
普段何気なく利用しているPCにもGPUが搭載されています。
とはいえ、各PCパーツとの違いなど、詳しく理解していない方も多いのではないでしょうか?今回は、GPUメモリの役割やCPUとの違い、スペック目安を解説します。
また、選び方のポイントや費用相場の解説を通じて、自分の利用シーンに合わせて最適なGPUを選ぶコツを理解できます。PCのコスト・スペック面で後悔したくない方は、ぜひ最後までご覧ください。
GPUメモリとは
GPUメモリとは、3ⅮグラフィックスやVRなどの高画質な画像を描画する処理に特化したメモリのことです。VRAMやビデオメモリと呼ばれる場合もあります。ここでは、GPUメモリの役割や規格、CPU・ストレージとの違いを解説します。
GPUメモリの役割
GPUメモリの役割は、解像度の高い画像を処理することです。GPUメモリが高性能であればあるほど、繊細で鮮明な画像をスムーズに映し出すことができます。
また、AI用の演算処理に特化したコアを搭載したGPUメモリでは、AIモデルのアルゴリズムにある「行列・テンソル演算」を処理する役割も果たしています。
GPUの規格
GPUメモリには、次のようにいくつか規格が存在します。
- GDDR5
- GDDR6
- HBM
- HBM2
GDDR系とHBM系に大きく分けられ、GDDR系はエントリーモデル〜ミドルレンジのGPU、一方のHBM系はハイスペックモデルのGPUで使われています。
また、同じシリーズ間では、数字が大きくなるほど最新で高性能なGPUメモリです。そのため、最高級レベルのGPUメモリが欲しいときは「HBM2」を選ぶといったように、GPUメモリを選ぶ際にはGPUの規格からも絞ることができます。
CPUメモリとの違い
GPUメモリとCPUメモリとは、処理できる内容が大きく異なります。GPUメモリは画像のみに特化している一方で、CPUではPC内部の演算処理や外部デバイスの制御など幅広く処理することができます。
そのため、CPUのメモリ容量が大きくてもGPUメモリが小さければ、高画質な画像を描画できないといったように、どちらか一方だけ容量が大きければよいというものではありません。用途に合わせて、それぞれ適切なスペックのメモリを用意する必要があります。
ストレージ(HDD・SSD)との違い
GPUメモリとHDD・SSDストレージとは、データを保存できる期間が大きく異なります。GPUメモリはゲームやAIモデルなどを処理している間の短時間しかデータを保存できないのに対して、ストレージでは長期的にデータを保管できます。
また、GPUはストレージ上のデータを読み取り、GPUメモリに一時的に保存して必要に応じて処理を行います。そのため、GPUメモリとストレージのどちらもGPUがスムーズに処理を行ううえで重要です。
特に重量級ゲームやディープラーニングなど容量が大きな処理を動かす場合には、両方の容量を重視する必要があります。
低性能なGPUメモリのデメリット
GPUメモリは何でもよいわけではなく、利用ケースにあったスペックのものを使う必要があります。特に低性能なGPUメモリを使う場合には、使用上でデメリットがあるため注意が必要です。ここでは、そのデメリットを2つ解説します。
PCがフリーズする
低性能なGPUメモリは処理能力が高くないため、負荷がかかりすぎると、PCがフリーズしてしまう可能性があります。WebサイトやYoutubeを見ているくらいでは、GPUに影響することはあまりありませんが、3Dグラフィックスゲームやディープラーニングなど、GPUに負荷がかかる作業の場合には注意が必要です。
FPSが低下する
低性能なGPUでは、処理できる内容が少ないため、処理スピードに影響が出ます。特に、ゲームを行う場合にはFPS(フレームレート)が低下してしまうと、スムーズに映像が表示されなくなるためストレスとなるでしょう。
そのため、コンマ1秒が勝敗を分けるオンラインPCゲームでは、ハイスペックなGPUを用意する必要があります。
GPUメモリの選び方のポイント
各メーカーから多種多様なGPUメモリが提供されているため、迷う方も多いでしょう。ここでは、GPUメモリの選び方のポイントを4つの視点から解説します。最適なものを選べるようにそれぞれチェックしておきましょう。
ゲームやAIモデルの最低動作環境
1つ目の選び方のポイントは「ゲームやAIモデルの最低動作環境」です。
ゲームやAIモデルの中には、最低動作環境としてGPUメモリの容量や種類が指定されているケースがあります。たとえば、ファイナルファンタジーXIVでは、「AMD Radeon R7 260X 以上」といったように、ゲームを行ううえで必要なGPUのスペックが決められています。
最低動作環境以下のGPUメモリでは、満足に実行できない可能性もあるため注意が必要です。そのため、GPU上で動かす予定のゲームやAIモデルが決まっている場合には、指定される動作環境を満たすGPUメモリを選ぶようにしましょう。
メモリのコア
2つ目の選び方のポイントは「メモリのコア」です。
GPUメモリは、そのモデルによって搭載されているコアの数や種類が異なります。たとえば、AI開発向けのGPUメモリには「Tensorコア」と呼ばれるAI演算専用のコアが搭載されていたり、最高級モデルのGPUメモリには10,000個以上のコアが搭載されていたりとさまざまです。
そのため、ディープラーニングをする場合には「Tensorコア搭載かつメインコア10,000個以上のGPUメモリ」といったように、利用シーンに合ったコア数と種類を選ぶとよいでしょう。
CPU・ディスプレイとの相性
3つ目の選び方のポイントは「CPU・ディスプレイとの相性」です。
GPUは、CPUからの命令を受けて演算処理を行うため、CPUのスペックが低いとGPU本来のパワーを引き出せないケースがあります。そのため、ハイスペックなGPUにはハイスペックなCPUを合わせるといったように、GPUとCPUのそれぞれのメモリの性能レベルを合わせておきましょう。
また、ディスプレイとの相性も大事です。GPUのメモリがいくら高性能であっても、応答速度が遅い低性能なディスプレイの場合には、スムーズに表示することができません。そのため、ミドルレンジ・ハイスペックなGPUメモリの場合には、WQHDや4K・8Kディスプレイなどの高解像度ディスプレイを用意するとよいでしょう。
予算
4つ目の選び方のポイントは「予算」です。
一般的にGPUの価格は、メモリの容量が大きくなればなるほど高くなる傾向にあります。そのため、予算に限りがある場合には、「1~4GB程度」の比較的手ごろな価格で手に入るGPUメモリを選ぶとよいでしょう。
また、同じGPUメモリでも、オンプレミス型よりもクラウド型の方が安く抑えられるケースもあります。そのため、なるべくコストを抑えて大容量のGPUメモリを使いたい場合にはクラウド型のサービスを利用することも一つの手です。
【利用シーン別】GPUメモリのスペック目安
ここでは、動画編集・ゲーム・ディープラーニングの3つの利用シーン別にGPUメモリのスペック目安を解説します。GPUメモリに対してはさまざまなスペック基準が存在しますが、今回は「コア数とメモリ容量」に焦点を当てて、それぞれの目安をまとめました。
動画編集向け
動画編集をする場合のGPUメモリのスペック目安は、次のとおりです。
- GPUのメモリ容量:2〜8GB
- メインメモリのコア数(CUDA・SPコア):1,500個以上
特に、高画質な動画を編集する場合には、ある程度容量が大きく、大量のコアが搭載されたGPUメモリが必要です。
一方で、高性能な動画編集ソフトを使わない場合には、GPUメモリの容量は「2〜4GB程度」でよく、CPUメモリの方が重要になるケースもあります。
また、使用する動画編集ソフトによっては、GPUメモリの最低・推奨動作環境が指定されている場合があるため注意しましょう。例えば、動画編集ソフトの中でも利用ユーザーが多い「premium pro」では、最低動作環境が2GB、推奨環境が4Kメディアの場合には4GB・4K以上では6GBといったように、GPUメモリの基準が条件によって細かく決められています。
動画編集向けのGPUメモリを用意する際には、使用予定の動画編集ソフトの最低基準を踏まえて、メモリ容量を重視して選ぶとよいでしょう。
ゲーミングPC向け
ゲーム環境用のGPUメモリのスペック目安は、次のとおりです。
- GPUのメモリ容量:1〜8GB
- メインメモリのコア数(CUDA・SPコア):2,000個以上
- AI専用メモリのコア数(Tensorコア):100程度
リアルタイムシューティングゲームやVRゲームなど、処理が重たくなるケースでは、8GBの大容量メモリが適しています。
一方で、2Dゲームなどの比較的軽量なゲームでは、高性能なGPUメモリにするとコストパフォーマンスが悪くなってしまうため、メモリ容量も1GBでコア数も2,000個程度のエントリーモデルで十分です。
リアルタイム性やグラフィックを楽しむゲームの場合には、高性能なGPUメモリが必要になると認識しておくとよいでしょう。また、低解像度でも美しい映像が楽しめる「ディープラーニングスーパーサンプリング」を使いたい場合には、AI専用のメモリである「Tensorコア」もある程度必要です。
なお、ディープラーニングスーパーサンプリングについては、『ディープラーニングスーパーサンプリングとは?有効にすべき?概要とメリット』で詳しく解説しているので参考としてご覧ください。
AI・ディープラーニング向け
AI・ディープラーニング向けにGPUメモリを用意する場合には、次の基準を目安にするとよいでしょう。
- GPUのメモリ容量:16GB以上
- メインメモリのコア数(CUDA・SPコア):3,000個以上
- AI専用メモリのコア数(Tensorコア):100以上
クラスタリングや決定木など、比較的軽量なAIモデルでは16GB程度のメモリ容量で十分ですが、ディープラーニングでは48GB以上の大容量モデルが必要になるケースもあります。
また、AIモデルを動かすうえで重要なのが「Tensorコア数」です。Tensorコアの搭載数が多ければ多いほど、AIモデルの計算処理を高速にできるからです。
そのため、特に大量の画像や動画を使うディープラーニングや大規模な言語モデルを実行する場合には、500個以上のTensorコアを搭載するGPUメモリを選ぶとよいでしょう。
ディープラーニング用のGPUメモリを選ぶ際には、メモリ容量・コア数すべてハイスペックなものにしておくと、どのようなケースでもスムーズに実行できます。なお、GPUメモリ以外のディープラーニング向けPCのスペック目安は、『機械学習・ディープラーニングにおすすめのGPUは?GPUの選び方のポイントと注意点』で詳しく解説しているので参考にしてください。
GPUのメモリ選びに迷ったらクラウドサービスの「M:CPP」がおすすめ
GPUのメモリ選びに迷ったら、当社モルゲンロットが提供する「M:CPP」をおすすめします。M:CPPでは、高性能なGPUを使えるプランからお手ごろなプランまで、さまざまな利用シーンに合わせたサービスが提供されているからです。
それでは、M:CPPの概要や使えるGPUの種類、おすすめである理由について詳しく解説していきます。
M:CPPの概要
M:CPPは、大手半導体メーカーのAMD社の「ハイエンドモデルGPU」を格安で利用できるクラウドGPUサービスです。CPU・GPUの変更はもちろんのこと、ストレージの増設など、企業・個人のニーズに合わせて柔軟なカスタマイズが可能です。
M:CPPについてさらに詳しく知りたい方は、『GPUクラウドサービスなら「M:CPP」がおすすめ!メリットと注意点』をチェックしてみてください。
M:CPPで使えるGPUの種類
M:CPPで使えるGPUの種類は、次のとおりです。
- Vega 56
- Radeon VII
いずれもゲーミングPC向けのハイスペックGPUで、WQHDや4Kディスプレイなどの高解像度環境でもスムーズに使用できます。また、M:CPPでは機械学習系のライブラリ・フレームワークの環境もそれぞれのGPU上で構築可能なため、小・中規模の機械学習・ディープラーニング開発でも利用可能です。
なお、Vega 56は「LOW COST・MIDDLE CLASS・HIGH CLASS」の3つのプランで利用可能で、Radeon VIIは「ULTRA PERFORMANCE」のみで提供されています。
M:CPPがおすすめである理由
数多くあるGPUサービスの中で、M:CPPがおすすめである理由は次のとおりです。
- 大手クラウドGPUサービスと比較して「2分の1以下」の費用で導入でき、コストパフォーマンスに優れる
- 専有サーバー・ベアメタルでGPUを利用できるため、オンプレミス型と同じように潤沢なリソースを使える
- 各々の利用目的に合わせたプランをプロのエンジニアから提案してもらえる
上記のように、M:CPPはコスト・GPUのリソース・サポート内容の手厚さなど総合的に見て、大手クラウドGPUやオンプレミス型GPUよりもメリットが多くおすすめといえます。
なお、M:CPPのコスパのよさが気になる方は、『AWSとM:CPPのコストパフォーマンスを比較する』を参考にしてみてください。
まとめ
GPUメモリは、動画編集やゲーム、ディープラーニングなど、高度な処理を行う際に重要になるPCパーツです。低性能なGPUメモリでは、PCがフリーズしてしまったり、FPSが低下したりと、実行上でさまざまな問題が発生します。
そのため、利用ケースごとの最低動作環境や、CPU・ディスプレイとの相性を見ながら、最適なGPUメモリを選びましょう。
また、当社モルゲンロットのクラウドGPUサービス「M:CPP」では、高性能なAMD製GPUの「Vega 56・Radeon VII」を格安で提供しています。M:CPPでは、経験豊富なエンジニアにプラン内容の相談や、環境構築をサポートしてもらえるため、初めてGPUサーバーを導入する場合にも安心です。
新たにGPUを導入する皆さまは、まずは当社のM:CPPを検討してみてはいかがでしょうか?