
ディープラーニングは、一般家庭向けや社用PCでは実行できないケースが大半です。とはいえ、どのようなPCがディープラーニング環境に最適なのかわからない方も多いのではないでしょうか?
今回は、ディープラーニングに必要なPCパーツ別の推奨スペックやおすすめ商品、環境を整える際の注意点を解説します。また、コンピュータに詳しくない方でも簡単にAI環境を構築できる「クラウドGPU」も紹介します。
ディープラーニング向けPCと家庭向けPCの違い
「AI・ディープラーニング用PC」として販売されているように、ディープラーニングを行うためには家庭向けPCでは不十分なケースもあります。ここでは、ディープラーニング向けPCと家庭向けPCの特徴について詳しく紹介します。
家庭向けPCの特徴
家庭向けPCの特徴は、次の3つです。
- 低〜中程度のスペックの「CPU」
- 小さい容量の「メモリ・ストレージ」
- GUI操作が簡単な「WindowsOS」
家庭用PCの大半が、コンパクトなスペックや容量のPCパーツを搭載し、PC自体のスペックよりも操作性の高さを重視しています。また、スペックが高くないPCパーツが採用されていることから、「5〜30万円」と比較的安く済むのも特徴的です。
このように、家庭向けPCでは一般家庭でも気軽に使えるように、操作性を高め、手の届きやすい価格帯で設定されています。
ディープラーニング向けPCの特徴
ディープラーニング向けPCの特徴は、次のとおりです。
- ハイスペックな「GPU・CPU」
- 大容量の「メモリ・ストレージ」
- CUI操作が基本の「LinuxOS」
ディープラーニング用PCでは、最新かつ最高レベルのGPUやストレージが採用され、スペックが何よりも重視されています。また、高性能なPCパーツが搭載されているため、「100〜300万円」と高額な場合も多くあります。
このように、ディープラーニング向けPCは、高度な処理を必要とするディープラーニングに対応できるように、最高水準のPCパーツが用いられている点が特徴的です。
ディープラーニングに必要なPCパーツと推奨スペック
ディープラーニングをするために必要なPCパーツと、それぞれの推奨スペックについて紹介します。一般的なプログラミング環境とは異なり、ディープラーニングにはハイスペックな環境が必要です。
GPU
1つ目のPCパーツは、「GPU」です。
GPUとは、高画質な画像を描画するのに必要な計算処理を行う半導体チップのことです。ディープラーニングでは、大量の演算処理を必要とするため、基本的にはGPUがなければ実行できません。
近年ディープラーニング需要に合わせて、「Tensorコア」と呼ばれる演算装置を搭載したGPUも増えてきています。Tensorコアとは、ディープラーニングの行列計算処理に特化したコアのことで、ディープラーニング用のGPUを選ぶ際には要チェックです。
一般的に、GPUのスペックは「Tensorコア」と画像処理に特化した「CUDA(SP)コア」の数で異なり、それぞれのコア数が多いほど性能が高くなる傾向にあります。そのため、GPUは搭載されている「コア数」を基準に選ぶと良いでしょう。具体的には、次に挙げるコア数以上のGPUがディープラーニング向けです。
- CUDAコア(NVIDIA製):3,000
- SPコア(AMD製):2,500
- Tensorコア:100
上記を参考に、自社の環境やニーズに合わせて、十分なパフォーマンスが見込めるGPUを選びましょう。なお、GPUに興味がある方は、『【比較】ディープラーニングに必要な「GPU」の要件とは?』を参考にしてみてください。
CPU
2つ目のPCパーツは、「CPU」です。
CPUとは、コンピュータ全体の計算を処理する装置のことです。具体的には、マウス等の制御やプログラミングの実行まで、さまざまな演算処理を担います。
もちろん、ディープラーニングに必要な演算処理を行える能力もありますが、CPUのコア数は多くても2桁程度であるため、1,000コア以上を搭載するGPUのように高速に処理することはできません。そのため、CPUは主にディープラーニングに使う「データの加工作業時」に使われ、モデルを実行するのはGPUが一般的です。
CPU自体はディープラーニングの処理に直接関係ないとはいえ、性能が低いと前段階のデータ準備に時間がかかってしまいます。そのため、ディープラーニングをスムーズに行うためには、ある程度高スペックなCPUが必要です。具体的には、次に挙げている型番より上位のモデルを選んでおくと安心です。
- Intel製:Core i5 10400・Core i7 8700・Core i9 11900
- AMD製:Ryzen 7 7700・Ryzen 9 5900
どちらの製品も一般的に型番の数字が大きいほど高性能なコアが搭載されているため、CPUを選ぶ際は型番を基準にすると良いでしょう。なお、CPUについて深く知りたい方は、『ディープラーニングにCPUは必要?注目すべきスペックとは』もチェックしてみてください。
ストレージ(HDD・SSD)
3つ目のPCパーツは、「ストレージ」です。
ストレージとは、データを保存するための補助記憶装置のことで、「HDDとSSD」が代表例です。ディープラーニング用のPCには、データの高速な読み書きが可能な「SSD」が搭載されている場合が一般的です。ただし、費用面を重視する場合には、SSDよりも安価な「HDD」を選ぶケースもあります。
また、SSD・HDDは、ディープラーニングで用いる加工済みデータや元データを保存するために使うため、かなりの容量が必要です。そのため、HDD・SSDいずれにしても「1TB以上」のものを用意すれば、データ保存容量を気にせずディープラーニングに取り組めます。
メモリ
4つ目のPCパーツは、「メモリ」です。
メモリとは、コンピュータ内部のデータを一時的に保存する主記憶装置です。ディープラーニングでは、モデルを動かす際にストレージから取り出したデータを一時的に保存しておくために使われます。
そのため、ディープラーニングを行う際にはGPUのメモリに載るようにデータ量やモデルを調整する必要があります。メモリが小さすぎると、学習に使うデータを減らしたり、モデルを小さくしたりと、性能を意図的に低くする必要が出てきます。
したがって、ディープラーニングを行う際には、容量が大きいメモリが必要です。具体的には、小さなディープラーニングモデルの場合でも「最低16GB」は必要で、大規模なモデルの場合には「1TB」以上必要になるケースもあります。
また、メモリはCPUにおいても重要で、容量が大きいほど複数の処理を同時に実行できます。そのため、データ加工を素早く処理するためには、メモリが「8〜16GB」搭載されたCPUを選ぶと良いでしょう。
なお、メモリについて詳しく知りたい方は、『ディープラーニングで「メモリ不足」にならないためには?』をチェックしてみてください。
OS
5つ目のPCパーツは、「OS」です。
OSとは、コンピュータを動かすために必要な制御や管理を行うソフトウェアのことです。OSの代表例には、家庭用PCの多くにインストールされている「Windows」のほかに、「Ubuntu」や「macOS」が挙げられます。
ディープラーニング用のPCのOSには、ドライバー等の兼ね合いから「Ubuntu・macOS」が一般的です。どちらを選ぶか迷う際には、GPUの種類で選ぶと良いでしょう。
たとえば、NVIDIA製のGPUを利用したい場合には「Ubuntu」を選び、一方でAMD製の場合には「macOS」が適切です。OSによって、使えるソフトウェアやGUI・CUIが大きく異なるため、自社のニーズや好みに合わせて選ぶと良いでしょう。
ディープラーニング向けPC環境を整える時の注意点
ディープラーニング環境は一般的なPC環境とはまったく異なるため、注意して整えなければディープラーニングが実行できない環境になってしまう可能性があります。ここでは、ディープラーニング用のPC環境を整える時の注意点を2つ紹介します。
拡張性の有無を確認する
ディープラーニング用のPCの中には、GPUの搭載数やストレージの容量を必要に応じて拡張できるものがあります。拡張が可能なPCでは、大規模なディープラーニングモデルを動かす場合や、事業の拡大に伴い想定人数以上で開発が必要になった場合にも、問題なく対応できるメリットがあります。
そのため、どのようなケースにも柔軟に対応できるように、拡張性が高いものを選んでおくと安心です。
冷却設備も整える
一般家庭用のPCでも長い時間使い続けていると、PCが熱くなってくる経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか?ディープラーニング用のPCでは、さらに大きな負荷がかかるため、熱がこもりやすくなります。
長持ちさせるためにも、ディープラーニング用の環境を整える際には、PCの熱を冷ますために冷却ファンや液浸冷却システムなどの「冷却設備」も忘れず用意するようにしましょう。
【用途別】おすすめディープラーニング用PC
ディープラーニング環境用のPCは、活用シーン別で異なるスペックのものが必要になります。活用シーンによっては、最上級モデルでなければ実行できないケースもあれば、ミドルレンジのPCでも十分動かせるケースもあるからです。
ここでは、3つの用途別におすすめのPCを紹介します。先述した推奨スペックの内容とあわせて、参考にしてみてください。
ディープラーニングのデータを作る用
まずは、「ディープラーニングのデータを作る用」におすすめのPCを紹介します。モデルを動かさないPCとはいえ、大量のデータを高速で処理する必要があり、ハイスペックなCPUと大容量のメモリが搭載されたPCが必要です。
画像引用元:パソコン工房
そこで、パソコン工房の「AMD Ryzen 7搭載ミニタワーデスクトップパソコン」がおすすめです。このPCのスペックは、CPUの型番が「Ryzen 7 5700G」でメモリが「16GB」、そしてSSDが「1TB」です。このPCは、PC全体のメモリ容量が大きくデータ作成用PCとしては十分なスペックを持っています。
学習済みディープラーニングモデルの実行用
次に、「学習済みディープラーニングモデルの実行用」におすすめのPCを紹介します。
転移学習はモデルを学習する過程がないため、中程度のディープラーニング向けPCでも実行できます。
画像引用元:Dell
この用途でおすすめなのが、Dellの「ALIENWARE AURORA R14 ゲーミング デスクトップ」です。
このPCは、CPUとGPUがそれぞれ「AMD Ryzen 9 5900」と「NVIDIA GeForce RTX 3080」で、いずれもハイスペックなパーツが搭載されています。また、メモリは「最大64GB」まで、さらにストレージも「最大2TB」まで拡張可能で、十分なメモリ容量が確保できることからも、転移学習用のPCとして適しています。
大量の学習データ・大規模なディープラーニングモデルの実行用
最後に、「大量の学習データ・大規模なディープラーニングモデルの実行用」におすすめのPCを紹介します。この用途の場合には、GPUとメモリのスペックを特に重視すると良いでしょう。
画像引用元:GDEPAdvance
そこでおすすめなのが、GDEPAdvanceの「DeepLearningBOXⅡ」です。このPCのCPUは「Core i9 10980XE」と2019年発売の最新モデルで、GPUに関してはTensorコアが「336こ」もある「NVIDIA RTX A6000」が搭載されています。
また、メモリは「最大256GB」まで、さらにストレージもHDDとSSDそれぞれが「最大18TB」と「最大3.8TB」まで拡張可能で、メモリ容量の拡張性にも優れています。
このPCでは、GPU・メモリそれぞれ最高レベルのパーツを搭載可能であるため、大規模なディープラーニング開発におすすめです。
ディープラーニングに最適なPC環境は「クラウドGPU」で解決できる
ディープラーニングを行うためには、GPUやストレージ、冷却設備など、さまざまな環境を準備する必要がありますが、実は「クラウドGPU」を利用すれば環境構築の手間を解決できます。
クラウドGPUとは、ベンダーの管理下にあるGPUをインターネット経由で利用するサービスのことです。契約すれば、ディープラーニング環境用のGPUやストレージを利用できるようになります。
そのため、クラウドGPUを利用すれば、高額なGPUを購入したり、マシンのシステム設定を一から行ったりなどと、自社でPC環境を整える必要がなくなるのです。ディープラーニング環境を自分で揃えるのが不安な場合には、クラウドGPUを積極的に利用すると良いでしょう。
クラウドGPUのメリット
それでは、ディープラーニング環境でクラウドGPUを使う3つのメリットについて、実行環境面から解説していきます。クラウドシステムに抵抗がある方は、参考にしてみてください。
ハイスペックなGPUを気軽に利用できる
クラウドGPUの中には、「100万円以上」もの高額なGPUを販売価格の「10分の1程度」で提供しているサービスもあります。そのため、負担が大きく簡単に導入できないGPUマシンも多くありますが、クラウドGPUを利用すれば気軽に導入できます。
ディープラーニングには高額なGPUが必要になるケースも多いため、予算を気にすることなく気軽に利用を開始できるのは大きなメリットといえるでしょう。
PCに知識がなくても簡単に導入できる
クラウドGPUは、クラウド上のサーバーを利用する仕組みであるため、ディープラーニング環境に必要なGPUやOSの設定や、ドライバーのインストールなどの難しい環境構築を自社で行う必要がありません。そのため、PCに知識がなくても簡単に導入できるメリットがあります。
GPUサーバーの管理負担を軽減できる
クラウドGPUでは、ベンダーがGPUのセキュリティやネットワーク環境などの保守運用を行います。そのため、クラウドGPUを利用すれば自社におけるサーバーの管理負担を軽減できるメリットがあります。
なお、上記以外のGPUのクラウドサービスのメリット・デメリットは、『GPUのクラウドサービスとは?メリット・デメリットと具体例を紹介』で詳しく解説しています。
ディープラーニング向けクラウドGPUは「M:CPP」がおすすめ
さまざまなディープラーニング向けのクラウドGPUが提供される中で、当社モルゲンロットが提供する「M:CPP」がもっともおすすめです。それでは、M:CPPの特徴やディープラーニングにおすすめである理由について詳しく解説していきます。
M:CPPの特徴や強み
M:CPPは、AMD製の「ハイエンドモデルGPU」を低コストで利用できるクラウドGPUサービスです。M:CPPの特徴は次のとおりです。
- ローモデル・ミドルモデル・ハイエンドモデルの3つのプランが提供されている
- 初期システム環境を「ベアメタル」と「プリインストール」のどちらも選べる
- 専有サーバーとして利用できる
- GPUの使用料金に加え、ストレージのディスク使用料やネットワーク利用料も含まれたわかりやすい価格体系
上記の特徴より、顧客のニーズに合わせてプランやシステム環境を柔軟に選べる点がM:CPPの強みとして挙げられます。なお、M:CPPについてさらに詳しく知りたい方は、『GPUクラウドサービスなら「M:CPP」がおすすめ!メリットと注意点』をチェックしてみてください。
ディープラーニングにおすすめである理由
M:CPPがディープラーニングにおすすめである理由は次のとおりです。
- TensorflowやPytorchなどのディープラーニング用のライブラリやフレームワークに対応している
- AnacondaやDocker環境などディープラーニング用の実行環境の構築をサポートしてもらえる
- CPUの変更やHDDの増設など、GPU以外のスペック調整も可能
- 代表的なGPUクラウドと比較して「2分の1以下」の費用で導入でき、コストパフォーマンスに優れている
このように、M:CPPにはディープラーニング環境用のサービスが充実しており、ディープラーニングを行いたい方におすすめといえます。
まとめ
ディープラーニングの中には、大規模な演算処理が必要なモデルも多く、一般的な家庭向けPCよりも高スペックなPCが必要です。とはいえ、予算がない場合やPCに不慣れな場合には、ディープラーニングに必要なPC環境を整えるのは簡単なことではありません。
そこで、PCの知識に関係なく、ディープラーニング用PCを手軽に用意できるのが「クラウドGPU」です。さまざまなディープラーニング向けのクラウドGPUが提供されていますが、当社モルゲンロットが提供するクラウドGPUサービス「M:CPP」が最もおすすめです。
M:CPPでは、ディープラーニング用の実行環境やシステム環境を構築した状態で利用開始できます。そのため、PC環境の構築がネックでディープラーニングを諦めていた企業の皆さまも、まずは当社のM:CPPを利用してみてはいかがでしょうか?