
数多くあるクラウドGPUサービスの中で、当社モルゲンロットが提供する「M:CPP」がもっともおすすめです。M:CPPでは、初めてGPUを導入する場合にも安心して利用できるサポートやサービスが充実しています。
それでは、M:CPPの概要やメリットについて詳しく解説していきます。
M:CPPとは
M:CPPは、AMD製の「ハイエンドモデル〜ローモデルGPU」を利用できるクラウドGPUサービスです。
M:CPPでは、低コストで手軽に試せるプランから、大規模な開発にも対応できるプランまで、さまざまなニーズに合わせたプランが提供されています。また、近年のAI活用におけるGPU需要にも対応しており、「TensorFlowやPyTorch、ONNX」などのAI向けフレームワーク・ライブラリの構築サポートを提供しています。
なお、M:CPPについてさらに詳しく知りたい方は、『GPUクラウドサービスなら「M:CPP」!概要とおすすめの理由』をチェックしてみてください。
M:CPPのメリット
M:CPPのメリットは、次のとおりです。
- 代表的なGPUクラウドと比較して「2分の1以下」の費用で導入でき、コストパフォーマンスに優れている
- 初期システム状態を「ベアメタル」と「プリインストール」から選べる
- CPUの変更やHDDの増設、Docker環境の構築など、GPU以外にも柔軟なカスタマイズができる
- プロのエンジニアから利用用途に合わせてプランを提案してもらえる
特に、M:CPPを導入するうえで、最適な契約プランをプロの視点で提案してもらえる良さがあります。M:CPPを利用すれば、初めてGPUを導入する場合でも、安心してプランを選択できるでしょう。
なお、M:CPPのコスパの良さが気になる方は、『AWSとM:CPPのコストパフォーマンスを比較する』を参考にしてみてください。
まとめ
近年A・VR事業の活用ニーズが増え、専門知識がない場合にも気軽にGPUを導入できる「GPUのクラウドサービス」が注目されています。GPUクラウドサービスでは、スーパーコンピュータレベルの高性能なGPUモデルから、手頃な価格設定でコストを抑えられるGPUモデルまで、多種多様なGPUが取り扱われています。
さまざまなGPUのクラウドサービスが提供されている中で、もっともおすすめなのは、当社モルゲンロットが提供する「M:CPP」です。
M:CPPでは、大手クラウドGPUにかかる費用の半分以下で利用でき、GPUの導入検討段階でも始めやすいメリットがあります。新たにGPUを導入する企業の皆さまは、まずは当社の「M:CPP」を検討してみてはいかがでしょうか?