
近年、ディープラーニング環境のクラウド化が急速に進んでいます。AIプラットフォームやオンラインストレージにより、ディープラーニング環境がクラウドシステム上で完結できるようになりつつあります。
今回は、ディープラーニング環境のクラウド化が進む背景やおすすめのサービス、注意点を解説します。AI事業の開発環境を整えたい企業の皆さまは、ぜひ最後までご覧ください。
ディープラーニング環境のクラウド化が進む背景
ディープラーニング環境のクラウド化が進む背景には、「日本企業全体のAI人材不足」が強く関係しています。
近年、AIを活用した新規事業開拓のために、多くの企業がディープラーニングへの取り組みを開始しました。ディープラーニング環境にはGPUサーバーが不可欠ですが、オンプレミス型GPUは一からシステム環境を構築する必要があり、AI人材が不足しノウハウがない企業にとって開発を妨げる要因となっていました。
そこで注目されたのが、クラウドGPUや AIプラットフォームなどの「クラウドサービス」です。クラウドサービスでは、自社でAI用の環境構築が必要なく、AI開発をスムーズに始められることから、 AI人材がいない企業を中心に広まっていきました。
このように、AI人材不足に伴う問題を解決するために、ディープラーニング環境のクラウド化が進みました。
ディープラーニング環境で使えるクラウドサービス
ディープラーニング環境向けに、さまざまなクラウドサービスが提供されています。ここでは、3つのクラウドサービスについて紹介します。
クラウドGPU
クラウドGPUとは、ベンダーが管理するGPUをインターネット経由で利用するクラウドサービスのことです。ライセンスを購入することで、好きなタイミングでクラウド上のGPUを利用することができます。
クラウドGPUについては、『GPUサーバとは?メリットや問題点、クラウドGPUサーバのメリット』で詳しく解説しています。
AIプラットフォーム
AIプラットフォームとは、データ加工ツールや、プログラミング実行環境やエラー解析システムなど、AI開発に必要なツールが一つにまとまったクラウドサービスのことです。
AIプラットフォームは、ディープラーニングをワンクリックで実行できる手軽さが魅力です。
オンラインストレージ
オンラインストレージとは、データを保管できるクラウドサービスのことです。身近な例には、GoogleドライブやDropbox、OneDriveがあります。ディープラーニングでは大量の画像・動画データを使うことが多く、一時的に保存する場所として役に立ちます。
クラウドGPUやAIプラットフォームの中には、オンラインストレージをサービスの一つとして利用できる場合もあります。
ディープラーニング環境をクラウド化すべきケース例
クラウドサービスはもちろん便利ですが、すべての企業に最適なサービスとは限りません。企業の人材リソースやコストに対する考え方によっては、自社で管理をするオンプレミス型サービスの方が相性が良い場合もあります。
ここでは、ディープラーニング環境をクラウド化すべきケース例を4つ紹介します。どちらのサービスを利用するべきか迷っている場合には参考にしてください。
AIに知見がある人がいない
1つ目は、「AIに知見がある人がいない」ケースです。
通常、ディープラーニングをするためには、AI専用のプログラミング環境やGPU等のシステム環境を構築する必要があります。その点、 AI開発向けのクラウドサービスでは、クリック操作でディープラーニングを実行できるシステムやツールが提供されています。
そのため、クラウドサービスを利用すれば、AIの知識に関係なくディープラーニングができるようになるため、AIエンジニア等のAI人材がいない場合には、積極的にクラウド化を進めると良いでしょう。
GPUサーバーの管理ノウハウがない
2つ目は、「GPUサーバーの管理ノウハウがない」ケースです。
GPUを自社で保有するオンプレミス型の場合には、運用するうえでネットワーク管理やセキュリティなどサーバーを管理するためのノウハウが必要です。一方で、GPUのクラウドサービスはベンダーがGPUを保守・運用を行うため、サーバーを自社で管理する必要がありません。
そのためクラウドサービスを利用すれば、自社のノウハウの有無に依らず、安全にGPUを使うことができるため、自社にサーバーの管理ノウハウがない場合にはクラウド化を進めるべきといえます。
AI事業を検討している段階
3つ目は、「AI事業を検討している段階」ケースです。
AI事業を始めるうえでGPUの導入は必須ですが、費用や管理上の手間を考えると簡単に導入できるものではありません。
その点、 AI開発向けのクラウドサービスの中には、GPUを時間単位で契約できるものもあり、GPUにかかるコストを抑えられる場合があります。また、ベンダーがGPUを管理するため、自社における管理上の手間もかかりません。
そのためクラウドサービスを利用すれば、AI開発を進めるうえでネックになるGPUを気軽に導入できるため、AI事業への参入を検討している段階の企業はクラウド化を進めるべきです。
導入コストを抑えたい
4つ目は、「導入コストを抑えたい」ケースです。
GPUサーバーは、初期購入費だけでも100万円〜300万円かかります。気軽に導入できる費用感ではないため、ディープラーニングをするためにGPUの導入を検討している企業にとっては、踏みとどまってしまう理由になるでしょう。
一方でGPUのクラウドサービスの中には、初期費用が要らないサービスもあります。そのためクラウドサービスを利用すれば、高額なGPUを購入する必要がなくなるので、導入コストを抑えたい場合はクラウド化を進めるべきです。
ディープラーニング用の主なクラウドサービス3選
ディープラーニング需要の増加に伴い、クラウド事業を展開する世界的な企業がディープラーニング用のクラウドサービスを提供しています。ここでは、主なサービスを3つ紹介します。それぞれの特徴や機能を解説するので、比較検討する際の参考にしてください。
Google Cloud Platform
「Google Cloud Platform(GCP)」では、「AI Platform」を通じて、データ作成・学習・予測・モデルパラメータ調整など、一連のディープラーニングの工程を自動的に実行できます。また、AI Platformでは、「NVIDIA K80・P4・V100・A100」など全部で6種類のハイスペックGPUが提供されており、自社のディープラーニング環境に合わせて自由に選べるメリットがあります。
なお、AI Platformで利用できるGPUのスペックについては、『ディープラーニングにおすすめのGPU4種類!選び方のポイント』をチェックしてみてください。
Microsoft Azure
「Microsoft Azure」では、「Azure Machine Learning」を通じて、異常検出や音声・顔認識、自然言語処理など、さまざまな分野のディープラーニングをクリック操作で簡単に試すことができます。
Azure Machine Learningでは、「PyTorch・TensorFlow・Ray RLLib」など、ディープラーニング用のフレームワークやライブラリがインストール済みであるため、 AIの知見がない場合にもスムーズに使い始めることができます。
また、 AI人材用の開発ツールも充実しており、自作したディープラーニングをツール内で実行することも可能です。
Amazon SageMaker
「Amazon SageMaker」はAmazonが提供する「AWS」のサービスの一つで、古典的なアルゴリズムから比較的新しいAIモデルまで、さまざまな種類のAIモデルを自分で実装することなく利用できます。
また、AWS上の「Amazon S3・SageMaker Feature Store・Redshift」などデータを扱うツールと連携することで、ディープラーニングの準備段階もスムーズにできます。
ディープラーニング向けクラウドGPUなら「M:CPP」がおすすめ
さまざまなディープラーニング向けのクラウドサービスがある中で、当社モルゲンロットが提供する「M:CPP」がもっともおすすめです。M:CPPには、ディープラーニング環境に必要なシステムや機能が過不足なく搭載されています。
それでは、M:CPPにおけるサービスの特徴やディープラーニングにおすすめである理由について詳しく解説していきます。
M:CPPのサービス特徴
M:CPPは、AMD社の「ハイエンドモデルのGPU」を利用できるクラウド型のGPUサービスです。M:CPPにおけるサービスの特徴は次のとおりです。
- ローモデル・ミドルモデル・ハイエンドモデルの3つのプランを提供
- システム環境は「ベアメタル」と「プリインストール」の2種類を用意
- 利用目的に合わせてプロのエンジニアがプランを提案するサービス
- フリートライアル期間を用意
- 利用中のアップグレード・ダウングレードにも柔軟に対応
なお、M:CPPについてさらに詳しく知りたい方は、『GPUクラウドサービスなら「M:CPP」!概要とおすすめの理由』をチェックしてみてください。
M:CPPがディープラーニングにおすすめである理由
M:CPPがディープラーニングにおすすめである理由は次のとおりです。
- AnacondaやDocker環境などディープラーニング用の実行環境の構築をサポートしてもらえる
- ディープラーニング用のライブラリやフレームワークに対応している
- CPUの変更やHDDの増設など、GPU以外のスペック調整も可能
- 代表的なGPUクラウドと比較して「2分の1以下」の費用で導入でき、コストパフォーマンスに優れている
このように、M:CPPにはディープラーニング環境を整えるためのサポートが充実しており、ディープラーニングを行いたい方におすすめといえます。
クラウド化されたディープラーニング環境の注意点
ディープラーニング環境をクラウド化すると便利になる反面、効率良く運用するうえで注意すべきことがあります。ここでは、3つの注意点を解説します。
また、それぞれの対策方法も解説するので、クラウド化をこれから始める方は一つの参考としてご覧ください。
オーバースペックになりがち
初めてクラウドGPUを利用する場合には、自社に合った適切なGPUスペックがわからず、必要以上にハイスペックなGPUを導入してしまうケースも多くあります。オーバースペック状態のまま利用し続けてしまうと、コストパフォーマンスが悪くなってしまい、クラウドサービスのメリットがなくなってしまいます。
そのため、オーバースペックによるコストの無駄使いをなくすためには、ベンダーにGPUの利用目的を伝えたうえで、最適なモデルを提案してもらうと良いでしょう。
なお、ケース別のPCスペックについては、『【ケース別】機械学習に必要なPCスペックをわかりやすく解説』で詳しく解説しています。
ノイジーネイバーへの対策が必要
クラウド上の共有GPUサーバーを利用する場合には、「ノイジーネイバー」への対策が必要です。
ノイジーネイバーとは、仮想環境上で他のリソースを専有するワークロードのことです。ノイジーネイバーに邪魔をされてしまうとリソース不足になり、ディープラーニングモデルが動かなくなってしまうケースもあります。
そのため、高性能なGPUを提供している共有サーバーであってもノイジーネイバーにより想定よりもパフォーマンスを発揮できないケースがあるため、注意して契約するようにしてください。
ノイジーネイバーに対策するうえでは、共有サーバーではなく「専有サーバー」を利用できるクラウドGPUの導入がおすすめです。
定期的にコストパフォーマンスを見直す
クラウドサービスを導入してからも、定期的にコストパフォーマンスを見直すことが重要です。
たとえば、月額払いのクラウドGPUを契約している場合に新規事業が衰退しサービスの使用頻度が低くなると、コストパフォーマンスが悪化してしまうケースがあります。使用回数が少なくコスト負担に見合った成果が出ていない場合には、秒単位で支払うサービスへ変更しコスト負担を軽減する方法が考えられます。
このように、事業拡大や変更に伴い、一度導入したクラウドサービスが合わなくなるケースも珍しくありません。そのため、自社の使用頻度や時間をチェックしたうえで、コストパフォーマンスを最大化できるサービスやプランへの変更を定期的に検討すると良いでしょう。
まとめ
多くの日本企業でAI人材が不足していることにより、 AIの知識に関係なく気軽にディープラーニングを試せる「クラウドサービス」の導入が進んでいます。クラウドサービスは、AI事業を検討段階中の企業をはじめ、多くの企業で活用できるサービスです。
さまざまなクラウドGPUサービスが提供されている中で、もっともおすすめなのは、当社モルゲンロットが提供する「M:CPP」です。
M:CPPでは、ディープラーニングに必要なシステム環境や開発環境の構築をサポートしてもらえるメリットがあります。これからディープラーニング環境を整える企業の皆さまは、まずは当社のM:CPPを検討してみてはいかがでしょうか?