
近年AI活用の一般化が進み、ディープラーニングを気軽に試せる「クラウドサービス」が注目されています。
ディープラーニングに利用されるサービスは、クラウドGPUやCPUプラットフォーム、オンラインストレージなどさまざまです。今回は、ディープラーニングに必要な環境やクラウドGPUがおすすめな理由、代表的なクラウドサービスについて解説します。
ディープラーニングに必要な環境とスペック目安
まずは、ディープラーニングをするために整える必要がある環境と、それぞれのスペック目安について紹介します。ディープラーニングは、一般的なプログラミング環境とは異なり、ハイスペックな環境が必要とされます。
GPU
GPUとは、高画質な画像描画に必要な計算処理に特化した半導体チップのことです。近年では、ディープラーニング用に高速で行列演算を処理できる「GPGPU」技術も出てきています。
また、GPUの性能を測る1つの目安に、「コア数」が挙げられます。基本的に、「CUDA・Tensorコア数」が多いモデルほど処理速度が早くなり、高性能とされています。
以下の表にて、「ディープラーニング環境別のGPUのスペック目安」をまとめたので、参考にしてみてください。
ディープラーニング環境 | CUDAコア数 | Tensorコア数 |
---|---|---|
・画像認識やリアルタイム動画処理など、高性能な環境が必要
・複数人で同時に利用することが多い |
6,000~10,000以上 | 300〜500以上 |
・言語処理等の比較的軽いディープラーニングを実行する
・個人利用が主 |
3,000~6,000 | 100~300 |
GPUは、ディープラーニングの処理にもっとも影響を与えます。それぞれの環境に応じて、十分なパフォーマンスが見込めるGPUを選びましょう。
なお、GPUについて深く知りたい方は『【比較】ディープラーニングに必要な「GPU」の要件とは?』を参考にしてみてください。
CPU
CPUとは、「演算機能」と「制御機能」を備えたコンピュータ全体の計算を処理する装置です。CPUは、主にディープラーニングに使う「データの加工作業時」に使われ、モデルを実行するのはGPUが一般的です。
CPUでディープラーニングをしない理由は、1,000コアを超えるGPUに対して、CPUには「最大でも60コア程度」しかないため、ディープラーニングの演算処理にとてつもなく時間がかかるからです。
CPU自体はディープラーニングの処理に直接関係ないとはいえ、性能が低いと前段階のデータ準備に時間がかかってしまいます。
以下の表にて、「ディープラーニング環境別のCPUのスペック目安」をまとめたので、参考としてご覧ください。それぞれのスペック目安は、「IntelのCPU」を基準としています。
ディープラーニング環境 | Intel CPUの型番 |
---|---|
CPUでもディープラーニングを少し動かしたい | Xeon |
画像・動画データを大量に準備する | Core i7 10700~
Core i9 9900~ |
言語・数値・音声データを準備する | Core i5 10400~
Core i7 8700~ |
なお、CPUのスペックについては、『【2023】ディープラーニングにCPUは必要?注目すべきスペックとは』もチェックしてみてください。
メモリ容量
メモリとは、コンピュータ内部のデータを一時的に保存する主記憶装置です。
GPUのメモリ容量のサイズによって、「実行できるディープラーニングのモデルサイズ」が決まります。メモリ容量が小さすぎると、モデルを小さくする必要があるため、論文の記載通りに正しく実装できないケースもあります。そのため、GPUのメモリ容量は、ディープラーニング環境を整えるうえで、コア数と同じくらい妥協してはならない要素です。
以下の表にて、「ディープラーニング環境別のGPUメモリのスペック目安」をまとめたので、参考としてご覧ください。
ディープラーニング環境 | GPUメモリ |
---|---|
・画像認識やリアルタイム動画処理など、高性能な環境が必要
・複数人で同時に利用することが多い |
24GB以上 |
・言語処理等の比較的軽いディープラーニングを実行する
・個人利用が主 |
8〜16GB |
また、メモリ容量はCPUにも関係し、容量が大きいほど複数の処理を同時に実行できます。そのため、データ加工を素早く処理するためには、「8〜16GB」のメモリ容量が必要です。
なお、メモリについて詳しく知りたい方は『ディープラーニングで「メモリ不足」にならないためには?』をチェックしてみてください。
SSD・HDD
SSD・HDDは、それぞれ「データを保存するための補助記憶装置」で、SSDは内蔵されている「フラッシュメモリ」で記録するのに対して、HDDは磁気を利用してディスク上に書き込み記録します。
SSD・HDDは、ディープラーニングで用いる加工済みデータや元データを保存するために使うもので、かなりの容量が必要です。そのため、SSD・HDDどちらか一方でも「1TB以上」のものを用意すれば、データ保存容量を気にせずディープラーニングに取り組めます。
GPUの種類
GPUは運用方式の違いから、「オンプレミス型」と「クラウド型」の2つに分けられます。以下の表にて、両者の違いを簡単にまとめたので、参考にしてみてください。
運用方式 | 運用方法 |
---|---|
オンプレミス型 | 自社内でGPUサーバーを保有・管理する |
クラウド型 | ベンダーが提供するGPUをクラウドプラットフォームを通じて利用する |
ひと昔前までは「オンプレミス型」が一般的でしたが、近年はコロナ禍の影響でテレワークが浸透し、外部からもアクセスしやすい「クラウド型」が普及しつつあります。
オンプレミス型とクラウド型の詳しい説明は、『クラウドGPUとは?オンプレミスと比較したメリット』をチェックしてみてください。
すぐにディープラーニングを始めるならクラウドGPUがおすすめである理由
すぐにディープラーニングを始めたい場合には、オンプレミス型よりもクラウドGPUがおすすめです。では、なぜクラウドGPUがおすすめなのか、その理由を詳しく解説していきます。
難しい環境構築で手間を取らない
クラウドGPUは、クラウド上のサーバーを利用する仕組みであるため、GPUを使うためのOS環境の構築やディープラーニング環境用の設定など、難しい環境構築が不要です。
そのため、環境構築のための時間や手間を取らずに、クラウドサービスの契約後すぐにディープラーニングを始めることができます。
データの準備が必要ない場合もある
クラウドGPUサービスの中には、モデルの学習用に利用できる「サンプルデータ」があるものや、大量のデータを学習した「学習済みモデル」が用意されているものもあります。
そのため、クラウドGPUを利用すれば、ディープラーニングをするために大量のデータを準備することなく、すぐにモデルを試すことが可能です。
プログラミングの深い理解がなくても使えるものもある
一般的なGPUサーバーでディープラーニングをする場合には、ディープラーニングに必要なデータの加工・モデルの作成と実行・評価において、「プログラミング」をしなければなりません。
一方で、クラウドGPUサービスの中には、データを与えるだけで、モデルや予測対象、評価方法を自動で最適化してくれるものもあります。そのため、プログラミングの深い知見を持った人材でなくても、すぐにディープラーニングを行うことができます。
コスト負担が小さい
オンプレミス型GPUは「買い切り型サービス」であるため、サーバーを買うための「初期費用」や、サーバーを自社で運用するための「維持管理費用」など、トータルで「100万円」を超えるコスト負担がかかることもあります。
一方で、クラウドGPUは基本的に「従量課金制や定額制」であるため、使用分しか費用がかかりません。ディープラーニングを始めるうえでコスト面が問題になることも多いですが、クラウドGPUでは「10万円程度」の少しのコスト負担で良いため、気軽に始めることができます。
なお、その他のクラウドGPUのメリットについては、『クラウドサービスのGPUを利用するメリットとは?』を参考にしてみてください。
ディープラーニングのクラウド化が進む背景
「クラウドGPU」や「オンラインストレージ」が利用されるように、ディープラーニング環境でクラウドサービスが積極的に使用されています。ここでは、「ディープラーニングのクラウド化が進む背景」について解説します。
AI人材の不足
どの企業や業界においても、ディープラーニングを一から実装できる「AI人材」が足りていません。とはいえ、新規のAI事業を始めるためには、AI人材がいなくてもディープラーニングができる環境を構築し、モデルを実装する必要があります。
そこで、クラウドGPUにおける「実装済みのAIモデルを使える」ことと、「プログラミングの知識が要らず直感的に操作できる」ことが注目され、AIが専門外の企業を中心に広まっていきました。このように、日本企業全体のAI人材不足により、GPUのクラウド化が進むこととなったのです。
膨大なデータの管理が必要になった
ディープラーニングでは、膨大な量のデータを使います。そのため、従来のSSD等では容量がすぐに足りなくなるため、複数のストレージを使用する必要があり、物理的に管理する場所を圧迫してしまいます。
管理場所を取らずとも、大量のデータを保管できるストレージが必要となり、そこで注目されたのがクラウド上で使用できる「オンラインストレージ」です。オンラインストレージでは、「100GB」ものデータを物理的な管理スペースを必要とせず保管できます。
このように、ディープラーニングが一般化するに伴い、膨大なデータを管理する必要性が増し、ストレージにおいてもクラウド化が進みました。
代表的なディープラーニング向けクラウドサービス比較
では、代表的なディープラーニング向けクラウドサービスを比較してみましょう。
クラウドサービス名 | 組み込みアルゴリズム例 | 対応フレームワーク | ラベリングサービス | モデルパラメータの自動調整機能 | 使用可能なGPUサーバー |
---|---|---|---|---|---|
Google Cloud Platform | ロジスティック回帰
XGBoost ResNet EfficientNet TabNet |
Python
R Tensorflow PyTorch |
あり | あり | ・NVIDIA Tesla K80(CUDAコア数:4992・メモリ容量:24GB)
・NVIDIA Tesla T4(CUDAコア数:2560・Tensorコア数:320・メモリ容量:16GB) など
|
Microsoft Azure | Naive Bayes
ロジスティック回帰 ランダム フォレスト XGBoost ディープ ニューラル ネットワーク Elastic Net |
Python
Tensorflow PyTorch |
あり | あり | NVIDIA Triton Inference Server |
Amazon SageMaker | 主成分分析法アルゴリズム
K-Meansアルゴリズム ランダムフォレスト XGBoost DeepAR YOLO Faster R-CNN BERT TabNet |
Python
R Tensorflow PyTorch mxnet Hugging Face |
あり | あり | NVIDIA Triton Inference Server |
これから、それぞれのサービス内容やできること、メリットについて解説していきます。
Google Cloud Platform
「Google Cloud Platform(GCP)」では、サービスの一つである「AI Platform」を通じて、ディープラーニングを含むさまざまなAIモデルを実行できます。
また、AI Platformでは、ハイスペックGPUとして有名な「NVIDIAのTeslaシリーズ」の6種類から、自社のディープラーニング環境に合わせて自由に選べるメリットがあります。
なお、Teslaシリーズについては、『ディープラーニングにおすすめのGPU4種類!選び方のポイント』をチェックしてみてください。
Microsoft Azure
「Microsoft Azure」では、「Azure Machine Learning」を通じて、異常検出や音声・顔認識、自然言語処理など、多種多様な分野のディープラーニングを試すことができます。
Azure Machine Learningでは、「データのラベル付け・モデルの作成・学習・パラメータ調整・予測・評価」の一連の流れを自動的に行えます。また、自分で作ったAIモデルを使って学習させることも可能です。
Amazon SageMaker
「Amazon SageMaker」では、古典的なアルゴリズムから比較的新しいAIモデルまで、さまざまな種類のAIモデルを自分で実装することなく利用できます。
また、同社のクラウドストレージ「Amazon S3」を利用することで、スムーズなデータ移動や加工も実現可能です。
ディープラーニング向けクラウドGPUは「M:CPP」がおすすめ
「正直どのクラウドGPUサービスを使えば良いかわからない、けど失敗はしたくない」そんな方には、当社モルゲンロットが提供するディープラーニング向けクラウドGPUの「M:CPP」がおすすめです。ここでは、M:CPPの特徴や機能、おすすめな理由について紹介します。
M:CPPの特徴や機能
M:CPPは、大手半導体メーカーのAMD社の「ハイエンドモデル〜ローモデルGPU」を利用できるクラウドGPUサービスです。M:CPPでは、CPUの変更やHDDの増設、Docker環境の構築など、柔軟なカスタマイズが可能です。
また、ディープラーニング用のライブラリである「Tensorflow・PyTorch」などの利用も可能で、すぐにディープラーニングを試すことができます。
M:CPPについてさらに詳しく知りたい方は、『GPUクラウドサービスなら「M:CPP」!概要とおすすめの理由』をチェックしてみてください。
おすすめである理由
M:CPPがおすすめの理由は、次のとおりです。
- 代表的なGPUクラウドと比較して「2分の1以下」の費用で導入でき、コストパフォーマンスに優れている
- ディープラーニング用のライブラリやフレームワークに対応している
- プロのエンジニアから利用目的に合わせてプランを提案してもらえる
特に、M:CPPを導入するうえで、最適な契約プランをプロの視点で提案してもらえる良さがあります。なお、M:CPPのコスパの良さが気になる方は、『AWSとM:CPPのコストパフォーマンスを比較する』を参考にしてみてください。
まとめ
近年AI人材の不足が顕著となり、AI人材がいなくても気軽にディープラーニングを試せる「クラウドGPUサービス」が注目されています。
さまざまなクラウドGPUサービスが提供されている中で、もっともおすすめなのは、当社モルゲンロットが提供する「M:CPP」です。
M:CPPでは、大手クラウドGPUにかかる費用の半分以下で利用でき、本格的にディープラーニング事業を始める前でも、お試しで導入しやすいメリットがあります。
これからディープラーニング環境を整える企業の皆さまは、まずは当社のM:CPPを検討してみてはいかがでしょうか?